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グレッグ・ルッカ アーカイブ

2005年10月27日

「あなたの友だち、ファイターかしら?」

今日はどこへも行かずになんやかやしていた。ずっと家にいると用事がはかどる。本も2時間くらい集中して読めた。いま読んでいるのは小児科医の山田真さんに勧められた、グレッグ・ルッカの「耽溺者」なのだが、まだ1/4も読んでないんだけど、脳天に響く言葉に出合った。
主人公の女性私立探偵ブリジット・ローガンは友人のライザが陥った苦境を助けようと奮闘する。殺人容疑で逮捕されたライザのために弁護士を紹介してもらうが、その女性弁護士ミランダとの会話で、ミランダが聞く「あなたの友だち、ライザだけど、ファイターかしら?」、ブリジットの答え「トップレベルのね」、ミランダ「・・・現時点で言える唯一のことは、この女性はファイターであらねばならない、ってことだから」、これで後がどんな展開になるか想像できるというものである。
なんだか勇気がわいてきた。自分なりにファイターであろうと思う。

2005年10月30日

グレッグ・ルッカ「耽溺者」

耽溺者(ジャンキー) グレッグ ルッカ最近は教えてもらってはじめての作家の本を読むことが多い。本書も山田さんが教えてくださらなければ出合わなかった。彼が教えてくれた2人目の作家(一人目はヘニング・マンケル)である。
女性私立探偵ブリジット・ローガンが、親友のために捨て身で麻薬密売組織にいどむ物語である。訳者あとがきと北上次郎さんの解説ではじめて知ったのだが、本書はボディーガード、アティカス・コディアックを主人公とするシリーズの番外編で、本編は「守護者」「奪回者」「暗殺者」があって、4冊目にあたる。「守護者」で初登場したブリジットはすごくかっこ良かったらしい。これから3冊追いかけなくっちゃ。
ブリジットは15歳でマリファナを吸いはじめ、16歳では廃墟と化したアパートでヤクを仕入れる金の算段をしていた。3カ月後、警察官の父親に連れ戻され施設に入れられる。18歳のとき整形手術を受けて腕の注射跡を覆い隠したが、父親はアルバイトをしてその費用を捻出したのだ。
そういう過去があって、いま、ブリジットがニューヨークの独り住まいのアパートで、朝5時に目を覚ましたところに電話のベルが鳴る。親友のライザからで「あいつに見つかっちまった」、ブリジットは「そっちに行くよ」と言って出かける。
ライザとは17歳で入所した更生施設で知り合った姉妹以上の仲である。ライザはそのとき15歳で妊娠しており子どもを産むために麻薬を断とうとしていた。
いま、ライザは息子のゲイブを育てながら救急救命士になるため勉強中である。そこへ現れたのが麻薬密売人のラークで昔の貸金を返せと暴力をふるったのだ。「あいつを殺したい」というライザに、ブリジットは自分にまかせておけと言って、実際にこらしめるところまでやる。しかし、その後ラークは本当に殺されて、ライザが容疑者として逮捕される。
アティカスに弁護士を紹介してもらうが、ライザには不利なことばかりである。ライザがなにか隠していると感じたブリジットは真犯人を探そうと決心して麻薬組織に潜入する。まっすぐ片がつくと思って読むと意外や、ジャンキーの魂が呼び覚まされたりして、はらはらさせらる。
ものすごくスタイリッシュな作品で、話者がアティカスに変わるところ以外はブリジットの語りで進むのだが、自然に読める訳(古沢嘉通さん)で気持ちよく読み進められた。ブリジットは男性が描いた理想の女性と言ったらいいかな。女性が読んでもかっこよく気持ちよい存在である。(講談社文庫 952円+税)

