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サラ・パレツキー アーカイブ

2004年10月07日

サラ・パレツキー「ブラック・リスト」

待ちに待った「ブラック・リスト」。読み出したら物語に入りこんで猛スピードで読み進んだ。いつものことだが、ゆっくりと噛み締めて二度目を読む。いまはその途中である。
40歳になるあたりでヴィクが疲れを口にしだして、実は、わたしら読者はヴィクの今後はどうなるのか心配していたのだ。ヴィクは頭脳と経験を生かし、若い者が体を張ったらどうかなんて考えたこともあるが、それじゃヴィクではない。ここまできたら這ってでも闘ってもらいたい。
今回は疲れているけど、疲れたと言っている暇はないとばかりに走り回るヴィクがいる。ジャーナリストである恋人のモレルはアフガニスタンにいる。
サラ・パレツキーはニューヨーク貿易センタービルへのテロ攻撃以後、アメリカについて、また世界について深く考えたのだと思う。人々が恐怖に陥って思考を停止したかのような時期に、正気で腰を据えて考え抜いて書いた作品だと思う。
また、ヴィクがしっかりと非抑圧者の側についた行動をし、また軽口では富める者の生活と貧しい自分の生活を対比させるのも、いままで以上である。
サラ・パレツキーはハメット以来の真のハードボイルド私立探偵小説作家だということを、「ブラック・リスト」でわたしたちに証明してくれたと思う。

2004年11月10日

サラ・パレツキー「ブラック・リスト」が2004年ゴールド・ダガー賞を受賞

9月末に翻訳が出たばかりのサラ・パレツキー「ブラック・リスト」が、英国推理作家協会(Crime Writers' Association =CWA)の2004年ゴールド・ダガー賞を受賞したと、昨夜遅く木村二郎さんからお知らせをいただきました。
他の5人の作家とともにゴールド・ダガー賞の候補になっていることを、先日「海外ミステリ通信」号外で知って、サラ・パレツキーになりますようにと祈っておりましたが、受賞が決まってほんとうにすごくうれしいです。
わたしは他の候補作品を読んでいないので比べることはできませんが、「ブラック・リスト」はゴールド・ダガー賞にふさわしい内容の素晴らしい作品だと思います。このページの10月7日に簡単な読後感を書きましたが、ハードボイルド私立探偵小説として、ハメットを継ぐのはサラ・パレツキーであると確信を深めました。
英国推理作家協会(CWA)はミステリ関係の著書がある者を正会員とし、賛助会員も出版業界関係者などのプロに限っている権威ある会です。毎年発表されるミステリー作品から選ばれるゴールド・ダガー賞(Gold Dagger)、シルバー・ダガー賞(Silver Dagger)があります。
サラ・パレツキーは1995年に「ダウンタウン・シスター」でシルバー・ダガー賞を受賞しています。今回は2002年の「カルティエ・ダイアモンド・ダガー賞」に続き三度目の受賞です。トップページにもいれましたから見てくださいね。
ダガー賞についての詳細はCWAのサイトをごらんください。

2006年01月18日

ようやくサラ・パレツキーのコミュニティ

ミクシィ(mixi)〈日本初のコミュニティエンターテイメント・ソーシャルネットワーキングサイト〉に入ったのは、去年の7月だ。ここに入るのには会員の紹介が必要なので、何人か知り合いはいたんだけど、いちばん若い美容師のIくんに頼んで入れてもらった。それ以来、はまってしまい、毎日何度ものぞいている。日記も簡単ながら毎日書いているし、せっせと友だちのところへ行ってコメントを書いている。誘って入ったもともとの知り合いよりも、ミクシィを通して知り合った若い人との交流がおもしろい。
ミクシィには〈マイミク〉という友人関係の場と〈コミュニティ〉というのがある。〈コミュニティ〉には、いろんなカテゴリーがあって、びっくりするほどの数がある。ちなみに、いまのわたしのマイミクは26人で、入っているコミュニティは46である。どちらも全体から見ればうんと少ない。
さて、今日は懸案だったサラ・パレツキーのコミュニティを発足させた。検索で〈サラ・パレツキー〉を探したんだけど、出て来なかったんだよね。やっぱり、わたしがやらなきゃ誰がするんだってこと(笑)。
紹介文がなかなか書き始められなかったが、書き出したら他ならぬサラ・パレツキーのことだ。さっさと書いて出発させた。メンバーのトップバッターはブログ「KAZUN's Show Case」のkazunさんである。

