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クラシックミステリー アーカイブ

2003年11月28日

ジョセフィン・テイ「時の娘」

ヴィク・ファン・クラブ サイトのミステリーページに岡田春生さんの「古代史ミステリー」をアップした。その中で触れられているジョセフィン・テイ「時の娘」はミステリーの名作中の名作として名前だけは知っていた。岡田さんはそれを翻訳書が側になかったので原書を読んだと書いておられる。こちらは残念ながら英語が読めないので小泉喜美子さん訳の文庫本を買って読んだ。この本が書かれたのは1951年、作者が亡くなる前年の作品である。
主人公グラント警部はケガをして入院中で、ベッドの上で時間をもてあましている。女優のマータが見舞いに来て人物の肖像画をくれる。その中にあったリチャード三世の顔にグラントは魅せられてしまう。
わたしはイギリスの歴史に知識も興味もなかった。でもリチャード三世という名は薔薇戦争のときのめちゃくちゃ悪いヤツというくらいは知っていた。本書には本編に先立って「薔薇戦争」についてのアンドレ・モーロアの「イギリス史」の一節と系図があって親切だ。
グラントは突然リチャード三世に興味を持ち歴史書を調べ出す。マータが役に立つと歴史研究生のキャラダインを紹介してくれたので、彼に頼んで古文書なども調査する。ベッド探偵と調査員の関係ができあがった。グラントの警官としての態度は、殺人によって誰が得をしたかという現実的なもので、文書を調べて結論を導き出していく。ロンドン塔に幽閉されていた二人の王子を殺したとされていることにも疑問を持ち、論理的に結論を導き出す。
最後に退院するときの看護婦との会話が暖かくてよい。わたしもリチャード三世に思い入れをするようになってしまった。こんな縁ってあるんやな。本の扉に〈真理は時の娘─古い諺─〉とある。(ハヤカワ文庫 600円+税)

2003年12月23日

アントニー・バークリー「ジャンピング・ジェニイ」

世界探偵小説全集の1冊を図書館で見つけたんだけど、表紙(わら人形なんだけど首つり死体が3体ぶら下がっている)がちょっとかなわん。でも本の題名に気を惹かれ、中をちょっと読んだら探偵ロジャー・シェリンガム、やあ久しぶりということで借りて帰った。
大きな屋敷に住む探偵作家ストラットンの、趣向をこらした〈殺人者と犠牲者〉パーティにシェリンガムは招かれる。屋上に3体のわら人形で作った死体が風に揺れているという凝ったもの。客はそれぞれ有名な殺人者と犠牲者に扮して集まっている。浴槽の花嫁殺し、父親殺し、愛人殺し、保険金殺人等イギリスで有名な殺人事件の殺人者。それからロンドン塔の王子(「時の娘」で話題の)、切り裂きジャック、ブランヴィリエ侯爵夫人(澁澤龍彦の本で読んだなぁ、悪女中の悪女)等の残虐な事件の主人公たちである。わたしも犯罪実話が大好きなんで、こういうのって楽しい。
ストラットンの弟の妻イーナはちょっと常軌を逸した女性で、このパーティでいちばん目立ちたがっており、相手をした男性すべてに言い寄って嫌がられている。パーティがお開きになるころイーナがいないのでみんなで探すと、彼女は屋上で首を吊って死んでいた。自殺か他殺か、警察が動き出す。
ロジャー自身が出席者から殺したのではないかと疑われてあわてたり、推理の結果、イーナの夫が殺したと思い込んで、警察の取り調べに対する話を調整したりする。
バークリーの本をたくさん読んだわけではないが、覚えているかぎり殺されたほうがみんなのためになるというような人間が殺される。今回もいやというほど死んだ女性がいやらしく書かれている。

