
最後までストーリーを追ってしまったので、ストーリーを楽しみたいかたは、読むのは途中までにしてくださいませ。
O.R.メリングのケルトファンタジーの5冊目(2001年)、翻訳は2002年とすぐに出ている。いままで全然知らなかったけど人気がある本なんだ。
今回は前4作と違って主人公の少女ダーナは11歳、音楽家の父親ゲイブリエル(ゲイブ)と二人暮らしである。父と娘はなんでも話し合う習慣がついている。その日、ゲイブにカナダから、トロント大学でケルト学の課程で音楽とアイルランド語を教える仕事の口があると電話があった。ゲイブはカナダから地元の音楽家と仕事をするためにアイルランドへやってきて、知り合った少女と恋に落ちここで暮らしていたのだが、彼女はダーナが3歳のとき出て行ってしまった。
ダーナはカナダ行きはいやだと言ってケンカになるが、二人は気を取り直して〈低地の谷〉に行く。ここには環境保護戦士たちがツリーハウスに住んでいる。古い国アイルランドは突然、裕福になり、森は家屋の敷地になり、車道になりで、木々が切り倒されていく。〈低地の谷〉は自然保護法の対象なのに政府はその中心部に4車線の道路を通すことを許可した。環境保護戦士たちは世界中から集まって抵抗運動に加わり、森を守るためにテントやシェルターに寝泊まりしている。
ダーナはブナの古木の高いところにあるツリーハウスに気づく。そこにはちょっと変わった貴婦人がいた。そして〈木の民〉の者だと名乗る。そして森の破壊はわれらの世界の滅亡だと言う。それが「夏の王」で妖精の王と結婚して女王となっているオナーだった。
オナーはダーナに手を貸してもらいたいと頼む。そしたらあなたの心の奥底の願いをかなえてあげるわ。
それから妖精が見えるようになったダーナは鹿のように走る。オオカミと出会っていっしょに走る。【シカのように走るのは、軽やかで心楽しく、自然ややわらかな草や日光とのおだやかな一体感を感じさせた。・・・・オオカミとともに走るのは、影の中を、人生の暗い光の中を、生存競争と本能の中を走ることだった。】ダーナはここにオオカミがいるじゃないのと思うのだが、気にかかっていたことを思い出した。ウィックロー最後のオオカミは、グレンダロッホで殺されたことを。そしてオオカミは猟師に撃たれて死ぬ。ダーナは走り続ける。
抵抗運動の中に会社から金をもらって潜入していた男がいて、みんなをだましてよそへ行かし、夜中に資材を運び入れる。しかし老木が切り倒されそうなとき、通りかかったビジネスマン、秘書、子ども連れなどが続々現れて木を人間の鎖でとりまいた。そして開発業者は仕事を中断させられた。
ダナーは困難を乗り越えてオナーからの頼みを終えると、妖精の女性がやってくる。母だった。母はゲイブと恋に落ちてダーナを生んだが妖精の国へ帰って、いまは王妃となっている。オナーはカナダには双子の姉妹のローレルがいると言う。ダーナはカナダへ行くことを受け入れる気になる。いなくなった娘を探しまわった父親のもとへダーナは帰り、カナダへの飛行機に乗る。人間と妖精は共生していると強く訴えているところに惹かれる。
ここまでの5冊はカナダとアメリカからアイルランドへやってきた少女と少年の物語なので、今回は一応ここまでで一休みする。次の「夢の書」上下はもう翻訳が出ているが、カナダが舞台だそうだ。もう少し時間が経ってから読むことにする。(井辻朱美訳 講談社 1500円+税)