レジナルド・ヒルの作品はいつもパスコーの妻で作家のエリーほか、いろんな女性が出てきて楽しませてくれる。今回はダルジールの同伴者キャップがいい。ダルジールが爆発でやられて意識不明の日々が続く。貴族階級出身のキャップは自費で立派な病室を確保し、強引に病室に住み込んでいる。パソコンを駆使して動物保護運動の連絡をとりながら、常に病室に音楽を流し、瓶に入れたモルトウィスキーを嗅がせるという独特な方法でダルジールの看病をする。常識人のパスコーはキャップに、アングロサクソンの大晦日をスコットランドのホグマネイパーティーに変えるのに最適な音楽がつまっていると書かれたテープの箱を見せられて、【世界は深刻におかしな人間だらけだ。おれにはわかる。そのうち二人と同居しているんだから。】キャップやエリーにおとらず、娘のロージーも強烈な個性の持ち主なのだ。
ダルジールに言わせると【「わたしといっしょになったとき、こいつは外科手術で口から銀のスプーンを取り外さなきゃならなかった。もちろん私費健康保険を使ってな」】なのである。最後に彼女の昔の学校の先生からのメールで、エリーにもわたしたち読者にも事件の歴史的背景が見えてくる。
エリーは今回はパスコーの心配をしすぎるが、そのエリーにキャップは言う。【「あの二人をつないでいるロープは、わたしたちのロープよりある意味でずっと短く、ずっときつい」】
その他、ダルジールが昔話に語ったダンス相手トティが最後のほうに出てきて、見事な活躍を見せるし、CAT主任警視のサンディ・グレニスターも人間味があってよかった。エリーの広報係フィオンもいかにもマスコミ人間らしいおもしろさである。