山本やよいさん訳 アガサ・クリスティー「書斎の死体」
少女時代にドロシー・L・セイヤーズの洗礼を受けてしまったせいで、最初からアガサ・クリスティーに偏見を持っていた。でも、家に探偵小説がたくさんあり、クリスティーもたくさんあったので、好きでないと言いつつけっこう読んだものだ。実は好きだったのかも(笑)。とはいうものの読んだのは若いときのことで、30年くらいは全然手にしていない。
「書斎の死体」を山本さんにいただいたので、絶対読まなあかんし、つまらんかったらどないしょう、感想を書くのがしんどいんとちゃうかと、なぜか大阪弁で考えつつ読みだしたのだが、最初からおもしろくてよかったです(笑)。
「書斎の死体」というテーマで、典型的なイギリスの探偵小説を書いてみせようという、クリスティーの芸が光っている。なんかもう、余裕の一作という感じ。ミス・マープルのシリーズは、まだヴィクトリア時代の光がかすかに残っている、イギリスの田舎の人間関係や暮らしのさまが書かれていて興味深い。ミス・マープルはその田舎の社会を鋭く(意地悪く)観察しながら、生活している老いた独身女性である。
田舎の大きなお屋敷の書斎で、金髪の若い女性の死体が見つかる。その女性は高級ホテルのダンサーで、ホテルに宿泊している実業家が養女にしようとしていた。大金持ちとその周りにいる人たちについてのミス・マープルの観察から事件が解明される。
普通の文庫本よりもやや大判で、文字が大きくて読みやすかった。中身はもちろん山本さんのこなれた日本語で読みやすかった。(ハヤカワ文庫 640円+税)



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