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ケイト・ロス アーカイブ

2007年03月14日

ケイト・ロス「フォークランド館の殺人」

フォークランド館の殺人 ケイト ロスお屋敷が出てくる小説が好きという話がミクシィ内で盛り上がったときに、Mさんが教えてくれた本を図書館で見つけた。ケイト・ロスははじめて読む作家である。Mさんが夭折されて残念と言われたので、調べたら1998年に41歳で亡くなられている。翻訳は講談社文庫で本書の他に「ベルガード館の殺人」「マルヴェッツィ館の殺人」が出ている。
分厚い文庫本で全部読めるかと心配したが、おもしろくてどんどん読み進んだ。19世紀初頭のロンドンを舞台に、華やかなパーティでの殺人事件をロンドン社交界一のダンディともてはやされているジュリアン・ケストレルが解く。

ジュリアン・ケストレルは前作で探偵として活躍したらしく、今回はその実績を知っている弁護士のサー・マルコムに息子を殺した犯人探しを頼まれる。
社交界で華やいでいたアレクサンダーがなぜ自宅で豪華なパーティを開いているときに殺されたのか。残された美しい妻はジュリアンに、「地獄へ行かれたことはおありですか」と問い、「わたしが今いるところはそこですもの」と言う。
調べていくうちにアレクサンダーがとんでもないことをしていたのがわかりだす。サー・マルコムはしっかり真実を受け止めてようとする。
一方、ジュリアンはクラブで、フォークランド館の殺人を1週間で解決することに500ポンドを賭ける。時間がだんだん迫ってくるなか、ロンドン警察のヴァンス刑事や従僕のディッパーの助けを得て事件の核心にせまる。
ジュリアンは社交界でとても目立つ人なのだが、目立つためにどうしたらよいかをよくわきまえている伊達男だ。服装にお金を使うのを第一にしているから、馬車は持たないで友人の馬車を借りて調査に遠乗りしたりする。だから賭け金を払うはめになったらたいへんだ。時間を争うところまでくるとこちらもいっしょけんめいに読んでいた。

2007年03月21日

ケイト・ロス「ベルガード館の殺人」

ベルガード館の殺人 ケイト ロス14日に書いた「フォークランド館の殺人」の前の作品で3冊のシリーズの1作目。この3冊を書いてケイト・ロスは亡くなってしまい、読者は永遠に続きが読めないことになった。
ジュリアン・ケストレルは「フォークランド館の殺人」では調査を依頼されるが、それは本書で事件を解決した評判を聞いてのものだった。

名門貴族の跡継ぎヒュー・フォントクレアは、遊び人の従兄弟ガイに連れていかれた慣れないギャンブルハウスで酔っているところをジュリアンに助けられる。それを見たガイはなぜジュリアンと仲良くできたのかとヒューに訊ねる。ジュリアンはロンドン社交界一のダンディとうたわれているからだ。
ヒューは近々ベルガード館で挙式するので、結婚式の花婿の介添えをジュリアンに頼む。仕立て屋の請求書も溜まっているし、ロンドンを離れるのもいいかとジュリアンは従僕のディッパーと出かける。
ベルガード館はすばらしい屋敷で家族も気品があるが、ヒューの結婚相手は元馬番から成り上がったクラドックの娘モードだという。クラドックは一族の秘密を手に入れ脅してこの結婚を仕組んだのだ。
ヒューと馬で領地を見学して帰り部屋にもどると、ジュリアンのベッドに若く美しい女性の死体があった。屋敷のだれもが知らないという中でディッパーが容疑者にされてしまう。ジュリアンは元々スリであった彼の身元がわかると文句なしに犯人にされてしまうと、真犯人を探すことにする。調べていると領主一家の過去がわかってくる。
医師のマクレガーに洒落もので生きるよりなにかをしたらよいと言われて、ジュリアンの答えは、“わたしには教育がない。父は紳士階級の人だったが、舞台女優と結婚して勘当された。金もなく頼るべき繋がりもない。伊達ぶりで人目をひかないといないのも同然だ”ということでジュリアンという人が少しわかった。

フォントクレア家は遡るとエリザベス一世の時代、パピントンの謀反事件でスコットランドのメアリー女王側についたという。パピントン事件と聞いて、アリソン・アトリー「時の旅人」を思い出した。少女が田舎の家の古い廊下のつきあたりのドアを開けると16世紀の貴婦人たちがいたという「時」を超える物語だ。当主のアンソニー・パピントンは地下に秘密の通路を作り、メアリー女王がパピントンの屋敷へ逃れるようにしたという言い伝えがあるそうだ。それは不成功に終わり、女王は断頭台に、パピントンは絞首台に送られた。

