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O.R.メリング アーカイブ

2007年09月12日

O. R. メリングのケルトファンタジー

図書館の外国の子どもの本の棚で見つけた数冊のケルトらしい表紙の本。日本では「妖精王の月」(1989)がいちばん先に出たらしいので、まず1冊借りて読んだらおもしろくて、あと2册「歌う石」(1986)「ドルイドの歌」(1983)を借りてきた。翻訳の順番に読んで、そろそろ感想を書こうと思っていたのだが、どうやら書いた順番と違うみたいだ。「ドルイドの歌」のあとがきを読むと、これが処女作でさかのぼって翻訳したとある。口当たりのよいのから訳して、これはいけるとなってさかのぼって翻訳したのだろう。先に知っていたら書いた順番に読むところなのに。だから感想は「ドルイドの石」を読み終わってから書くことにする。
物語はいずれも現代の少年少女が北米(この3冊ではカナダとアメリカ)からアイルランドへやってきて、なにかをきっかけに時代をさかのぼり、3000年ほど前の英雄や魔術師や女王や妖精に出会う。
現在もアイルランドでは妖精は家のそばに住んでいて、いたずらもするけれど、住民のことを気に入れば壁の穴をふさぐくらいのことはしてくれているのだ。そういうことを信じられる物語である。すっかり虜になってしまった。「ドルイドの歌」を読んでしまったら3冊の感想を書く。

2007年09月18日

極上のファンタジー O.R.メリング「ドルイドの歌」

ドルイドの歌 O.R. メリング偶然に図書館で出会った本にはまってしまった。最初に翻訳された「妖精王の月」から「歌う石」と読み継いだのだが、原作は3冊目の「ドルイドの歌」からはじまっている。感想は「ドルイドの歌」「歌う石」「妖精王の月」の順に書く。

    月の下で踊る妖精たち
    ドルイドの土地、ドルイドの楽の音

W・B・イェイツの詩が巻頭にある。本書はこの詩がいまなお生きているアイルランドを舞台にしたファンタジーである。
物語の舞台は紀元前から紀元5年までの無宗教時代のケルトの鉄の時代。アイルランドの国民的神話叙事詩は何世紀にもわたって口づてに伝えられてきたのち、古アイルランド語で書き記され、12世紀、14世紀の中世写本の形でいまに残されている。
「トイン」はコノハトの女王メーヴの軍がアルスターを侵略したこと、それをたったひとりで防ぎとめた若き勇者クーフーリンのことが語られているが、本書はその時代の中に入っていった姉弟の物語である。

ローズマリー(ロー)は17歳、ジェイムズ(ジミー)は15歳のカナダ在住の姉弟である。二人の父親は裁判官で教育に厳しい。ローのボーイフレンドが気に入らず、夏休みはアイルランドのパッツイおじさんのところへ行けという。くたくたになるまで働いてシンプルな生活をしたら悪いことも考えないだろう。ど田舎に行ってなにがいいことがあるのよとローは言い、ジミーはまぐさの山の中で眠ってみたいと言う。
パッツィおじさんは村のパブでヘンな男ピーターと出会う。彼は丘のそばにいたいから働かせてくれるようにと頼む。優しいおじさんは犬や猫も拾うが人間も連れてくるとおばさんは笑っている。しかし姉弟はピーターが気になって仕方がない。
夜中に出かけたピーターを姉弟はあとをつけていく。冷たい湖のほとりで横になり彼は歌をうたう。二人は気を失い倒れてその場で眠ってしまうが、彼らをピーターが見下ろして「そうだ、三人が必要だ」と言う。
二人が目が覚めると馬に乗った男たちがやってくる。そして二人を捕まえて連れて行く。天幕に押し込まれると女王メーヴがいて、アルスターの間者に違いないと言う。女王が「ドルイドよ、忠告がほしい」と声をかけると男が出て来た。「ピーター!」
はーい、姉弟はここからコノハトとアルスターの戦いに紛れ込んで大活躍する。ローは恋をするし、ジミーは英雄クーフーリンと生死をともにして固い友情を結ぶ。

