メイン

ピーター・ラヴゼイ アーカイブ

2004年01月29日

山本やよいさん訳 ピーター・ラヴゼイ「最後の声」

ピーター・ラヴゼイのピーター・ダイヤモンド警視シリーズ最新作である。本の帯に「最悪の事件。警視の愛妻ステフ、殺害さる。」と大きな文字で書かれているのにびっくりして、訳者あとがきを開いた。山本さんも翻訳にとりかかる前に、カバーの内容紹介を初めて読んで思わず自分の目を疑ったと書いておられる。われらがダイヤモンド警視は愛妻ステフがいるからこそ、いままで逆境でもやってこられたのに、なんとしたことなんだと、だれにともなくふつふつと怒りがわいてきた。
ページをめくると裁判所でダイヤモンドが検挙した男が有罪判決を受けるところである。ダイヤモンドが裁判所を出ると、待っていた犯人の“女”に顔をひっかかれてしまう。家に帰ってステフに消毒してもらい、その事件について話し、その夜は仲良くベッドに入る。翌日いつもどおり仕事に行き、転勤をすすめる上司とやりあい、昼休みを過ぎたころ、ヴィクトリア公園で銃で殺された女性の死体が見つかったと連絡が入る。ダイヤモンドが行って覆いをとると、その殺された女性は妻のステフだった。捜査本部が設置され、他地域から責任者が任命される。
そんな理不尽な不条理なことがあるかとダイヤモンドも読者も思うが、話はどんどん進んでいき、ダイヤモンド自身が容疑者という事態になる。もちろんダイヤモンドは独自に動き、最後に事件を解決する。
昔彼の部下だったジュリーは他地域にいるが電話で話すことで援助するし、ステフの葬儀に関しても実際的な助言でダイヤモンドを助ける。バース寺院での葬儀はステフがどんなに周りの人たちに愛されていたかを教えてくれる。自身には子どもがいなかったが、たくさんの人たちをボランティアで支えていたこともわかる。なのになんで殺されてしまったのだ?
殺人は冷然と行われたものだった。だれであっても、いくら本人が無垢であっても、犯罪の犠牲になってしまう恐怖がひしひしと伝わってきた。(早川書房 1900円+税)

2005年02月09日

山本やよいさん訳 ピーター・ラヴゼイ「漂う殺人鬼」

ダイヤモンド警視が活躍するシリーズ8冊目。前作「最後の声」では愛妻ステフが殺人事件の犠牲者となってしまった。それ以来自宅を家庭と思えなくなったダイヤモンドは孤独な生活を送っている。
物語はバース警察署の上司ジョージナが、休暇中に愛猫をどこへ預けるかと悩むところからはじまるが、それは序章。海水浴客で賑わう海辺で女性が殺されているのが見つかるのが事件の発端である。所轄の警察の女性主任警部のヘンリエッタ・マリン(ヘン)が担当するが、殺された女性は殺人事件を追っているプロファイラーのエマ・タイソーで、バースの住人であることがわかる。それでダイヤモンド警視の登場となる。ヘン警部はすごく小柄だが、誰に対しても一歩も引かない、男社会で生きるすべを学んできた女性である。なにごとも耐え抜き着実に昇進してきた。彼女が身につけた男の習慣はひとつ、葉巻をくゆらすことだ。ダイヤモンドとヘンのやりとりが今回のおもしろいところである。
かたや、秘密にされていたが、映画制作者が殺され、その犯人と名乗る男からプロゴルファーと元歌手のアナに対する殺人予告があった。しかもこの事件を秘密にプロファイリングしていたのがエマであることがわかる。エマのパソコンに残された日記を解読すると、エマが最近つきあっていた男を捨てたことがわかる。その男をエマ殺しの疑いで調べるがアリバイがあった。
元歌手アナを殺人から守るために必死になるダイヤモンド、エマ殺しを追うヘン、あつかましくもからかいのメモを残す犯人。夢中で読み進むうちに、事件はちゃんと解決する。序章とうまく結びつくしね。(早川書房 2100円+税)

2007年02月19日

山本やよいさん訳 ピーター・ラヴゼイ「殺人作家同盟」

殺人作家同盟 ピーター・ラヴゼイピーター・ラヴゼイの新作を予備知識なく手にした。表紙の帯を見ると「円熟の本格ミステリ」となっている。あれっ、ダイヤモンド警視のシリーズならこんなことは書いてないね。表紙カバーの内側には「犯人はこの中に?」とあって登場人物の説明がある。タイトルが「殺人作家同盟」とすごい。原題は「THE CIRCLE」なんだけど。
最初のページでチチェスターの出版経営者ブラッカーが放火により殺される。次の章で紹介されるのがボブ・ネイラー、郵政公社の小包部門で運転手をしている彼は密かに押韻詩を書いている。妻に先立たれて14歳の娘スーと暮らしているが、ある日、パソコンの前でスーが検索で出てきた作家サークルに入ったらどうかと言う。とんでもないと言ったものの、2週間後には会合に出かける。
最初の会合に突然警官が2人やってきて会長のモーリスを連行する。ブラッカー殺害容疑である。ブラッカーはモーリスの作品を出版すると言って多額の金を要求していた。前回の会合ではそれぞれの原稿について批評し気分を悪くしている者もいた。
官能的な詩を書くトマシーンとロマンス小説を書くダグマーは、モーリスの容疑を晴らそうとボブを引き込む。またスノーという自分の苗字と同じ人間の伝記を書く女性もボブを頼る。ボブはスノーに頼まれてボート小屋へ行くが、放火から危うく命拾いする。
その後、スノーが同じく放火殺人の犠牲となり、所轄の警察では処理できないとヘンリエッタ・マリン(ヘン)主任警部が応援にくる。調べ出すとサークルの連中はどれも容疑者にしてもおかしくない。中でも魔女裁判のことを書いているナオミが怪しい。素人探偵をやっているボブとトマシーンも怪しい。調べていくうちに殺された人間の過去があばかれていく。
ヘンは葉巻をくゆらしながら、自分の領分に侵入してきたと悪意を持つ男性警官とやり合い、連れてきた部下のステラをこき使い、犯人を追いつめて行く。
いっしょに裁判で証言を行ったヘンとダイヤモンド警視がランチタイムにジントニックを飲むシーンがある。ダイヤモンドはラグビーのサポーターだからバースへ帰ると言い、ヘンはいまからチチェスターにチェックインと言う。こういう遊びが楽しい。ヘンとダイヤモンドは、前作「漂う殺人鬼」で協力した仲である。

ドロシー・L・セイヤーズの「五匹の赤い鰊」を読んだとき、タイトルの意味を考えていたら、作品中に“赤い鰊”が出てきて“偽の手がかり”とルビがふってあった。それで“偽の手がかり”のことを“赤い鰊”というのがわかった。そしてきっと“赤い鰊”というのには謂れがあるのだなと思った。本書の246ページに“赤い鰊”が出てきて、“偽の手がかり”とルビがふってある。いまも使っている言葉なんだ。(早川書房 2200円+税)

About ピーター・ラヴゼイ

ブログ「kumiko 日記」のカテゴリ「ピーター・ラヴゼイ」に投稿されたすべてのエントリーのアーカイブのページです。過去のものから新しいものへ順番に並んでいます。

前のカテゴリはピーター・トレメインです。

次のカテゴリはヘニング・マンケルです。

他にも多くのエントリーがあります。メインページアーカイブページも見てください。