2004年06月25日

レオ・ブルース「ロープとリングの事件」

「剣客商売」が一段落したので、しまってあったクラシックミステリーを出してきた。国書刊行会の世界探偵小説全集の1冊で1995年発行。それを読まずに置いてあったのだから贅沢な話である。
レオ・ブルースの名前ははじめてで、先にあとがきを読んだら、再評価した研究家が「アガサ・クリスティにも比肩しうる」と書いているのを紹介している。また、日本にレオ・ブルース・ファン・クラブがあることも紹介している。本が出た時点で既に12年になるとあり、日本よりも海外でよく知られているとのことである。
以上の前知識を得て読み出したわけだが、全部を読んでいないのに書こうと思ったのは、さっきまでテレビで「ハリー・ポッターと賢者の石」をやっており、用事をしながらちょこちょこ見ていたからだ。この映画の見せどころは、魔法やらなにやら、可愛い男の子と女の子やら、そして名優が出ていたりといろいろとあるわけだが、イギリスの全寮制の学校への憧れを呼ぶ、という要素もかなりあるように思った。「ロープとリングの事件」は全寮制の学校での事件なのである。
この本は、シャーロック・ホームズとワトソンのように、作家が私立探偵の仕事ぶりを本にするということで、いっしょに調査について歩く。探偵と言ってもビーフは引退した巡査部長で、スマートでもなんでもない粗野な態度の男なのである。作家のほうはついていてヒヤヒヤしたりイライラしたりする。
事件はエセックス海岸よりの一流のパブリックスクールであるペンズハースト校で起きる。たまたま作家の兄がこの学校で教師をしているので、ビーフと作家は出かけていき、殺された青年アランの父親が依頼人となって調査をはじめる。ビーフは病気の門番の代わりになって、学校に入り込むことになった。
門番の仕事をすませて聞き込みをしていくうちに、アランは街のパブの女性と親しく、門限を超えて遊んでいたという話を聞き出す。そのパブを探すために1軒ずつビールを飲んで歩いたり、その女性を見つけたと思ったら、店でやるダーツ大会に出ることになったりする。さて、後半どないなるのか楽しみ。
目下、寮生活やイギリスのパブのダーツ大会がおもしろくて、クラシックミステリーもなかなかよいなと思っているところである。

2004年07月15日

エドマンド・クリスピン「大聖堂は大騒ぎ」

エドマンド・クリスピンは、子どものころ「消えた玩具屋」(1946)を読んで、おもしろかったという記憶が残っているだけの作家だったが、数年前に「愛は血を流して横たわる」(1948)を読んでから大好きになった。なかでも「白鳥の歌」(1947)がいちばん好きである。どの作品も女性がとても魅力的に書いてあるところがいい。
10年くらい前のある日、突然思い立って「世界探偵小説全集」を買い始めたのだが、クリスピンを知っただけでこの思いつきは成功だった。お金を払った甲斐があったというものだ。この全集を買うのは途中でやめてしまったが、まだ未読の在庫があるし、好きと思った作家のは買い足している。
いま読み終わった「大聖堂は大騒ぎ」は今年の5月に発行されたもので、オクスフォード大学在学中に書いた処女作「金蠅」(1944)に続く第2作である。ちょっと一人でおもしろがっているようなところがあり、傑作とは言いがたいけれど、どこか憎めない楽しい作品である。
作曲家のジェフリーは独身で、家政婦と猫数匹とのんきに暮らしていたが、彼らを留守番にしてジャーヴァス・フェンの待つ田舎に発つ。途中で捕虫網を買ってこいというフェンのために百貨店に立ち寄るが、暴漢に襲われ店員のフィールディングに助けられる。2人はいっしょに田舎に行くことになり、車中で襲われたりしながらもフェンのいるところまでたどりつく。
そこは大聖堂のある村で、ジェフリーはバトラー牧師の娘フランシスに一目惚れしてしまう。このフランシスは後々のクリスピンの作品に出てくる、才気煥発な女性たちの先駆けみたいな女性で、ジェフリーはさんざん振り回される。黒魔術や魔女などが出てくるけど、ユーモアがありおどろおどろしていなくて読みやすい。
バトラー牧師が四ツ葉のクローバーを摘み取って胸につけるという一節があり、最近わたしも四ツ葉のクローバーを4枚も手に入れたものだからうれしくなった。(国書刊行会 2400円+税)