2007年04月20日

ケイト・ロス「マルヴェッツィ館の殺人」

マルヴェッツィ館の殺人〈上〉 ケイト ロスケイト・ロスのジュリアン・ケストレルものの翻訳3作目「マルヴェッツィ館の殺人」(1997)だが、ケイト・ロスは1998年に41歳で亡くなられたので、この後は読むことができない。ほんとにすごい才能が失われてしまった。
前2作を読んでいたら、ジュリアンはロンドン社交界一のダンディであるが、知己となったマクレガー医師との会話で、学問がないから医者や弁護士になれないと言っている。どういう青年時代を過ごしたのだろう。仕立て屋に払うお金はどうなっているんだろうと不思議だった。本書でそんな疑問が解決する。
ミラノの貴族マルヴェッツイ侯爵が心臓発作で亡くなって4年半経って、真実を知っていた老婆が死の間際に告白したのが、侯爵はピストルで撃たれて死んだこと。その夜、侯爵が庇護していたテノール歌手オルフェオが居なくなったことから、犯人とされる。侯爵は密かに歌の訓練をマルヴェッツィ館で受けさせていたので、彼がイギリス人ということしか他の人間にはわからない。
ジュリアンは師を亡くして失意のマクレガー医師を誘い大陸旅行中だったが、新聞で事件のあらましを知ると、警察にまかせても解決はできないと、侯爵家へ事件解決の売り込みの手紙を書き、侯爵夫人から依頼の返事をもらう。
こうしてミラノへ乗り込んだジュリアンは、スカラ座のシーズンになるとやってくる知り合いに紹介してもらうと、そのダンディぶりと音楽に関する造詣の深さで一躍ミラノ社交界の有名人になる。そしてマルヴェッツィ侯爵夫人の取り巻きとして認められる。
マルヴェッツィ侯爵夫人とジュリアンのやり取りを読んでいたら、スタンダールの「パルムの僧院」を思い出した。映画でマリア・カザレスがやっていたサンセヴェリナ公爵夫人とジェラール・フィリップ演じるファブリス。当時、ミラノはオーストリアの支配下にあった。本書の時代も「パルムの僧院」の時代に近いようだ。
後はまた明日。

2007年04月21日

ケイト・ロス「マルヴェッツィ館の殺人」続き

マルヴェッツィ館の殺人〈下〉 ケイト ロス旅よりもイギリスに帰りたいとジュネーブで袂を分かったマクレガー医師が、ジュリアンを一人にしてはいけないと思い返してミラノへやってきた。そして殺人があったマルヴェッツィ館にいっしょに滞在することになる。共に滞在するのはフランス人のド・ラ・マルクや盲目の音楽家でオルフェオの師だったドナッツイがいる。
現在の当主カルロは侯爵の弟にあたり、侯爵の息子のリカルドがいるが、その妻フランチェスカはオペラ歌手ヴァレリアーノと愛し合っている。かつてヴァレリアーノは侯爵の庇護下にあったが、フランチェスカとのことで憎まれるようになった。
素晴らしい館で、ジュリアンは滞在客全員にそれぞれ事件当時どこにいたかを確認していくが、担当捜査指揮官のグリマーニからは邪魔者扱いされる。
この後は波瀾万丈の物語である。オルフェオの秘密、次の殺人事件、侯爵夫人とジュリアンの恋のゆくえ、ヴァレリアーノの出生の秘密、等がどんどん語られていく。また秘密めいたド・ラ・マルクとジュリアンの確執もある。

事件の解決とともに、ジュリアンの過去も語られる。ジュリアンの父は紳士階級の出身だったが、舞台女優と恋をして一族から縁を切られた。母はジュリアンを産んだのと引き換えに死に、父は貧苦の中苦労して息子を育てた。父の死後伯父の家で厄介になるが、家出してパリに出たジュリアンは空腹のために道で倒れる。そのとき助けてくれたのがフランス貴族のドーブル伯爵で、自由思想家の伯爵は音楽や学問や乗馬をジュリアンに教え込む。そしてある日、自分勝手におまえを縛り付けてきたが解放したいと、ジュリアンに相当な暮らしができる金額を用意してくれたのだ。読者はマクレガー医師とともに、ジュリアン・ケストレルの過去を聞くことになる。話の後、マクレガーはいっしょにイギリスへ帰ろうと言う。

次の作品がないのがほんとうに残念だ。ジュリアンは今回も恋に恵まれなかった。わたしの希望は、マクレガーの住む村の地主の娘、まだ10歳過ぎの子どもながら、早熟のフィリパがあと数年してジュリアンに恋心を目覚めさせること。

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