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ジム・トンプスン アーカイブ

2006年05月19日

ジム・トンプソン「ポップ1280」にイカレた

ポップ1280 ジム トンプスン台風崩れの低気圧にせいか気分も体調ももひとつという感じ。晩ご飯後にテレビの地震番組「かんさい特集 M7・8の脅威」を見ていたら眠くなり横になったら爆睡してしまった。目が覚めてからもすかっとしない。台所を片付けてから、コーヒーを煎れて絵本を広げているうちにようやく目が覚めてきた。さて少し本を読もう。
まだ未読だったジム・トンプソン「ポップ1280」を広げた。未読だと思っていたが、あとがきを読むと「ミステリマガジン」に1998年11月号から分載されていたと書いてある。そうそうタイトルを忘れていたがこれは読んでいた。奇妙におもしろい作品だった。数ページ読んだだけで全体を思い出した。
とは言え、ジム・シンプソンの魂は細部に宿っている。のっけからイカレた。翻訳の2ページ目、アメリカ南部の小さな町、人口1280人のポッツヴィルで保安官をしているニック・コリーは、心配ごとがありすぎて病気になりそうだとある。【ポークチョップ五・六切れに、目玉焼きを二・三個。グレィヴィーをかけて粗挽きしたトウモロコシを添えた温かいビスケット一皿という献立を前にしても、おれは食えなかった。】とあるので食わなかったのかと思うと、全部は食えないんだって。その次は夜も眠れないとある。【たったの八時間か九時間で目が覚めてしまう。すっかり目が覚めてしまうんだ。ぼろぼろに疲れ切っているのに、もう眠りに戻ることができない。】
食欲のほうはさておき、睡眠のほうは呆れていられない。ただ夜も眠れないとはわたしのほうは言えない。夜はよく眠れて昼間も眠くなるのだから。今夜のところは低気圧のせいにしておこう。さあ、これをアップして、後はアメリカ南部の不条理な世界を彷徨うことにしよう。

2006年05月26日

梅田の本屋で

5月1日発行とどこかで読んで連休に探しまくったコミック「交響詩編エウレカセブン 4」は結局、今日5月26日発売なのであった。鳩居堂の夏の絵はがきも欲しいし、ジム・トンプソンの本も見たいしで、まず梅田の紀伊国屋書店へ行った。うっかりしてたわ、ここはコミックを置いてないないようだ。目的の絵はがきをいろいろ買って、朝刊に広告が出ていた「芸術新潮」〈特集 芭蕉から蕪村へ 俳画は遊ぶ〉を買った。
結局はジュンク堂やなと、まあ最初から思っていたのだけれど、東梅田から西梅田へ大阪駅の中を通っていった。ジュンク堂のあるビルの前の木立は、雨の中すでに新緑を過ぎて木下闇という感じ。
「エウレカ」はコミック売り場の入ったところに山積みしてあった。2階に上がり、ハヤカワポケミスコーナーでジム・トンプソン「鬼警部アイアンサイド」もすぐ見つかった。去年の5月に出てたんだ。ミステリ本コーナーをうろうろしていたら「ジム・トンプソン 最強読本」というのがあった。自伝的作品など3作が入っているので買うことにした。これは去年の6月に出たものだ。

2006年05月27日

ジム・トンプスン「鬼警部アイアンサイド」

鬼警部アイアンサイド ジム・トンプスン昨日買ってから帰りの電車で読みはじめ、昨夜は手が空いたら読んでいて、さっき読み終わったところだ。おもしろくてやめられないってよく書くけど、ほんとにそういう本に恵まれている。
テレビドラマ「鬼警部アイアンサイド」は訳者あとがきによると、日本では1969年から75年まで6年がかりで本国放送分の全部198話が放映された。わたしは多分はじめごろを見ている。後半は生活にテレビがなかった。レイモンド・バー扮するアイアンサイドが、車椅子に座った姿を鮮明に覚えているが、事件やストーリーは忘れてしまった。本書を読んでその雰囲気を思い出した。ドラマのノベライズではなくて、ジム・トンプスンが初期のテレビドラマの設定をもとに書いた作品で、1967年にアメリカで刊行されたという。
アイアンサイド警部はサンフランシスコ市警の敏腕刑事だったが、一発の銃弾が彼の下半身の自由を奪った。彼の手腕を高くかっている警察は顧問として彼を迎え3人の助手をつける。3人とアイアンサイドは親密な家族ような仲間だ。その1人黒人青年マークは車の運転や車椅子を押したりの世話をする万能の助手である。あとの2人は部長刑事エド・ブラウン、女性警官イヴ・フィットフィールド。
その日はアイアンサイドの誕生日で、ボスのために3人が祝ってくれる。その後にマークは夜学に出かける。近道を歩いていると白人のカップルに「黒んぼ」と呼びかけれられケンカになり、相手の男が病院へ運ばれて死亡してしまう。マークは元プロボクサーだとわかり殺人の疑いで逮捕される。そのころアイアンサイドは有力者の訪問を受けていた。いまやっている事件捜査の手を緩めるように頼まれてはねつける。
マークの無罪を証明することと、いまの事件を解決するためにアイアンサイドと2人の助手の不眠不休の活動がはじまる。
細部がさすがジム・トンプソンだと思う、ってそんなに読んでないのにファンぶって言っている。ほんまに不気味バーのシーンなんぞ他の人にはないトンプソンの世界だ。もう一度最初からゆっくりと読もう。(ハヤカワミステリ 1000円+税)

2006年09月07日

ジム・トンプスン「グリフタース」

グリフターズ ジム トンプスン屑のような詐欺師たちの生活と仕事ぶりを書いているのに、読み進むうちに愛の悲劇の物語であることに気がつく。それも近親相姦の愛の悲劇だ。悲劇へまっしぐらに進んでいく1人の男と2人の女の物語である。
ロイ・ディロンの母親リリイは貧乏な白人の家に生まれ、13歳で結婚して14歳でロイを産んだ。1カ月かそこらで亭主は事故で死に、事故のときの状況のおかげで周囲からすれば裕福な未亡人となり、家族に赤ん坊をまかせていたが、3年経つとロイを引き取るはめになる。リリイと暮らすロイは学校で飛び抜けて行儀がよい上によく勉強するが、それが仇となっていじめにあう。どんなおどしがあってもリリイは嘲るようなことしか言わない。やがてロイはその態度から慰めを得るようになった。ロイは13歳になりハンサムで健康そうな若者となる。リリイの態度が変わってくる、ロイを見る目に憧れがこもる。
高校を卒業するとロイは家を出て独立し、詐欺で稼ぎながらロサンジェルスでホテル住まいして、モイラを愛人として暮らしている。ある日、ロイは釣り銭詐欺を見破られ腹にきつい一発をくらう。そこへ7年ぶりに来たリリイはロイの顔色に気づき病院へ運ぶ。リリイもモイラもそれぞれ詐欺に関わっている。リリイはモイラとの仲を裂こうと、看護婦のキャロルをロイにあてがう。退院してからは悲劇へまっしぐら。
物語はどんどんいくのだけれど、その語り口に魅せられてしまった。モイラが酒を注文したときの一節だけど、大の男の給仕がこうるさい女の酒の注文をとっていくシーンで【この遠回りの始まりはどこだろう。その遠回りが文明を脇にそらせ、片手で酒を混合し、もう一方の手では爆弾を振りまわすようなことになってしまった。】とモイラはそういう言葉ではないがそういうことを考える。そんな表現が随所にある。(扶桑社文庫 667円+税)

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