2004年11月30日

ウイルキー・コリンズ「白衣の女」

分厚い本で上下2巻!よく読んだものだ。はじまりは今年のはじめにいただいたメールだった。当サイトを読んでくださったかたから、ミステリーは不案内だけど、自分の専門のビクトリア時代のウイルキー・コリンズ「白衣の女」は読んだとのこと。あら、まあ、わたしはウイルキー・コリンズは「ムーンストーン」(「月長石」という訳だった)しか読んでいない。しかも子どものときで多分抄訳だったはずだ。わたしの幼児期の記憶を掘り起こすと、コリンズ「月長石」とガストン・ルルー「黄色い部屋」が並んだ背表紙が目に浮かぶ。
今年中には「白衣の女」を読もうと決心したのだが、買おうかなと本屋で探したら2冊で5000円である。こりゃあかんわと図書館で借りたのが10月。なかなか読めなくて期間延長したが、まだ読めなくて返しに行ってまた借りて、期間延長してようやく読み終わった。ふーぅ!2カ月。明日は返却に行こう。
ウイルキー・コリンズ(1824〜1889)はディケンズと同時代の人で、二人はいっしょに旅をしたりしてとても親密だったそうだ。そして「ムーンストーン」は「最初にして最長、最良の探偵小説」とT・S・エリオットが書いていると本書解説にある。その割には忘れられた作家みたいなところがあるように思うんだけど、どうなのかしら。
わたしが知っている小説や映画では「ジェイン・エア」とか「フランス中尉の女」など女性が家庭教師になるのばかりだった。ここでは貧しい男性のウォールター・ハートライトが絵画の家庭教師となって、ロンドンからカンバーランドのリマリッジ屋敷へおもむく。その途中で出会ったのが白衣の女性で、精神病院から脱走してロンドンへ行こうとしている。よい出だしだ。屋敷に着くと主人は病身で傲慢な男だが、ウォールターを気に入って娘の教師として雇う。屋敷には二人の娘がいた。姉のマリアンは死んだ母親の最初の夫の子で醜くいし遺産もないが、頭脳明晰で性格がよくて、妹のことを心から思っている。ウォールターは美しい妹フェアリー嬢と相思相愛になってしまうわけだが、もちろん階級の壁があるのでただ思っているだけである。娘に縁談があったときに彼は屋敷を去ってロンドンに戻る。
さてそれから・・・その結婚相手が悪いやつで、またその陰には輪をかけて悪いやつがついている。フェアリー嬢は死んだことにされて精神病院に入れられ、財産は悪人の手に渡る。マリアンは病院から妹を救い出して、ウォルターとともに妹の夫とその黒幕を叩きのめすべく調査をはじめる。フェアリー嬢の死体とされたのは、最初に出てきた白衣の女性だとわかる。
という具合に、探偵とか警察でなく被害者が危険をおかして証拠を集めにかけずりまわる。暗いロンドンの街や田舎の教会や、以前に縁のあった人などへ聞き込みに回るが、尾行がついてたいへんである。
その一切がこまごまといろいろな人の手記として語られるのだが、いやー長かったです。

2004年12月01日

ウイルキー・コリンズ「白衣の女」続き

上巻の解説によると、「白衣の女」はディケンズの「二都物語」のあとに雑誌に連載され、連載が終わってすぐに三巻本として出版された。イギリスでは初版が発売日に売り切れ、アメリカでもすごい人気だったそうである。そして、もう一人の主人公、マリアン・ハルカム嬢の勇気ある行動と優しい心は、いろいろな人たちに賞賛されたという。ドロシー・L・セイヤーズは、コリンズはめったに不愉快な独身女性を描かなかったこと、自分から積極的に目的に向かって進んでいく、強い、断固とした、知的な女性を描いたこと、それはコリンズがフェミニストであったからだと言ったそうである。なるほど。
女性作家が描いた女性よりも理想化されていると思うが、いまから100年以上も前にこれだけの意志の強い女性を描いたコリンズはすごい。また少数でもイギリスは女性の強さが生かされる社会であったのだろう。オールドミスという生き方が認められていたんだから。
長いとかなんとかモンクを言いながらも、けっこうラブロマンスに引っ張られ、悪人たちの計略との闘いに引きずられた。後半から登場するフォスコ伯爵の魅力にも惹かれた。お正月にもう一度読もうかな。

2006年02月23日

まだまだ今夜は続く

さきほど10時から1時まで仮眠した。もちろんフィギュアスケートを見るためである。ライブで見るのと録画ではちがうもんね。今夜は最後まで見るつもり。
今月はばたばたしているうちに過ぎようとしている。日にちも少ないから週が変わったらすぐに3月だ。一昨日は税務署に行って確定申告をすませてきた。今日はわずかながら税金も払ったし、諸々の支払いもすませた。来月は来月の風が吹く、でありましょう。
グレッグ・ルッカ「逸脱者」と嶽本野ばら「シシリエンヌ」に圧倒されたあとは、まだ新しい本を読む気にならない。ユッカ・エスコラと辰巳哲也の演奏にも圧倒されたし。それでいま読んでいるのは、なつかしきエドマンド・クリスピン「永久の別れのために」である。これは何度目かの読書。情緒を求める気持ちを満たしてくれる本だ。ミステリーではあるがイギリスの田舎の話として読んでいる。1951年のイギリスの田舎は資本主義がまだ行き渡っていないみたいで、まだまだジェーン・オースティンの物語を彷彿させるところがある。クリスピンの作品の中のイギリスの女性は、軽々と自分を主張して生きているので読むのが心地よい。