「ドルイドは死なないのだよ。ただ身体が死ぬのみだ。彼らの魂は新たな身体にうつり住む」とピーターは言う(ああ、輪廻転生!)。さすらいの身だった彼は二人と出会って過去の世界に通り抜けることができた。そして冒険ののちにローは「つまり自分にあれがあるなんて、思ったこともなかったの」「うれしいのよ。自分に魂があって」と告白する。

永遠の別れをして現実世界にもどると、もう夏休みが終りだとカナダから帰りの航空券がとどいている。最後の夜を近所の人たちを招いて食べて踊って楽しく過ごす。思いついてローはピーターを呼びに行く。ピーターがマンドリンを奏でると、おばさんが「早咲きの薔薇のようなアイリーン・アルーン・・・」と歌う。(講談社 1545円)

2007年09月20日

O.R.メリング「歌う石」

歌う石 O.R.メリング「ドルイドの歌」は鉄の時代の英雄クーフーリンを主人公にしていたが、本書はそれよりはるかに時代をさかのぼって、ゲーディル族とダナーン族の神々の時代、歴史も神話もあいまいな紀元前1500年の青銅器時代に設定した物語である。

捨て子だった18歳のケイはアメリカのある街に一人きりで、市の中心部にある古いアパートに住んでいる。ある夜、ケイは夢を見て外に出た。中庭には小さな池があって月光にきらめいている。金髪を肩に垂らしたケイは池のふちにしゃがみこむ。夢はここひと月ばかり繰り返して襲ってくるのだ。池の水をかきまぜると夢で見た顔が浮かんできた。助けを求める呼び声を感じる。ケイは幼いときからよく奇妙な夢や幻視を見ていた。そこへ「だいじょうぶ」と声がした。その声は同じアパートに住むマルタ島出身の学生アランだった。
彼の部屋へ誘われケイは生い立ちを話す。最後の里親はいい人だったが、16歳で独立してひとりで暮らしている。ある日16册の本が小包で届く。ほとんど英語だったが何語かわからないのがあって大学の先生に聞きに行き、その年は古アイルランド語を勉強した。一つの話はマルタ島の石の寺院の話だった。
翌日、ケイは一人でアイルランドへ発つ。ひと月後に会う約束をしてアランはマルタ島へ。
アイルランドへ着くと海辺の小都市ブレイに行く。どの物語も「歌う石」があらゆる問いの答えを握っていた。「石が見つかりますように」。下宿屋に1カ月の約束をしてその辺りを散歩し、やがて行く場所を見つける。バスでエニスケリーへ行き、村を出て歩き続ける。やがて巨石を見つけそのアーチをくぐる。あらがえない力に背中を押されてアーチの向こう側に出ると、そこは別世界だった。

そこからケイと途中で出会った少女アエーンとの二人旅がはじまる。二人はその森を抜け河を渉り峰を登る。やがて老人と出会い、ダナーン族のいにしえの四つの宝を見つけるように言われる。
四つの宝を探す旅の冒険は略します。アランそっくりの若き族長カハルが登場してすごくおもしろい。
旅が終わって最後に老人は言う。「魔術師とは、道に迷い、ひとりきりとなり、自らを探し求める時間を持たねばならぬもの。それもまた、そなたの訓練には欠かせぬものだったのじゃよ」。
森の木々の名前、ハンノキ、オーク、山トネリコの名称を見るだけで、わたしの気持ちがたかぶっちゃうよ。
アメリカにもどったケイはマルタ島からもどったアランと再会する。「・・・〈古代の石〉さ。断崖と海を見晴らす石の大宮殿なんだ。なんだか、自分が大昔の王さまで、きみが高貴な姫君としてそばにいるような気がした」(講談社 1600円+税)

