ピーター・トレメイン「自分の殺害を予言した占星術師」
山本やよいさんにいただいた「ホロスコープは死を招く」は、16人の作家によるホロスコープをテーマにしたアンソロジー集である。すべてを山本やよいさんが訳されている。ぎっしりと詰まった分厚い文庫本で、読めども読めども終わらない。わたしはホロスコープについてあんまり興味を持っていない。自分が乙女座でよかったと思っているが、今日の運勢とかには無関心である。そんなもんで、この本はちょっとしんどいかと思ったのだが、読み出したらそれぞれがおもしろくてやめられない。いちばん感心したのがピーター・トレメイン「自分の殺害を予言した占星術師」である。
作者紹介によると、本名がピーター・ベレズフォード・エリスというケルト学者で、【アイルランドの法体制のもとでも女性が弁護士になれることを立証するために、7世紀のケルトの法律家として修道女フィデルマを誕生させた。】とある。フィデルマを主人公にした長編が8作あるそうだ。
で、この作品だけど、修道士が湖で溺死しているところを発見される。彼は1週間前に自分はある特定の日に殺されることになっていて、犯人は院長だと仲間に話していた。2人は犬猿の仲だった。殺された修道士は占星術を実践していて、院長はそれを嫌って禁じようとしていた。院長が逮捕される。司教がフィデルマに事件を調べるように派遣するが、裁判官は簡単に解決がつく事件だと言って不愉快そうだ。結局フィデルマが論理的に事件を解決する。
気に入ったところを書き写しておく。
【裁判官は生まじめな顔で頭をふった。「運命を変えることはできません。運命からは逃れられないのです」「それはローマからもたらされた考え方です」フィデルマは非難した。「わが国の賢者たちは、人は自分を束縛するものを運命と呼ぶのだといっています。運命というのは、こちらが行動をおこす、おこさないに関わりなく、ふりかかってくるものではありません。行動をおこさないときにのみ、避けがたいものとなるのです。」】