2005年10月31日

わたしの新しいヒーローはブリジット・ローガン

昨日書いたグレッグ・ルッカの「耽溺者」のヒーロー、ブリジット・ローガンはほんまにかっこいい。ヴィクについで好きな女性探偵はたくさんいるけど、目下は彼女がいちばんである。
彼女はいままでの女性探偵とかなり違う。初登場のときの描写が「訳者あとがき」にあるので借用させていただく。肩の長さの漆黒の髪が肌の白さを際立たせている。身長185センチで細身、たくましい肩、美しい卵形の顔、ブルーの瞳。両方の耳にいくつものピアス、左の鼻孔にも細手のフープピアスをつけている。ニューヨークに住むアイルランド系アメリカ人で、薄荷菓子ライフセイヴァーズをしょっちゅう噛んでいる。愛車は緑のポルシェ。
28歳の夏、ボディーガード業を営む友人のナタリーの同業者であるアティカス・コディアックと知り合って愛し合うのだが、ナタリーとアティカスが関係を持ってしまい、二人の仲は終わる。その後アティカスの謝罪があってよりがもどりかけるが、「耽溺者」では二人の愛の成就はなかなかたいへんな道のりなのである。
気位が高いが、気が優しい。口が悪いが、義理人情に厚い。
わたしの好きな探偵はヴィク以外はおしゃれでない。たいていジーパンか木綿のパンツでスニーカーである。そして上は、夏はTシャツ冬はセーターにピーコートというのが多い。それもいいけど、長身にピアスいっぱいつけて黒のレザージャケッットもかっこいい。

2005年11月08日

ブリジット・ローガンのお陰で口が悪くなった

ブリジット・ローガンはグレッグ・ルッカのボディガードシリーズに出てくる女性私立探偵である。ボディガードのナタリーとともに男女の差なく仕事する態度が気持ちよい。ナタリーも相当にきついけど、ブリジットの口の悪さはとことんすごい。わたしだってもともとお上品というわけではないが、ブリジットの影響で最近とみに口が悪くなった。さすがよそでは出さないけど、家でしゃべっているときは出るし、胸の内ではすごい悪態をついていたりする。
さっきも「なんであいつのケツをあたしが拭かなあかんねんな」とのたまったところである。でも相手には「自分のケツは自分で拭け」ではなく「こんなことはわたしにさせないで自分でやってね」と言った。そこがブリジットと違って気が弱い(笑)。
読み終わったのは第4作と弟2作で、いま1作目の「守護者」を読んでいるところだけど、全4冊読み終わったらどうなることやら。

2005年11月27日

グレッグ・ルッカ「守護者(キーパー)」

守護者(キーパー) グレッグ ルッカ先に第4作「耽溺者(ジャンキー)」を読んで10月30日に感想を書いている。シリーズの新作を山田さんが教えてくれたからだ。それは「耽溺者(ジャンキー)」がただ新作というだけではなく、ボディーガードのアティカス・コディアックシリーズの番外編で、主人公が女性私立探偵のブリジット・ローガンだったからだと思う。
あまりにも感心してしまったので、さっそくそれまでの3作を買おうと本屋に行ったのになかったりして、読む順番がまちまちになってしまった。全作揃えたところでまた読み直し、疲れていた体力も回復してきたので1作目から感想を書いていくことにしよう。
ページを開くと恋人のアリソンと産婦人科病院に行く主人公アティカスがいる。しかも病院の前で中絶反対の男にさえぎられて、必死で警備員に守られて中に入って行く。中絶の手続きをして「これは正しいことなの」とアリソンは言う。病院を出るときは外はもっとひどいことになっているだろう。待合室で声に出して毒づくコディアックに、一人の女性が声をかける。医師フェリスのダウン症の娘ケイティだった。手術を終えたフェリスはコディアックに、プロのボディーガードというのはほんとうかと聞く。そして脅迫状を見せ警護を頼む。
フェリスとケイティを守るために、仲間のルービンとナタリー、そしてデイルの手を借りることにして4人体制で1日24時間、週7日のローテーションを組む。完璧な警護ができるだろう。脅迫が続き、やがて殺人が起こる。ニューヨーク警察、FBIがからみ、複雑なストーリーが展開する。
私立探偵ブリジット・ローガンが調査依頼を受けて登場し協力することになる。その場面が175ページにあるので、気になるかたはお読みください。かっこいい。
ブリジットはアティカスに聞く。「あんたは妊娠中絶合法化支持派なのかい?」「おれはむしろ、女性の選択する権利を支持している」「連中のひとりか」とブリジット。・・・「・・・すべては女にたいする支配の問題なんだ。男どもが女に選択させる権利をまず自分たちが持っていると思いこんでいる事実が問題なんだ。それがずっとつづいているくそいまましい問題なんだ」。
最初のシーンで恋人と妊娠中絶のために病院へ行く主人公なんてはじめてだ。恋人アリソンの中絶後の心の揺れがあり、そんな中でプロのボディーガードとしての任務を全うしようとするアティカスの苦しさがあり、そこに惹かれるブリジットのたくましい優しさがある。(講談社文庫 876円+税)