2007年09月21日

O.R.メリング「妖精王の月」はものすごくロマンティック

妖精王の月 O.R. メリングこのシリーズの最初に読んで惹きこまれた本。まず巻頭のW・B・イェイツの詩「盗まれた子ども」にいかれた。

    人の子どもよ、行け
    水辺へ、また荒れ野へ
    妖精と手に手を取って
    この世にはおまえに理解できぬほどの
    嘆きが満ちているのだから

ダブリンの街、リフィー河をにごった水が流れていく。橋の上にいた男が「河よ、歌い方を忘れてしまったのか」、指先から光の矢がにごった水をつらぬくと、一瞬河は自由に流れた。河はうたった「王がゆかれる、王にさかえあれ」。
古本屋を兼ねた喫茶店の窓際の席にフィンダファー(フィン)がいると、「ここにかけていいですか」と美しい若者が聞いた。若者は詩を書いた一枚の紙を渡し、シーの塚でぼくと会ってくれという。「タラへきてくれ」と言って若者は去って行った。白昼夢のような出来事だった。店の人はさっきリフィー河が一分だけ透明になって流れるのを見た人がいると言った。
二人でアイルランドを旅する計画を手紙でやりとりしていた、仲良しの従姉妹のグウェンがカナダからやってきた。同じように金髪だがフィンはほっそりグウェンはちょっと太めである。
タラへの旅はヒッチハイクで、しなびた小男に乗せてもらった車で着くと、駐車場や喫茶店があった。向こうの方にタラの丘に通じる鉄門がある。二人は真夜中を待って石壁を登りタラの丘に立った。〈人質の墳墓〉の南京錠をこじあけて入り二人は眠る。塚山の門が開き黒いマントをひるがした若者がフィンを連れて行く。グウェンは叫ぶが「彼女の答えはイエスだ」と言われる。
朝になって目が覚めたグウェンはフィンがいないのに気づく。「妖精たちにさらわれたんだ」。探しながら広い道へ出ると昨日の小男が待っていた。そして車に乗せて着いた場所で、これからはバスで西へ行くように言う。
妖精たちは特別の才能を持ち主なら誰でも歓迎するので、アイルランドの音楽家や作家はあっちへ行って作品を持ち帰っているそうな。フィンは少なくとも7年間はあっちへ行ってなきゃならないと聞いて、グウェンは連れ出そうと決心する。

「ドルイドの歌」「歌う石」よりもロマンチックで、二人の少女の恋人と出会いがある。まっすぐに妖精の国へ行ってしまい、不死の世界から生死ある世界に恋人ともどってくるフィン。それを助けようとするグウェンはカナダ人らしい合理的精神の持ち主だが、村で出会ったダーラと恋に落ちる。「あたし、あなたの見かけがいいから、好きなのかもしれないわ」「きみも、ぼくの頭を少しは買ってほしいな」(講談社 1400円)

2007年09月30日

O.R.メリング「夏の王」

夏の王 O.R. メリングO.R.メリングのケルトファンタジーの4冊目(1999年)、翻訳は2001年。今回も鉄の意志を持った少女が、さまざまな障害にくじけず妖精の国へ行き、自分が望みそして与えられた使命を果たす物語である。そして主人公の少女がハンサムな青年と恋に落ちるのが定番。

ローレルの双子の妹オナーが事故で亡くなってから1年経った。まだそのショックから抜け出てないローレルは、祖父母が催したオナーの一年祭に出席するために、カナダからアイルランドの教会に来ている。オナーが亡くなって以来、彼女の日記を読み続けてきたローレルは、オナーの秘密を解かねばと思っている。ローレルは行動的でオナーは夢見がちと、二人は全然違うタイプの少女だった。
教会で牧師の息子イアンと出会う。17歳のハンサムな少年だが両親の悩みの種である。祖父母が彼の力になってあげなさいと言ったとき、オナーは「あの〈怒れる若者〉ね」と言ったことがある。いまローレルが「鼻つまみでいるのは楽しい?」と聞くと、平然として「ぼくが不良をやめたら、ほかのやつらはどうやって、自分が善人だってことを知るんだよ?」と言い返す。ローレルは彼を突き飛ばしたが、あとでイアンに感謝しなきゃと思う。自分の奥深く眠る何かを呼びさましてくれたから。
ブレイ山頂のオナーが亡くなった場所へ行くと一人の男が現れて待っていたと言う。祖母の家の昼食のときイアンが家出したと聞かされる。祖父はローレルにアイルランドの神話や妖精の本を出して教えてくれる。古代アイルランドでは妖精国は死後の世界だった。いまでもそれを信じている人がいるという。本にはさまれた押し花を一つ口にすべりこませると妖精が現れる。妖精クラリコーンはアキル島へに行き〈夏の王〉を探してほしいとローレルに頼む。〈夏の王〉が魔法の島に〈夏至のかがり火〉を灯さねばならないのだ。
アキル島には祖父母の別荘がある。出かけるときに、列車でおばばとダーラに出会う。彼らはグウェンを訪ねてカナダへ行くところだった(3人とも「妖精王の月」に出てきた)。
アキル島の別荘にはイアンが先に来ていた。それから二人は妖精の国へ行き冒険がはじまる。そして妖精の国で女王となっているオナーに会う。
海抜二千フィートの海まで垂直に切り立った崖をのぼれっこないとイアンは言うが、彼の気持ちは決まっている。ローレルが鉄の意志を持っているのを彼は知っている。ローレルは言う「女の子は、やるべきことはやるんだわ」。(井辻朱美訳 講談社 1500円+税)

