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ピーター・トレメイン アーカイブ

2006年07月13日

ピーター・トレメイン「自分の殺害を予言した占星術師」

ホロスコープは死を招く アン ペリー山本やよいさんにいただいた「ホロスコープは死を招く」は、16人の作家によるホロスコープをテーマにしたアンソロジー集である。すべてを山本やよいさんが訳されている。ぎっしりと詰まった分厚い文庫本で、読めども読めども終わらない。わたしはホロスコープについてあんまり興味を持っていない。自分が乙女座でよかったと思っているが、今日の運勢とかには無関心である。そんなもんで、この本はちょっとしんどいかと思ったのだが、読み出したらそれぞれがおもしろくてやめられない。いちばん感心したのがピーター・トレメイン「自分の殺害を予言した占星術師」である。
作者紹介によると、本名がピーター・ベレズフォード・エリスというケルト学者で、【アイルランドの法体制のもとでも女性が弁護士になれることを立証するために、7世紀のケルトの法律家として修道女フィデルマを誕生させた。】とある。フィデルマを主人公にした長編が8作あるそうだ。
で、この作品だけど、修道士が湖で溺死しているところを発見される。彼は1週間前に自分はある特定の日に殺されることになっていて、犯人は院長だと仲間に話していた。2人は犬猿の仲だった。殺された修道士は占星術を実践していて、院長はそれを嫌って禁じようとしていた。院長が逮捕される。司教がフィデルマに事件を調べるように派遣するが、裁判官は簡単に解決がつく事件だと言って不愉快そうだ。結局フィデルマが論理的に事件を解決する。
気に入ったところを書き写しておく。
【裁判官は生まじめな顔で頭をふった。「運命を変えることはできません。運命からは逃れられないのです」「それはローマからもたらされた考え方です」フィデルマは非難した。「わが国の賢者たちは、人は自分を束縛するものを運命と呼ぶのだといっています。運命というのは、こちらが行動をおこす、おこさないに関わりなく、ふりかかってくるものではありません。行動をおこさないときにのみ、避けがたいものとなるのです。」】

2006年07月15日

山本やよいさん訳 アン・ベリー編著「ホロスコープは死を招く」

ホロスコープは死を招く アン ペリー一昨日13日に本書の中の1作、ピーター・トレメインの「自分の殺害を予言した占星術師」のことを書いた。この1作が気に入ったからだが、他の作品もなかなかおもしろかった。編者であり1作品を書いているアン・ベリーは映画「乙女の祈り」の親友のモデルだったと名乗り出たことで有名な人だそうだ。彼女の作品「青い蠍」は才長けた感じで好感をが持てた。
あとは、やっぱりローレンス・ブロックの「ケラーのホロスコープ」がよかった。わたしは「八百万の死にざま」を読んでからマット・スカダーのファンだったが、最近の作品は読んでないのでケラーが出てくるのははじめて読んだ。ケラーは占い師に手相を見てもらうために手をさしだしたら、相手は手をじっと見てから押しもどしたとマギーに言う。マギーは手を見せるように言い、ケラーにあなたは殺人者の親指を持っていると告げる。ケラーが殺しの仕事をやってのけた後にあったことは、ここで書いたら叱られる。本を買って読んでください。
その他サイモン・ブレッド「ライブラリアン」もよかったし、ビル・クライダー「獅子座の女」、リリアン・ステュアート・カール「美は見る者の目に・・・」もよかった。(ヴィレッジブックス 1200円+税)

2006年12月10日

あたまの中は「蜘蛛の巣」でいっぱい

蜘蛛の巣 上 ピーター・トレメイン買ってから半月以上経ってようやく読み出したのだが、おもしろくて手放せない。たいていの本のことをそう書いてるような気がするけど、本書ピーター・トレメイン「蜘蛛の巣」は特別のおもしろさで、今日一日ひたすら読んでいた。もう少しで読み終わるので、いまもったいないから一休み中である。これをアップしたらまた7世紀のアイルランドにひたろう。
本書は修道女にして法廷弁護士のフィデルマが主人公のシリーズである。すでに16冊が出ていていまごろは17冊目が出ているはずという。英語圏のみならずヨーロッパでも人気だとか。「蜘蛛の巣」は5冊目とのことで、初期の作品の中でも日本の読者が興味を持ちそうなのを、作者と相談して選んだそうだ。
最初から引き込まれるのだが、なにか親しい感じがするのは「指輪物語」や「ゲド戦記」と雰囲気が似ているからかもしれない。旅の途中の宿で「指輪物語」の宿屋を思い出したり、森の隠者を訪ねるところでは「スターウォーズ」のヨーガを思い出したりした。
このシリーズを知ったのは7月のこと、「ホロスコープは死を招く」という短編集の中で光っているフィデルマを発見したのだ。そのこきから長編を読みたいと思っていたが、こんなに早くかなうとは! たくさん売れて次々と翻訳が出てほしい。

2006年12月13日

ピーター・トレメイン「蜘蛛の巣」は最高

蜘蛛の巣 下 ピーター・トレメイン本を読んでいて幸せやなぁと感じるときがたまにある。ことしはその“たま”が多かった。読書に実りのある年だった。そして年末になってまた最高の本に出会えた。ピーター・トレメイン「蜘蛛の巣」である。7世紀アイルランドの修道女フィデルマを主人公としたミステリーのシリーズ第5作で、日本ではじめて翻訳された。ピーター・トレメインはミステリーを書くときの名前で、本名はピーター・ベレスフォード・エリスといって名高いアイルランド、ケルト文化の学者だそうである。

