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ヴィクトリア朝ミステリー アン・ペリー「娼婦殺し」

去年読んだ「十六歳の闇」はトーマス・ビット警部と妻のシャーロット・ビットもののシリーズ6作目だった。「娼婦殺し」は16册目になり、翻訳されているのはこの2冊だけだ。さびしいな。

ピット警視はポウ街署の署長に昇進している。副総監の指示で社会的地位の高い人が関与する犯罪のときに動く立場にある。
1890年の夏のこと、ロンドンのホワイトチャペルの安下宿屋で娼婦の他殺死体が見つかった。ピット警視は夜中の二時に貧民街まで呼び出されて娼婦の死体を見ることになった。担当のユワート警部は、大変な名家にかかわる証拠品が残っていたから警視を呼んだと言う。
女は手をベッドの柱にくくりつけられ、首は絞首刑のロープと同じように靴下で縛られ、手足の指が折られていた。そこに紳士階級の会員制クラブのバッジとカフスボタンが残っていた。バッジで読める文字は〈フィンレイ・フィッツジェイムズ〉。ピットは高級住宅街のフィンレイ宅を訪れる。

シャーロットの妹のエミリーは最初の資産家の夫が亡くなったあと、みごとな作法と機知に富んでいることを主たる生活手段にしているジャックと恋に落ちて再婚した。ジャックはいま若手政治家として活躍している。
エミリーはフィンレイの妹のタルーラと知り合い、同じように社交界から浮いているどうしで話が合う。タルーラは兄がその時間には自分と同じ場所にいたと言う。ではなぜフィンレイのバッジが現場にあったのか。
ピットが正攻法で捜査を進めるのと同時に、シャーロットとエミリーとタルーラは、女性であることを利用して聴き込みをはじめる。
裕福な階級の女性たちは犬や蘭の品評会に行ったり、招待しあったりして日々を過ごしている。タルーラも美しい衣装が好きだが、つき合いには飽き飽きしている。彼女が恋しているのはずっと前に兄の友人だった貧民街の牧師ジェイゴである。そういうヴィクトリア時代の富裕な人たちと貧窮している人たちの生活が細かく描かれている。
二度目の殺人があり、調べて行くうちに、六年前にも同じような娼婦殺しがあったことがわかる。その殺人はなぜピットに知らされなかったのか。

最初はちょっとくどいと思ったが、途中からアン・ペリーの力に引きづりこまれた。ミステリー作家としての力がある人だ。意外な展開であれよあれよと言っている間にどーんとクライマックスにいたる。本書の中でも言及されているが「切り裂きジャック」は1888年の事件だった。(浅葉莢子訳 集英社文庫 895円+税)

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2009年01月05日 00:42に投稿されたエントリーのページです。

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