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イアン・ランキン アーカイブ

2003年12月04日

「ミステリマガジン」1月号 作家特集イアン・ランキン

「ミステリマガジン」を買っていた時期はずいぶん長い。創刊号が出たころから買っていたように思う。当時はとてもおしゃれな雑誌だった。ミステリーから離れた時期があったが、また10年くらい前から買いだして、2年くらい前まで毎月買っていた。いつも同じような誌面に飽きたのと、経済事情が悪くなったこともあって、最近は気に入った特集のときだけ買っている。たまに図書館で読む。
今月はイアン・ランキンの短編小説が5篇入っているという広告を見て買いにいった。お目当てのジョン・リーバス警部のは2篇ある。
クリスマスストーリーの「サンタクロースなんていない」はリーバスと恋人のジーンが、ホテルで催されるクリスマス特別企画「ミステリの夕べ」へ行って出くわした事件の話である。刑務所から出所後9週目のジョウイは、国から支給されるわずかなお金でワンルームアパートで暮らしている。スコットランド議会でエイチスン議員の意見が通れば、お金の支給は止められ、すぐに浮浪者の仲間入りである。暖房がままならないので、彼は毎日図書館に行って本を読んでいて、エドガー・アラン・ポーに出会った。ポーの本の中に「盗まれた手紙」があった。ジョウイはそれにヒントを得て、サンタクロースの衣装を貸衣装屋で借りる。サンタクロースになればホテルにも自然に入り込める。そう、そこでリーバスと出会うのである。とても気持ちの良い終わり方で楽しい短編であった。あと4篇もよかった。

2004年05月04日

イアン・ランキンとローリング・ストーンズの「貧者の晩餐会」

イアン・ランキンの短編集「貧者の晩餐会」の帯に「リーバス警部が走り、ストーンズが叫ぶ」とあったので、どういうことかと思ったら「貧者の晩餐会」と」いうタイトルはストーンズの「 Beggars Banquet 」からなんですね。わたしはあまりストーンズにくわしくないので、相棒に教えてもらった。「これやったらうちにあるで」とCDを出してくれ、「LPレコードはジャケットは白地に筆記体(パレススクリプト)の文字が書いてあるだけやったんや。CDを出すときは、時代も変わって最初の写真を使おうということになったんやな」と言う。なるほど、CDの表側は便所の壁のリアルな写真のジャケットで、裏側には昔と同じ白地に文字のものが使われている。
それからにわか勉強で「 Beggars Banquet 」を何度も繰り返して聴いた。もともと、どれということなく聴いているから馴染みのアルバムである。でもイアン・ランキンが作品集のタイトルに使い、そこにローリング・ストーンズに捧げる作品「グリマー」が納められているのだから、リーバスファンとしてはおろそかにしたらいけない。
「グリマー」には「 Beggars Banquet 」を出すときの状況が語られている。ローリング・ストーンズにとってもミック・ジャガーにとってもたいへんなときだったらしい。ブライアンはA・A・ミルンがかつて住んでいた家に引っ越したばかり。その家でブライアンは死んだ。そしてその1969年にオルタモントでコンサートが行われて、ヘルス・エンジェルスが暴走した。イアン・ランキンの熱い息づかいが聴こえる。

