タイトルのルイザは「若草物語」を書いたルイザ・メイ・オルコットのことだ。プロローグには1887年にルイザが昔からの友人に、ドッティのことを書く気はないのかとたずねられたとある。いまは作家として成功し、街に出ると人目を引く存在になっていて、ときに昔の誰からも注目されずに道を歩けたころがなつかしくなる。これまで自伝的作品の中に子ども時代のことなど書いてきたが、実は彼女は犯罪や犯罪者などについても知識があり、はからずも婦人探偵として奇妙な役割を果たしたことがある。
ということで、親友のドッティが殺害された事件を解決した物語がはじまる。
1854年のボストン社交界は保守的な雰囲気だった。(ここで映画「エイジ・オブ・イノセンス 汚れなき情事」を思い出した。ニューヨーク社交界だったが同じようなものでしょう。)
少女時代からルイザとシルヴィアとドロシー(ドッティ)は仲良しだった。ルイザだけ上流階級ではなかったが、父が知識人であることなどから、社交界にも招待される。
ドッティがヨーロッパへの長い新婚旅行から帰ってきたので、ボストンの彼女の家でパーティがあり、招待されて行ったシルヴィアとルイザだが、ドッティは現れずヘンな雰囲気である。遅れて現れたドッティの態度もおかしい。今日はこれでおしまい、明日来てと言われて明日訪ねて行くとまた不在。夫のブレストンは出かけたきりだと心配している。待っていると来たのはコバン巡査で、奥様が溺死されたと言う。
ルイザはドッティの死の真実を知ろうと、シルヴィアをワトソン役にして調査をはじめる。
ドッティの実家が裕福なのはジョージア州に広大な土地を持ち、綿花で収益を上げているからとブレストンは語る。建前上は奴隷廃止論者なので公表していないというのだ。
ルイザの両親は逃亡奴隷の支援(地下鉄道)をしていて、常にバスケットには逃亡者に渡す生活用品や食べ物が詰められている。ルイザはそんな家庭で育ち、屋根裏の執筆室で小説を書いている。
上流階級も下層階級も同じなのは若い女性が多くは暴力によって妊娠するということ。ルイザが出入りする施設は夫がいない女性が出産するのを支援している。
その一方で女性は弱いもの、情緒的な存在として卑しめられている。【男性は、無秩序な世の中の、ずっと女性的な一面に哲学的な論理を無理に当てはめようとし、直感は論理の伴侶であって、その代用品ではないという考え方を受け入れようとしないのだ。】
大津波悦子さんのあとがきによると、著者のアンナ・マクリーンは別名儀で歴史小説を書いているほか、ジャーナリストとして賞をもらい、カレッジの創作講座ももっているそうだ。そしてニューヨーク州北部の19世紀の農家に暮らしているが、その家は当時の地下鉄道のひとつだそうだ。(藤村裕美訳 創元推理文庫 1000円+税)