2006年02月28日

エドマンド・クリスピンが好き

10年くらい前に「愛は血を流して横たわる」を読んで好きになって以来、またいまも読んでいるんだけど何度目になるかなぁ。先日までは「永遠の別れのために」を読んでいた。4冊手もとにあるのだが、「大聖堂は大騒ぎ」はそれほど好きではなくて、いちばん良いと思うのは「白鳥の歌」である。「消えた玩具屋」は昔読んだのだが、読んだことを覚えているだけだ。もう一度出してくれないかなぁ。その他の作品も読みたいものだ。
この4冊の主人公である素人探偵ジャーヴァス・フェンはオックスフォード大学セント・クリストファーズ・カレッジの英語英文学教授である。ひょろっとした姿とユーモアのある話しかたがいい。自己顕示欲が強いのだけれど、どっか的外れだったりする。女性に親切で女性のほうも彼に興味を持つのだが、結局その女性は他の人に惚れているのである。わたしがクリスピンを好きになったのは、その女性たちについての書き方がいいからだと思う。しっかりしていて向こう見ずでもあり賢くて新しい思想の持ち主であり、そして美人だ。
愛車リリー・クリスティン三世をはっちゃかめっちゃかとばす、おちゃめな大学教授の姿の向こうにドロシー・L・セイヤーズのピーター・ウィムジイ卿の姿がちらついて見える。賢くて美しい女性たちの向こうにハリエット・ヴェーンの姿が透けて見える。

2007年03月19日

アントニイ・バークリー「ロジャー・シェリンガムとヴェインの謎」

ロジャー・シェリンガムとヴェインの謎 アントニイ バークリーアントニイ・バークリーの作品で、ロジャー・シェリンガムの出てくる作品は「レイトン・コートの謎」「第二の銃声」「地下室の殺人」「ジャンピング・ジェニイ」とけっこう読んでいる。なぜか本格物が読みたくなり国書刊行会の探偵小説全集を書店から届けてもらったことがあるからだ。で、シェリンガムはもう、ちょっとええわって感じだった。
だから、本書が出版された2003年から疑問に思っていたことがあったのだが、宙ぶらりんのままにおいてあった。今回、図書館で本書を見つけたので疑問を解決すべく読んでみた。
その疑問というのは、ドロシー・L・セイヤーズの探偵ピーター卿が恋した人の名前がハリエット・ヴェインということ。バークリーとセイヤーズは同時代なので、自身の本のタイトルにヴェインをもってくるなんて(しかも殺され役)、きっとなにかがあるに違いないとわたしは睨んだ(たいそうな)。

シェリンガムは従兄弟のアントニイと休暇を過ごすことにしていたが、新聞社から記事を頼まれ、アントニイを説得して事件の起こった村へ出かける。そこにはすでにスコットランドヤードからモーズビー警部が来ている。
ヴェイン夫人は海を見下ろす断崖から転落死したのだが、事故や自殺でなく殺人の疑いで調べているところだった。そこへやってきたシェリンガムはアントニイを助手に、自分なりの捜査をして推理していく。ヴェイン夫人の財産相続人のマーガレットに心を奪われたアントニイは、捜査を口実にマーガレットと逢瀬を重ねる。マーガレットも積極的だ。
村のパブしか泊まるところがないのだが、すでに警部が泊まっている1室を除く4室を借り切って、他の記者等が泊まれないようにしたり、お酒をどんどん警部に振る舞ったりとシェリンガムは務める。

結局、ヴェインは同情されない人という以外に、わたしの疑問は解決しなかったが、真田啓介氏の解説でヒントがひとつ得られた。【セイヤーズは「死体をどうぞ」の中でハリエット・ヴェインに次のように語らせて、そのマンネリズムを揶揄した。——「たとえばロジャー・シェリンガム方式があるでしょ。後略】ふん、なにか匂うぞ(笑)。また宿題にしておこう。

2007年10月08日

「江戸川乱歩が選ぶ黄金時代ミステリー10」から1冊

図書館で目にしたヴァン・ダインの「僧正殺人事件」がなつかしくて借りてきたが、最初のほうだけ読んでやめた。「江戸川乱歩が選ぶ黄金時代ミステリー10」というシリーズの(3)になっている。昔はおもしろいと思って読んだのになぁ。
他のタイトルを見ていたら全部中学生のころ読んでいた。家にあった本と自分で古本屋を探した本と、ゾッキ本ばかり置いてある夜店で買った「別冊宝石」を、読もうと思ったらかなり執念深く探した。これらクラシックミステリーと同時代に知ったのがレイモンド・チャンドラー、ウィリアム・アイリッシュだった。その後はハードボイルドのほうに吸い寄せられていって、クラシックミステリーとは離れていったものの、ドロシー・L・セイヤーズ、エドマンド・クリスピン、ディクソン・カーは大好きでいまもときどき読んでいる。