2004年05月05日

イアン・ランキン「貧者の晩餐会」

いまわたしが一番好きなハードボイルドミステリーの主人公は、イアン・ランキン描くスコットランドの首都エジンバラで活躍するリーバス警部である。仕事にのめりこみすぎて上司とうまくいかないし、妻には去られるし、というのが多い警察小説の主人公の中でも、特別にひどい一人ではないかしら。でも、ハリー・ボッシュ刑事より乾いていて好き。ロックをよく聴き、ローリング・ストーンズが好きなところにも共感している。最初読んだときはびっくりしたけど、ストーンズに熱狂した世代も50代になってるんだ。自分のことを忘れて考えたらあかんね。
この本には、リーバス警部が出てくる作品が7編、その他が14編収められている。リーバス警部が出てくるとうれしいけど、短編だから物足りなくて欲求不満になってしまった。早く次の長編が読みたい。かえってリーバスものでないほうの、ノワールという感じの作品に、ランキンの魅力や短編作家としての能力があるように思った。昨日このページに書いたローリング・ストーンズを主題にした作品「グリマー」は当時の雰囲気がよく出ていてよかったし、「会計の原則」の結末の「帳尻がきっちり合うこと」という会話がうまい。
今年のエドガー賞は日本人の桐野夏生さんが候補作に選ばれたことで、日本でも早くから話題になっていたが、イアン・ランキンの「甦る男」が受賞した。これでもっと読者が増えたらいいのにね。(ハヤカワ・ミステリ 1600円+税)

2004年11月14日

イアン・ランキン「血に問えば」

10月の末に買った本をようやく読み終わった。いままでイアン・ランキンの本は7冊訳されているが、すべてハヤカワポケットミステリで、単行本になったのは今回がはじめてである。だからちょっと違う感じがしたのか、この本の内容がいままでと調子が違うのか、体調がよくなかったのとぶつかったせいか、夢中になって読み進められなかった。
リーバスは両手にひどい火傷をしている。シボーン・クラーク部長刑事にストーカー行為をしていた男が不審火で焼死したのだが、リーバスがその少し前にその家を訪ねたのを目撃されていたため、疑いがかかってしまう。上司からの厳しい質問をかわしながら、リーバスは私立校での銃の乱射事件の捜査にのめりこむ。殺された少年二人のうち一人はリーバスの親類だった。スコットランド議会議員のベルの息子は重傷を負っている。犯人はその場で自殺したが、その男は学校となにも関わりがない。その謎を追って、リーバスは火傷の上に革手袋をはめ、シボーン・クラーク部長刑事の手を借りて捜査を続ける。
あんなに好きだったリーバス警部のやり方に、今回はちょっと批判的になってしまったのだけれど、考えてみれば、リーバス警部はものすごいストレスを負っているのだから・・・なんて、ハタで聞いていたらわけがわからんね。言うても無駄かもしれないけど、お酒と煙草をもっと控えてほしいなぁ。そんなひどい火傷するなんて、心配するやんか。
でも、振り返って考えると、やっぱりランキンの書くエジンバラの街や人間の描写はすごい。もう一度読み直さなきゃ。うん、最後にシボーンが殺されたかと思って走るところがよかった。生きていたシボーンに目をつぶって長いキスをしたリーバス。次作では二人の関係がどうなるのか楽しみ。(早川書房 2000円+税)

2005年05月14日

イアン・ランキン「紐と十字架」

紐と十字架 イアン ランキンイアン・ランキンはサラ・パレツキーの次に好きな現代作家である。スコットランドはエジンバラのジョン・リーバス警部シリーズで最初に訳された第8作「黒と青」以来、翻訳が出るとすぐに読んでいる。だが、2番目に訳された「血の流れるままに」(第7作)の前の6作の翻訳が出てなくて、もう10年近く口惜しい思いをしてきた。4月に第1作の本書が出版されたわけだが、なぜか気がつかず、10日にメールで教えてもらったときはびっくりした。あわてて買いに行って手にしたときのうれしさ!
今週からヒザの治療に下新庄まで行くことになったので電車で読める。2回目の今日は熱中して1駅乗り越してしまった。気がついたら次の吹田駅に着いていて、引き返そうとしたら、この駅は駅内で上下線がつながってなくて、いったん外へ出てから地下道を通って梅田方面行きに乗った。出るときに乗車券を清算してしまい、また150円で1区間買うはめになり、なにをしていることやら。
本書はジョン・リーバス警部が41歳で部長刑事のときの物語である。シリーズを7作目から読んできたファンとしては、ようやく彼が若いときどんなことがあってこの性格になったかを知ることになった。また上司として知っているジル・テンプラーが広報担当の警部で、リーバスの恋人なのである。そのことはのちの作品でも過去の話として出てくるが、こういうことだったんだと納得がいった。陸軍特殊空挺部隊(SAS)にリーバスが志願して入隊し、辞めてから警察に入ったことは知っていたが、その恐るべき真実も知った。娘のサマンサはこのとき12歳で危うい目に会う。第2作が待ち遠しい。(ハヤカワ文庫 700円+税)

