エスタは伝染病に感染して大病を患い、ようやく治ったものの容貌が激変してしまう。心の底で愛している医師アラン・ウッドコートのことは、彼の母親が高望みをして、エスタごときは意に介していないので、これで良かったと思う。病中の出来事としてアランが船医として乗った船が難破し、アランがたくさんの人たちの命を助けたことを知る。
エスタを気にかけてくれるボイソーンさんは自分の田舎の屋敷で静養するように言ってくれる。チャーリーといっしょに行ったエスタは面変わりした顔をようやくエイダに見せる気持ちになる。野原を散歩中に出会ったのはデッドロック家の奥方だった。彼女の母とわかった奥方は、もうこれで一生会わないでしょうと言う。
デッドロック家の女中頭ミセス・ラウンスウェルは屋敷にはなくてならない人だが、長男は執事になる道を外れて、北の方で鉄工業を起こし成功している。その息子が奥方の小間使いローズに一目惚れしている。奥方は彼女を去らし、自分もこの屋敷から出ていこうとするが、顧問弁護士タルキングホーンに止められる。彼は奥方の過去を知り追いつめようとする。
エイダと婚約しているリチャードは仕事が身につかず、〈ジャーンディス対ジャーンディス事件〉裁判により自分にお金を入ることばかり考えるようになる。ジャーンディスさんとエスタは手を尽くすが振り切られる。
タルキングホーン弁護士が殺されジョージが捕まる。ジョージの冤罪を信じていろんな人が動くが、彼の母親はデッドロック家の女中頭ミセス・ラウンスウェルだとわかる。
だんだん人間関係が整理されてきていよいよおもしろい展開となる。
わたしが感心したのは、イギリスには紳士階級というものがあって、彼らの誠実な生き方というものがあるということ。それは「ジェーン・エア」のロチェスターさんだったり、「高慢と偏見」のダーシーさんだったり、「レベッカ」のデ・ウィンターさんだったりという理解に過ぎないんだけど、今回はジャーンディスさんのその典型を見せてもらっている。
そしてこの時代、産業資本主義が起こってくる。鉄に触るのが好きな若者は北の方へ行き工場を持つ。そして選挙にも出て爽やかな弁舌をふるう。片やデッドロック卿は病に倒れる。
さまざまな男たちが描かれると同時に、女たちもいきいきと描かれる。貴族の奥方の苦悩、そしてエスタとエイダの真っ正直な生き方。貧しい女たちが助け合う。彼女らはなにがあっても正直でへこたれないし、思ったことは口に出す。気持ちいい。民主主義というものがこうして生まれてきたと思う。(青木雄造・小池滋訳 ちくま文庫 760円)