ピンクのお花畑の華やかな表紙に惹かれて手に取った。最初のほうを開いてみたら、まるでドロシー・L・セイヤーズの「学寮祭の夜」だ。ハリエットが学寮祭に行って寮の学生の部屋に泊まったシーンを彷彿させる出だしなのだ。
ジョセフィン・テイの作品では「時の娘」(1951)を読んだことがある。グラント警部シリーズとして他の作品も紹介されているらしい。
「裁かれる花園」(1946)はノンシリーズで、主人公は心理学者でベストセラーを出したルーシー・ビム。彼女はフランス語教師をしていたが、親の死で遺産が入ったので退職し、呑気な生活をするようになった。好奇心で心理学の本を読んでばからしくなり、ほかのもこんなのかと三十七冊読破して、心理学に対する独自の見解をもち、反論を書き出した。ある日、階下のラジオの音がうるさいので、気をつけるようにメモを書いて届けたら本人がやってきて、ラジオのことでなく、メモの裏の心理学の見解を読んでこれを本にしたいと言う。いざ本が出ると時流に乗ってベストセラー作家になっていた。
講演にも慣れたルーシーに昔の学友ヘンリエッタから講演の依頼がくる。ヘンリエッタは二年制の体育大学の学長をしている。
講演は大成功で、翌朝寮の一室で目覚めたルーシーはやかましい学生たちから逃れてロンドンへ早く帰りたい。しかし学生から滞在期間を延ばしてほしい、明日お茶にお迎えしたいと言われて滞在することにする。その後も学校での生活がけっこう楽しくなり長逗留することになる。
学生たちと教師たちとのやりとりやつき合いの描写がうまくて飽きない。村のパブへ連れていってくれたブラジル出身の学生やその恋人も自然に描かれている。
そして学生たちの個性がそれぞれいろんなエピソーで綴られ、出身や頭脳や就職について、この子はこうだと読者も腑に落ちる。
就職先の斡旋で学長が最低なラウスの推薦に固執し、誰から見ても決まって当然だった優秀なイネスが外れる。それから事件が起こる。ルーシーは証拠品を見つけるが・・・。(中島なすか訳 論創社 2000円+税)