2006年01月20日

イアン・ランキン「獣と肉」

獣と肉 イアン ランキンイアン・ランキンの翻訳本はすべて持っている。ポケットミステリが8冊(うち1冊が短編集)、単行本が2冊、文庫本が1冊。すべて読んできたけど、どれもエディンバラという都市の暗部に巣くう犯罪を取り上げた重いテーマで、読むのがしんどい。
ジョン・リーバス警部とシボーン・クラーク部長刑事はセント・レナーズ署が組織再編成のため犯罪捜査部を解散したため、市の西端にあるノックスランドに配置された。シボーンには机とコンピュータがあるが、リーバスにはコピー機のそばのマグやケトルが置いてあるテーブルが彼の机となった。電話もないしコンピュータももちろんない。そろそろ辞めたらどうかという上司のほのめかしである。
ノックスランドは低所得者用市営団地で、数少ない店舗は窓やドアを鉄格子で防衛しており、開店時間でさえ取り外していない。以前市は麻薬中毒者や乱暴者など、ほかに住居を見つけにくい人々をそこへゴミのようにぶちまけた。最近ではこの団地の中でさえ避けたいほどの住居に、政治亡命者や難民など移民がはめこまれている。そこで喉首を刺した傷を含め多数の切り傷のある死体が発見された。
シボーンのところに、以前、強姦されて自殺した娘の親夫婦が訪ねてくる。自殺した娘の妹が失踪したという。強姦犯は最近出所していた。シボーンは失踪した娘を捜して聞き込みにまわる。
同じころパブの地下で女の骨が発見されて殺人かと騒ぎになる。その骨は250年前のもので大学の研究室にあったものだ。なぜ持ち出されてここにあるのか。
移民収容所を訪ねたリーバスは収容された人々のおぞましい状況にぶつかる。また、エスニック系の弁護士に対して投石しようとする少年をねじ伏せる。黒人の移民局係員ストーリィとの共同捜査をしながらも、腑におちないものを感じて真相を探る。
いままでの作品と同様に、たくさんの事件がからみあって進行していく。失踪した娘も、250年前の骨すら、いまの事件とからんでいた。
殺された移民ユルギの子どもにおもちゃを届けるなど優しいところを見せるリーバスだが、シボーンとのえも言われぬ関係はこのあとどうなっていくのだろう。
どうでもええようなことだけど、ひとつ知識を得た。エディンバラではスコッチと言わない。ウィスキーかモルトと言う。リーバスが言うには「スコッチという語が軽蔑的に使われていたことに由来するんだと思う」。なるほど、これからはスコッチと言うのはやめよう。(早川書房 2000円+税)

2006年04月28日

服を買わずに本を買う

夕方田舎パンを買いに堺筋本町のポールに行った。真ん前に紀伊国屋書店があるからね。先週の土曜日にまだ出てなかったイアン・ランキン「影と陰」が、もうあるだろうと思ったからだ。あった、ありました、来てよかったと、セイヤーズの在庫がない(誰かに読ませようとあげたので)のと、「ミステリマガジン」6月号を買った。
さっそく帰りの地下鉄のホームで「影と陰」を読み始めた。ジョン・リーバス警部、今回はどんな事件だろうと思ったら、いやに共感するところがのっけからあるじゃないの。
日曜日に週末の最後を過ごすためのパーティが恋人のライアンの家である。リーバスは昨日の土曜日はパーティに着ていく服を買いに出かけたのだが、値札にたじろぎ、代わりに書物を何冊か買い求めた。そのうちの1冊はライアンのために買ったのだが、自分が読みたくなり、代わりに花とチョコレートを持って行く。そしたらライアンはユリの花が嫌いだし、ダイエットで四苦八苦していたのを忘れていたという次第。
わたしも着るものを買わないとみんな古びている。しかもカジュアルしかないのでよその家に行く時はナンギである。家にいると着るものいらないもんね。お金はちょろちょろと本代に消えて行く。

