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フランソワーズ・サガン アーカイブ

2004年02月07日

ジョゼ

田辺聖子の小説「ジョゼと虎と魚たち」が映画化されて評判が良い。いまも上映中という広告を今朝の新聞で見た。わたしは小説は読んでないし映画も見ていないのだが、“ジョゼ”ってなんでだろうと興味を持った。わたしの知っているジョゼはフランソワーズ・サガンの3冊の小説の主人公である。それで映画紹介を読んだらやっぱりそうであった。田辺聖子の原作の主人公がサガンが好きで、だから自分でジョゼと名乗っているそうな。
わたしもサガンが好きだった。好きで好きでしかたがない時期が長くあった。中でも好きなのがジョゼ・サン・ジルという女性が主役の三部作で、このひとは「一年ののち」(1958)「すばらしい雲」(1962)「失われた横顔」(1975)の中で恋をし、結婚し、結婚に破れ、金持ちの男に救われるがその男につきまとわれ、最後にようやく、ほんとうにぴったりの人と出会い結ばれるのである。
わたしがいちばん好きなのは最初の「一年ののち」である。
ジョゼは親からの仕送りで遊んで暮らしていて、医学生のジャックと同棲している。作家志望のベルナールはニコルというおとなしい妻がいるが、ジョゼに惹かれている。野望に燃える若き女優ベアトリスは役のために、劇場支配人のジョリエと利用しあう。そしてベアトリスに惚れ込んだ青年エドワールがいる。夜会を催すのは初老の夫婦アランとファニー・マリグラスだが、アランはベアトリスに夢中である。
アンドレ・モーロアがプルーストのゲルマント家の夜会を思い出させると言った、マリグラス家の夜会ではじまり、それから一年後の夜会で終わる。
夜会の最後のシーンが好きだったのね。
【「いつか貴女はあの男を愛さなくなるだろう」とベルナールは静かに言った。「そして、いつか僕もまた貴女を愛さなくなるだろう。我々はまたもや孤独になる。それでも同じことなのだ。其処に、また流れ去った一年の月日があるだけなのだ…。」「ええ、解っているわ」とジョゼが言った。】
あと数行で物語は終わるのだが、よかったなぁ。こんな言葉に若いわたしはしびれていたんだ。

2004年04月02日

春の匂いがします─フランソワーズ・サガン「熱い恋」

セロリの大きな株があるので、丸元淑生さんの料理の本で教わった「ジャガイモとセロリのブレイズ」をつくることにした。実はポランの宅配にセロリがあるときはほとんど毎週つくっている。簡単にできておいしいし、セロリを一度にたくさん食べられる。
今朝、そのセロリを切っていたら、すんごい良い香りがただよった。春のセロリの匂い。
その瞬間「窓を開けましょうか。春の匂いがいたしますよ」という言葉が浮かんだ。フランソワーズ・サガン「熱い恋」の一節である。この本は一時熱狂して読んだが、数年前に整理してしまって手許にない。それで記憶のままに書くことにするが、もしかしたら記憶違いがあるかもしれない。違っていたらごめんね。
社交界でも評判のよい独身の実業家シャルル(60代前半という感じ)は、若い女性リュシールといっしょに暮らしている。リュシールは物憂いしぐさとものを持つことを嫌う性格の美しい女性である。シャルルはリュシールに新型のスポーツカーのキーををさりげなく贈る。早春の朝、黙って早起きした彼女は、家政婦(長いことここで働いている)に言付けをして新しい車で出かけてしまった。家政婦が言う言葉が「春の匂いがいたしますよ」で、ふだん詩的なことを言わない家政婦をいぶかしげに見たシャルルに、淡々と「リュシールさまがだんな様がお起きになったらそう言うようにと…」と言うのである。そして朝食をとったのかと聞くと「オレンジをひとつ持たれて、早く春に会いにいかなきゃ、と言って…」と答える。
そのリュシールが真実の恋をして出ていき妊娠してしまう。子どもを産んで普通の暮らしをしたい男を愛しながら、スイスでの中絶費用をシャルルに出してもらうリュシール。最後がシニカルでよかったなぁ。この本捨てなきゃよかった。
「別離」というタイトルで映画化されてカトリーヌ・ドヌーブが主演だった。ドヌーブは堂々としすぎて、しおたれた女の魅力を出せなかった。サガンの主人公はあまりにも映画的すぎて、いざ映画にしてみるとその魅力が映像で表せないのである。

2004年09月25日

フランソワーズ・サガン

今日の午後ネットのニュースでフランソワーズ・サガンが亡くなったことを知った。夕刊にも大きく出ていた。わたしの時代がすこーし終わったような気がする。
サガンを読み出したのはいつごろだったろう。「悲しみよこんにちは」は評判に反発してそっぽを向いていた。なにがきっかけになったのか、はじめて読んだのが「一年ののち」だった。それから「ある微笑」を読んで「悲しみよこんにちは」を読み、あとは出版されるのを待って読み続けた。
「スウェーデンの城」「ブラームスはお好き」「すばらしい雲」「優しい関係」・・・それぞれの主人公の会話をいまも覚えている。わたしはサガンから愛の言葉のほかに、イヤミ・ハグラカシなどのやりかたも学んだ。
「一年ののち」ほど何度も読んだ本はない。ジョゼはわたしに似ていると言われているくらいに、わたしはジョゼの“やりかた”の真似をした。サガンがいないのがさびしい。

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