2006年06月07日

サラ・パレツキー「ブラック・リスト」

ブラック・リスト サラ・パレツキーあと3日で新作「ウィンディ・ストリート」(原題 Fire Sale)が読める。その前にもう一度「ブラック・リスト」を読んでおこう。
9.11以後のアメリカの様子はテレビや新聞・雑誌のたくさんの記事で伝えられ、あれっと思うような人までが愛国者になっていた。いまでは驚くようなことが数年前のアメリカで語られ支持されたのだ。サラ・パレツキーはその空気の中を正気で生きてきた。本書を読めば柔軟な思想と堅固な意志を持って生きている人だと理解できる。
ヴィクの恋人フリージャーナリストのモレルはアフガンに取材に行ったままである。その身を案じてヴィクは眠れない日々を過ごしつつ、仕事に熱心に取り組むことで気持ちをまぎらわしている。そこへ金融関係の調査依頼先ダロウ・グレアムから、いつもの仕事でなく母親の屋敷付近で不審なことがあるので調べてほしいと依頼があった。ダロウの母ジェラルディン・グレアムは「ER」のカーターの祖母を思い出させる、大金持ちで尊大な人だが、過去に大きな傷を負っていた。息子のダロウの苦しい過去も明かされていく。
ヴィクが屋敷のまわりを調べると池に黒人男性の死体を発見する。殺されたのは優秀なジャーナリストだった。男性の家族から調査を依頼されて調べ始めると、ダロウから母親の調査から手を引くように指示が来る。また調査中に無人の屋敷に金持ちの少女がエジプト移民の少年をかくまっているのも発見する。
複雑に絡み合った過去と現在、50年代赤狩りの時代と現在の愛国者法をからませて、ヴィクが愛国者法で逮捕されかねない状況が描かれる。遠い赤狩りの時代、その時代に生きた人たちの愛と憎しみが、いま現在につながってくる。(早川書房 2200円+税)

2006年06月22日

サラ・パレツキー「ウィンディ・ストリート」読了

ウィンディ・ストリート サラ パレツキー最初のシーンからクライマックスのよう。ヴィクは土手の途中までおりたところで閃光を見て体を伏せる。そして悲鳴もあげられないほどの激痛を肩に感じる。目の前の工場が燃えている。ヴィクは工場主ザマーがそこにいるはずと必死で錠を開けようとするが、気がついて携帯で911に電話する。消防の男たちに助けだされて指令車の助手席に座ったとき、「ミズ・W。何やってんだ、こんなとこで」とコンラッドの声がした。ああ、なつかしいコンラッド、昔のヴィクの恋人である。
コンラッドが家まで送ってきて話を聞こうとする。彼はサウス・シカゴの警邏隊長になっており、火災があった場所は彼の管轄区域だ。サウス・シカゴを離れて25年にもなるじゃないかと言うコンラッドに「・・・この街ではね、生まれ育った場所が生涯ついてまわるの」と答えるヴィク。
ヴィクがサウス・シカゴに行ったのは、母校の恩師で高校の女子バスケット部のマクファーレンコーチが病気になり代わりを頼まれたからだ。バスケット部員の生徒に、母親が働く工場がいやがらせにあっているのを調べてほしいと頼まれる。その工場を調べはじめたところで、頼んだ母親に圧力がかかり手を引いてくれと言い出す。なにがあったのかヴィクは調べずにはいられない。
一方、地元の大企業にバスケット部への寄付を頼みにいくと、社長の孫息子が好意を持って当たってくれるが、会社幹部には無視される。
ヴィクは自分がそうであったように、少女たちがバスケットで奨学金を受けて大学に行くことで、貧しさから抜け出す道があることを教えようと思う。そこでの火災と怪我である。
恋人のジャーナリスト モレルはアフガンで銃弾が当たって重傷を負い、シカゴにもどって療養している。そこへ昔からの友人の女性ジャーナリスト マーシナがやってきて泊まりこんでいる。マーシナはサウス・シカゴを取材したいとヴィクに同行するが、華やかで人に接するのがうまく少女たちの関心も得るし、ヴィクは自分の嫉妬心に悩まされる。マーシナはバスケットの生徒エイプリルの父親ロメオから話を聞くと言って彼のトラックに乗り込み関係を持つ。
やがて殺人事件がおき、マーシナがまきこまれる。マーシナの匂いを追って愛犬ミッチが大活躍するシーンもある。
今回はコントレーラスさんもよく登場して元気のよいところを見せる。モレルの傷がだんだん癒えてきているようでよかった。コンラッドはイヤミも言うけど、いままでの他の警官ほどでないし、ヴィクをちゃんと認めているからよかった。モレルとコンラッドとコントレーラスさんがヴィクの部屋で話をするところがおもしろかった。
最後にダロウからバン1台分の花が贈られたところは泣けた。「きみがまだ死んでいないと知って喜んでいる。ダロウ」だって。
それからうれしかったこと。ヴィクはiBookを使っている。しかも「わたしのマック」と言っている。ふふふ。