2006年05月01日

イアン・ランキン「影と陰」

影と陰 イアン ランキンイアン・ランキンのジョン・リーバス警部シリーズは第8作「黒と青」がいちばん最初に翻訳され、次に第7作「血の流れるままに」が翻訳された。作品の年代順に年を取っていくので、けっこういい年になっているリーバス警部とつきあってきたわけだ。それが長編6冊(いま出ているのは7冊)読んだところで、最初のから読めることになった。ありがたいけど、最初から順番に読みたかったなぁ。いやいや翻訳で読めるだけでもありがたいです。
というわけで読み出した第2作「影と陰」は7作以降の緻密な構成には及ばないが、犯罪を徹底的に調べ上げる態度は同じである。リーバスの性格や生活もいまと同じである。いまも死にそうにしんどそうだが、10年から15年前だって同じように酒とタバコとコーヒーと無茶な食生活なのだ。
「影と陰」を読み終えた。リーバスは女友達のライアンの家で同席の人たちと話を合わせられず、気まずい思いをするが、その夜はライアンの部屋に泊まる。そのころ殺人が行われ、また別にエジンバラ郊外の建設現場では、ティンエイジャーの死体が穴の底に投げ混まれ埋められた。
翌月曜日の朝、殺人があった現場は見捨てられた住宅団地だった。ホームレスが侵入し不法占拠している部屋に、麻薬を打った若い男の死体があった。死体の側にはローソクがあり壁に黒魔術の奇怪な絵が描いてある。署へ帰ったリーバスに若い女性トレーシーから電話があった。殺された若者は自分は殺されたと言ったという。
一方、警察署へもどると主任警視のワトソンから呼び出され、麻薬撲滅キャンペーンの一員となるように言われる。でかけた集まりにはエジンバラの実業家や法律家が集まっていて、リーバスは居心地の悪い思いをする。
部下のブライアン・ホームズはロンドン大学へ入学したものの、8カ月で北へもどってきて警察官になった。リーバスにこき使われてアタマにきているが、無視されている。恋人の図書館員ネルは事件のとばっちりで怪我をする。
そんなこんなでリーバスが調べ出した事件と、著名人たちが関わってくる巧みな構成に、はまってしまうと読むのをやめられない。(ハヤカワ文庫 780円+税)

2007年12月18日

シェトランド島つながり

シェトランドといえばシェトランドセーターしか思い浮かばなかったが、この間からアン・クリーヴスの「大鴉の啼く冬」(創元推理文庫)を読みはじめて、えらい北にある島なのだと認識したところである。
川出正樹氏さんによる解説に、この島を舞台にした作品はイアン・ランキンの「黒と青」と、もう1冊ダンカン・カイルの冒険スパイ小説の2冊しかないと書いておられる。とはいえ、両方とも複数の舞台の一つであって、全編をこの最果ての島にしたのは本書がはじめてだそうだ。
ということなので、イアン・ランキン「黒と青」を出してきて、シェットランド島にリーバス警部が行くところを探した。リーバス警部はスコットランドはエディンバラの場末の警察署に勤務しているが、事件を追ってアバディーンからシェトランド島のサンバラ飛行場までヘリコプターで飛ぶ。アバディーンから島までフェリーで行けば14時間かかるそうだ。なんと北緯60度、もうちょっとで北極である。
迎えにきた島の警官はリーバスの手伝いをするつもりだったが、リーバスが断ると「でも、わたしは警察に20年勤めているんですよ。これが初めての殺人捜査なんです」と言うくらいの犯罪と無関係の土地なのだ。
その島で女子高校生の絞殺死体が発見される。シェトランド島の警察官ペレス警部の着実な仕事ぶり。あと三分の一読めば全貌がわかる。早く読も。

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