江戸川乱歩が推している作品を並べてみると・・・
(1)「赤毛のレドメイン一家」(フィルポッツ)
(2)「黄色い部屋の謎」(ルルー)
(3)「僧正殺人事件」(ダイン)
(4)「Yの悲劇」(クイーン)
(5)「トレント最後の事件」(ベントリー)
(6)「アクロイド殺害事件」(クリスティ)
(7)「帽子蒐集狂事件」(カー)
(8)「赤い館の秘密」(ミルン)
(9)「樽」(クロフツ)
(10)「ナイン・テーラーズ」(セイヤーズ)
となっているが、若いころにすべて読んでる。最近再読したのもある。
もちろんセイヤーズとミルンは永遠の愛読書。カーは好きなのが何冊かあり、ベントリーはこの1冊が好きだった。クロフツの「樽」は小さいころ、樽から手が出ている本の箱の絵が怖かったのをいまだに覚えている。レミントンのタイプライターという言葉を覚えた(笑)。「黄色い部屋の謎」は犯行のあった部屋の図があったのを覚えている。探偵の名前はルレタビーユだったっけ? つまらなかったのが「アクロイド殺害事件」で、ロマンの香りが全然ない(笑)。「赤毛のレドメイン一家」はどんなのかすっかり忘れている。エラリー・クインはたくさん読んだがいま読んだらどうなんだろう。
ミステリーファンと言ってるけど、密室やら殺人方法やらはあまり興味がなく、ロマンスやら探偵の人柄やら減らず口が好きなんだなぁ。(「僧正殺人事件」日暮雅通訳 集英社文庫 781円+税)

2007年12月07日

クラシック・ミステリーの佳作 M・R・ラインハート「ジェニー・ブライス事件」

ジェニー・ブライス事件 (論創海外ミステリ) メアリ・ロバーツ ラインハートM・R・ラインハート(1876〜1958 アメリカ、ペンシルバニア州ピッツヴァーグ出身)の作品をはじめて読んだ。読みやすそうという単純な理由で読み出したのだが、おもしろかったのでよかった。アガサ・クリスティより10年先輩だが、「アメリカのクリスティ」と言われていたそうだ。作品の多さと達者な書き方や明るい表現で似通っているのだろう。
本書は1912年から連載をはじめたというから古い作品だけど、主人公の下宿屋経営者ピットマン夫人のイキイキした行動や話しぶりが活発で気持ちよい。

〈私〉(ピットマン夫人)は良家の娘だったが、15歳のときイギリス人と恋をして駆け落ちした。20年間の放浪の末、夫が亡くなり100ドルほどのお金を持って故郷のピッツヴァーグへもどった。いまはアレゲーニー川の下流で家を借り、賄い付きの下宿屋をしている。近所に劇場があり泊まり客がいるのでなんとかやっていけている。懸命に働いてもたいしたことはない。夏の夜に公園のベンチに座って昔住んでいた、いまは妹所有の大きな屋敷を眺めることがある。
川は毎年春になると雪解けの水が氾濫する。その年もそうだった。地下室、1階と水は上がってくる。下宿人は劇場関係者のラドリーと妻のジェニーと犬のピーター、絹製品を売っている商人のレイノルズ氏である。水を避けて上の階に一時行くように言うが、ラドリー夫妻の様子がおかしい。ジェニーはその後出て行ったのか姿が見えない。
外はボートで行き来するようになり、ピーターと外を見ていると、向こうから犬用の生レバーとトレイとペーパーナフキンをたくさん乗せたボートがやってくる。ホルコムと名乗った彼は、ポケットからノートを出し、いままでに救援した犬は48匹、猫は93匹ですよと言ってピーターにレバーを食べさせてくれた。そして〈私〉が動揺しているのを見てなにかかぎつれる。事件こそ彼の生き甲斐らしい。

ジェニーはどこへ行ってしまったのか、殺されたのか。〈私〉は警察へ行って怪しいと思ったことを訴える。そしてホルコム氏とともに死体なき殺人事件の捜査をはじめる。
新聞記者のハーウエル氏と〈私〉の妹の娘リダとの恋にも一役買い、殺人事件も解決し、めでたしの結末。
ハーウエル氏が聞く。「・・・そんな冷たい仮面で世間をごまかしても、みだしなみはレディそのもので心は少女のままじゃないですか。いったい何者なんです?」(鬼頭玲子訳 論創社 1600円+税)

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