2006年12月12日

サラ・パレツキー「ガーディアン・エンジェル」とイラスト"One Scene"

ガーディアン・エンジェル サラ パレツキーヴィクシリーズのワンシーンを描いた「Mina's Gallery "One Scene"」がおもしろい。本の中の気に入った1シーンの絵なのだが、その選択がユニークなのだ。そして、わたしの好きなシーンが多い。今日はMinaさんの絵を見て本を出し「あ、ここ、ここ」とほくそ笑んだ。
サラ・パレツキー「ガーディアン・エンジェル」の208ページ。ヴィクは2人の男につけられている。バスと高架鉄道で引き返すことも考えたが、〈ベルモント・ダイナー〉に飛び込む。ランチタイムは過ぎており店は空いている。ウェイトレスのバーバラがヴィクの好みのものがあると言うが、「今日はパス。わたしに少々興味を持ち過ぎの男性二人につきまとわれてるの。裏口から逃がしてくれない?」そのとき男が店に入ってくる。「まかしといて、ヴィク」バーバラが裏口へ出してくれ、ヘレンが男の真ん前にアイスティーのピッチャーを落とす。ヘレンが謝ってズボンを拭くと言っているうちにバーバラがヴィクを押し出す。
わたしはその後が好き。ヴィクは礼を言って「遺言状を書くとき、みんなのことは忘れないわ」と言うと、バーバラはヴィクの肩甲骨の間を強く押して「それから、おべっかはけっこうよ。遺すものなんかないことは、みんなが知ってるから」。ここはヴィクの負けである。ウェイトレスの心意気をそのままもらうべきところだった。
ヴィクシリーズを読んでいてバーバラが出てくると、いつも「テルマとルイーズ」のスーザン・サランドンを思い出す。ウェイトレスで暮らしを立てている平凡だが気の強い女。

2007年05月17日

シカゴのいまの空気 USセルラーフィールド

今年から大リーグの中継を見ることにしたので午前中がややこしい。中継全部見ているわけではなく、井川投手の活躍を見たいと思ったのが最初なので、ニューヨークヤンキースを中心とした中継である。であるからいまわが家は大リーグに合わせた生活になっている(笑)。仕事や用事も片付けつつなので、ぼつぼつだが。

