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藤沢周平「三屋清左衛門残日録」

三屋清左衛門残日録 (文春文庫)「蝉しぐれ」といっしょにYさんが送ってくださった「三屋清左衛門残日録」を読み終わった。前にも書いたけど、わたしの時代小説の好みは血沸き肉踊るもので、だから藤沢周平は読まず嫌いだった。「蝉しぐれ」を読んで先入観を修正したばかりである。

三屋清左衛門は藩の用人をしていたが、三年前の四十九歳のとき妻が病死してから、隠居を考えるようになった。仕事ができる上に口が堅いと、いまだに藩主にも信頼されている人だけあって、普通の人の隠居生活とは違う。息子は藩に務めているし嫁の里江はよく気がつく。しかも藩主の気遣いで普請組が隠居部屋を増築してくれたのである。

隠居して間もないある日、友人の町奉行 佐伯熊太が訪ねてくる。ヒマだろうと言われて、これから道場で体を鍛えること、塾で経書を学ぶこと、それに釣りに行きたいし山で鳥を刺したいと答える。佐伯は気力をなくさないためにやったらいいが、いまはこっちの仕事を手伝えと言う。こういう調子で隠居生活は忙しく張りのあるものとなる。
釣りに行った帰りに人助けをするし、昔係わった女性が訪ねてくるし、それらの人たちを良い方向へ向かわすのに努力を惜しまない。藩には派閥があって、お世継ぎ問題もあって、殺されかねない状況になったりする。
そういう中で思いをよせてくれる女性がいるが、彼女が国へ帰る別れの挨拶をしたとき「わしは、そなたの死んだ父親によく似ているらしい。図星だろう」なんて言うのである。

成功したサラリーマンが停年退職したとき、こういう悠々自適である上に張りのある生活ができることは羨ましいものだろう。池波正太郎の「剣客商売」の秋山小兵衛は自営業の人が年を取った姿かなと思う。どちらも筋を通して生きている。

「剣客商売」ほどではないが、美味しいものを食べるシーンが何カ所かある。赤蕪の漬け物、蟹の味噌汁、はたはたを茹でて大根おろしの醤油味、みんな美味そう。

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2008年04月07日 01:14に投稿されたエントリーのページです。

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