2007年10月05日

O.R.メリング「光をはこぶ娘」

光をはこぶ娘 O.R. メリング

最後までストーリーを追ってしまったので、ストーリーを楽しみたいかたは、読むのは途中までにしてくださいませ。

O.R.メリングのケルトファンタジーの5冊目(2001年)、翻訳は2002年とすぐに出ている。いままで全然知らなかったけど人気がある本なんだ。
今回は前4作と違って主人公の少女ダーナは11歳、音楽家の父親ゲイブリエル(ゲイブ)と二人暮らしである。父と娘はなんでも話し合う習慣がついている。その日、ゲイブにカナダから、トロント大学でケルト学の課程で音楽とアイルランド語を教える仕事の口があると電話があった。ゲイブはカナダから地元の音楽家と仕事をするためにアイルランドへやってきて、知り合った少女と恋に落ちここで暮らしていたのだが、彼女はダーナが3歳のとき出て行ってしまった。

ダーナはカナダ行きはいやだと言ってケンカになるが、二人は気を取り直して〈低地の谷〉に行く。ここには環境保護戦士たちがツリーハウスに住んでいる。古い国アイルランドは突然、裕福になり、森は家屋の敷地になり、車道になりで、木々が切り倒されていく。〈低地の谷〉は自然保護法の対象なのに政府はその中心部に4車線の道路を通すことを許可した。環境保護戦士たちは世界中から集まって抵抗運動に加わり、森を守るためにテントやシェルターに寝泊まりしている。
ダーナはブナの古木の高いところにあるツリーハウスに気づく。そこにはちょっと変わった貴婦人がいた。そして〈木の民〉の者だと名乗る。そして森の破壊はわれらの世界の滅亡だと言う。それが「夏の王」で妖精の王と結婚して女王となっているオナーだった。
オナーはダーナに手を貸してもらいたいと頼む。そしたらあなたの心の奥底の願いをかなえてあげるわ。
それから妖精が見えるようになったダーナは鹿のように走る。オオカミと出会っていっしょに走る。【シカのように走るのは、軽やかで心楽しく、自然ややわらかな草や日光とのおだやかな一体感を感じさせた。・・・・オオカミとともに走るのは、影の中を、人生の暗い光の中を、生存競争と本能の中を走ることだった。】ダーナはここにオオカミがいるじゃないのと思うのだが、気にかかっていたことを思い出した。ウィックロー最後のオオカミは、グレンダロッホで殺されたことを。そしてオオカミは猟師に撃たれて死ぬ。ダーナは走り続ける。

抵抗運動の中に会社から金をもらって潜入していた男がいて、みんなをだましてよそへ行かし、夜中に資材を運び入れる。しかし老木が切り倒されそうなとき、通りかかったビジネスマン、秘書、子ども連れなどが続々現れて木を人間の鎖でとりまいた。そして開発業者は仕事を中断させられた。

ダナーは困難を乗り越えてオナーからの頼みを終えると、妖精の女性がやってくる。母だった。母はゲイブと恋に落ちてダーナを生んだが妖精の国へ帰って、いまは王妃となっている。オナーはカナダには双子の姉妹のローレルがいると言う。ダーナはカナダへ行くことを受け入れる気になる。いなくなった娘を探しまわった父親のもとへダーナは帰り、カナダへの飛行機に乗る。人間と妖精は共生していると強く訴えているところに惹かれる。

ここまでの5冊はカナダとアメリカからアイルランドへやってきた少女と少年の物語なので、今回は一応ここまでで一休みする。次の「夢の書」上下はもう翻訳が出ているが、カナダが舞台だそうだ。もう少し時間が経ってから読むことにする。(井辻朱美訳 講談社 1500円+税)

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