今日はシカゴホワイトソックスとニューヨークヤンキースの試合がシカゴのセルラーフィールドであった。昨日は午前9時からというのでテレビをつけたら雨が降っていて、それでもお客さんが入って待っている。結局降り止まなかったようで、10時と11時につけたがやってなかった。
そのぶん今日はダブルヘッダーで午前中からはじまるという過酷な日程なのだ。それも第1試合がすむと雨になって第2試合は遅れてはじまった。夜になるとすごく寒そうでグラウンドの体感温度は6度くらいかなんてアナウンサーが言っている。お客さんはフード付きのコートの人が多く、何人かで毛布を足にかけている人たちもたくさんいる。

ホワイトソックスのピッチャーが「コントレーラス」さんなんでびっくり! サラ・パレツキーのヴィクシリーズを読んでいる人ならすぐわかるよね。たくさんのシリーズ登場人物の中でもっとも人気がある。わたしもいちばん好き。危機に陥ったヴィクに拳銃を投げ渡してくれるところで泣いた。おしゃべりで世話焼きで、なにかあればスパナを持って飛び出してくる。元機械工で組合活動もしてきた筋金入りの労働者階級の人。

球場だけのことだけど、“シカゴのいま”の空気が見えてよかった。サラ・パレツキーさん(同じシカゴでもカブスファンだけど)が、もしかしてこの中継を見ていたら、在シカゴのkazunさんが見ていたら、同じものを見てるんやなぁと楽しくなった。

そうそう、肝心の野球。第1試合は3-5でホワイトソックスが勝ち、第2試合は8-1でヤンキースが勝った。松井選手のタイムリーな2塁打が勝利を呼んだ。

2007年06月23日

「フィリップ・マーロウの事件」の中にサラ・パレツキーの短編が入っている

フィリップ・マーロウの事件 レイモンド・チャンドラー本書は私立探偵フィリップ・マーロウを創作したレイモンド・チャンドラーの誕生100年を記念して、1988年に刊行された本の翻訳である。日本で1990年に刊行された「フィリップ・マーロウの事件 I・II 」から16作品を選び出し、文庫で1册にして今年再発行されたもの。
サラ・パレツキー、ロジャー・L・サイモン、ジョン・ラッツなど好きな作家が入っているのはありがたいが、ロバート・クレイスが入っていないのが淋しい。元々の本は持っていたのだが、いまは所在不明になっているのでなんとかして全部読みたいものだ。

今日の夕方ジュンク堂で買って、シャーロック・ホームズでギネスを片手に読んでいたのだが、不思議な気分になってしまった。好きな作家から読んでいったのだが、当たり前ながらすべてフィリップ・マーロウの事件である。しかし作家によってどことなく違うというか、チャンドラー描くよりもマーロウらしいみたいなところもある。さっさと読まずに時間をかけてぼちぼちと読んでいくことにしよう。最後にチャンドラー本人の「マーロウ最後の事件」が収録されている。

今日はサラ・パレツキーの「ディーラーの選択」の紹介を。
私(マーロウ)がオフィスの待合室へ入っていったとき、彼女が静かに座って待っていた。黒髪で赤いシャンタンのドレスと帽子の小柄な女性である。兄が賭け事で負けて、母の形見のダイヤの指輪をとられてしまうと言う。ギャンブル相手のボグナヴィッチに話をつけてほしいと言うのだ。ボグナヴィッチの家へ行くと、彼は口径の小さな拳銃で6発撃たれ死んでいた。
オフィスへ帰って彼女の残した連絡先へ電話すると、農場につながり、女は一人もいないと言われる。マーロウは農場へ出かける。そこでなぐられてクルマに放り込まれ、ガソリンをかけられて火をつけられるところに、出てきたのがかの女で、こんなところでやったら目立つわよ、私が谷底に突き落とすと言ってクルマを走らせる。
この女性が日系人でアキコといい、第二次大戦時代に農場を持っていた日系人がどう生きていこうとしたかという話になる。
依頼人の女性の雰囲気、机の引き出しから出して飲むライ・ウィスキーはチャンドラーとマーロウの世界だが、日系人が暮らしにくかった時代をうまくとらえている社会性はサラ・パレツキーのものである。(ハヤカワ文庫 940円+税)

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