本書の舞台は南アイルランド。古代のアイルランドは鬱蒼とした森林に覆われていた。神話の神々も、古代や中世の隠者たちも、自然を友として暮らしていた。その大森林が壊滅状態になったのは、産業革命期にイギリスによって大伐採が行われたからだという。
古代アイルランドでは、女性は多くの面で男性とほぼ同等の地位や権利を認められていた。フィデルマは国王の妹であるが、最高の学問を修めた法廷弁護士でもある。
ということで、物語はフィデルマが修道院で裁判の審判と裁定を行っているところからはじまる。土地の権利についての争いの裁定をしたフィデルマに来客があった。兄のところから来たサクソン人のエイダルフ修道士は以前から親しい間柄である。アラグリンの族長エベルが殺されたのを調べてくるようにということで、いっしょに調査に行くこととなる。
アラグリンへ到着すると、すでに犯人として視力、聴力、発声に障害のある青年モーエンが捕えられている。遺体のそばにナイフを持ってうずくまっていたというのだ。
後継予定者のクローンはエベルの娘で若くて美貌だが高慢である。調べていくうちに立派な人というエベルの本当の姿がわかってくる。エベルの未亡人、司祭、護衛隊の指揮官や兵士たちの姿もだんだん明らかになる。第二、第三の殺人があり、フィデルマたちも狙われる。
ストーリーはここまでにしましょう。どんどんおもしろくなって本を放せなくなること請け合います。
甲斐萬里江さんの訳は読みやすく注釈が丁寧なので、一度目はストーリーを追っていき、二度目は注釈を読みつつ楽しんだ。(創元推理文庫 上 下 とも 840円+税)

2007年05月20日

ピーター・トレメイン「アイルランド幻想」

アイルランド幻想 (光文社文庫) ピーター トレメイン図書館で見つけてすぐに借りてきた(光文社文庫)。著者のピーター・トレメインは7世紀アイルランドを舞台に尼僧フィデルマが活躍するシリーズ(創元推理文庫で「蜘蛛の巣」上下が出ている)がすごくおもしろかった。そして彼は本名がピーター・ペレスフォード・エリスという高名なアイルランド学者なのである。
わたしはアイルランドに興味があって、鶴岡真弓さんの「ケルト/装飾的思考」をはじめとして、なんだかだと本を読んでいる。だが、ケルト幻想文学みたいなのは読み出してもなかなか最後までいかない。学問として読むわけでなく、ただの興味で読むのだからかったるくなるのだ。
ピーター・トレメインの語り口のうまさは「蜘蛛の巣」でよくわかっているので、きっとおもしろいだろうと思って読み始めたら、最初から引き込まれた。アイルランドに関わりある短編小説が11篇集められている。ほとんど現代人が祖先の地へ行く話である。目的地に着くまでに道に迷って着いたところが、19世紀のジャガイモ飢饉で死に絶えた村で、当時のままの村人に出会う話。また妻の故郷のアイルランドで、むさくるしい老婆に手渡されたお守りの悪戯妖精プーカに呪われる話。アイルランドへ引っ越してきた盲目の音楽家と妻が住む屋敷の庭に石柱があって、妻と不倫中の相手が夫を殺そうとしたとき、石柱が粘度と化して二人を取り込んでしまう話。
イギリスの支配下にあって悲惨な生活を強いられたアイルランド人は、豊かな農作物をイギリスに持って行かれ、主食であるジャガイモが疫病で壊滅的な被害を受けたため、100万人以上の餓死者を出した。本書の物語の背景にはそういったアイルランドへの哀切な気持ちがあるので、ただの幻想恐怖文学ではない哀愁がただよっていて魅させれた。

2007年10月14日

ピーター・トレメイン「幼き子らよ、我がもとへ」

7世紀アイルランドを舞台にしたピーター・トレメインの修道女フィデルマ・シリーズの2冊目。原作では3番目の作品である。前作「蜘蛛の巣」は第5作だった。日本人に理解しやすいのから訳しているみたい。でも本書を読んでいると、なつかしそうにエイダルフ修道士のことを思い出しているので、こちらのほうが後かと思った。1作目に登場したあと故郷に帰ったけど、またアイルランドへ来る機会があって「蜘蛛の巣」となったのね。イギリスではすでに17作出ていて、もうすぐに18冊目が出る(アメリカでも来年には17作目が出る)という人気のシリーズである。

雷鳴とどろく中、尾根道を騎乗の女性が疾走している。モアン王国のキャシェルへ兄に呼ばれてやってきた修道女フィデルマである。城へ着いて出会ったのはラーハン王国の使節で無礼な態度をとる。そこへ国王直属の戦士カースが出迎える。叔父であるカハル王が重態であるという。兄は王位継承者である。
兄の話ではラーハンからダカーンという大学者が、モアン王国にあるロス・アラハーの修道院の研究や教育のことを聞いて、修道院へ滞在したいと申し入れ、喜んで受け入れられた。だが彼が何者かに殺された。そのニュースが伝えられるとラーハン側は大変な要求をしてきた上に、修道院長(兄妹の従兄弟)を〈タラの大集会〉で訴えるという。
兄はフィデルマにダカーン殺害の真相を探ってほしいと頼む。〈タラの大集会〉までには3週間しかない。翌朝、フィデルマはカースとともにロス・アラハーへ向かう。
途中で焼き払われた村を通り、修道女と孤児たちを見つけていっしょに山を歩くなど苦難の旅を続け、目指した修道院に到着する。

入り組んだ筋立て、たくさんの登場人物、複雑で読みにくさはあるけど、筋が一本しっかりと通っていて気持ちよい。最後の〈タラの大集会〉ではフィデルマの弁論が冴えわたる。楽しかった。(甲斐萬里江訳 創元推理文庫 上下とも 800円+税)

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