2005年11月29日

グレッグ・ルッカ「奪回者」

奪回者 グレッグ ルッカボディーガード、アティカス・コディアックのシリーズ第2作。「守護者(キーパー)」から4ヶ月後、前作のショックから抜けきれないアティカスは、新しいアパートに引っ越しSMクラブの用心棒をしている。ニューヨークの初冬のある晩、かつての恋人ダイアナの娘エリカがこのクラブにいるのを見つけて、未成年のエリカをアパートいに連れて帰る。エリカは父親に虐待されて家出をしたと言う。翌朝目が覚めるとエリカはいなくなっていた。アティカスはエリカの父親ワイアット大佐の家を探して訪ねていく。陸軍時代アティカスは大佐の身辺警護の任務についていた。そのとき浮気な大佐にあいそをつかしていた夫人のダイアナと関係を持ってしまう。それが大佐にばれて任務を解かれたという過去がある間柄である。久しぶりに会った大佐はエイズに冒されていた。
その後、大佐がやってきてエイズの特別治療を受ける間エリカを預かってくれと頼む。エリカの身をSAS(英国陸軍特殊空挺部隊)から守ってほしいというのだ。アティカスは詳しい事情がわからずいらつきながらも、エリカの警護を引き受けて仲間を集める。私立探偵ブリジット・ローガンも加わる。さまざまな事件が起こり、大佐がエイズ治療を受けていでいないことがわかり、SASがエリカに関心を持つ理由もわかる。
その途中で、SAS隊員のムーアとブリジットがやりあうところがある。ブリジットがアイルランド人であることから、ムーアはIRAの爆弾事件について「・・・哀れなくそったれIRA・・・」と言うと、ブリジットは「SASがロクアルでやったこととIRAの仕業だとあんたが主張していることの違いを説明してみな」と反論する。続いて「あんたがテロリズムと呼んでいるものより暗殺部隊のほうがどれほどましか説明してみな」と続ける。ムーアは「暗殺部隊など存在せん」と言うと、ブリジットは微笑む。死の天使の顔で。怒ってムーアが出て行くと「あたしが勝ったね」と笑うところがいい。そしてそのあとは一緒に働くのだが。
このシリーズが好きな理由を一言で言えば、〈心意気に感じる〉かな。(講談社文庫 990円+税)

2005年12月03日

グレッグ・ルッカ「暗殺者(キラー)」

暗殺者(キラー) グレッグ ルッカボディーガード、アティカス・コディアックのシリーズ3冊目。4冊目(番外編)の「耽溺者(ジャンキー)」を読んで感想を10月30日に書いた。31日にはその主人公である魅力あふれる私立探偵ブリジット・ローガンについて書いた。
その後11月27日に「守護者(キーパー)」、29日に「奪回者」を書いて、今日の「暗殺者(キラー)」で翻訳が出ているものは最後である。10月の終わりから11月のすべてをアティカスとブリジットに入れあげていたんだな。
今回の出だしはナタリーの父親で大きな警備保障会社を経営しているトレントに仕事を頼まれる。断ったのだが守護される当人からのたっての依頼で引き受ける。ナタリーは父に反抗してアティカスと行動を共にするが、その仕事はトレントに仕組まれた危険なものだった。危ないところをナタリーが撃ち殺した男を、トレントは“ジョン・ドウ”だというが、アティカスは納得できない。トレントが警護しているのはタバコ業界を告発しようとしているピューだった。20年間タバコ製造会社DTSの研究開発部長をしていて、会議で幹部が“自分たちの製品が生命を奪っていることは知っているが、今後も公的にはこの事実を否定し続ける”という言葉を聞いた人である。彼の口を閉ざすためにDTSが雇った“ジョン・ドウ”は世界で名だたる殺し屋で、自分の囮を差し出して殺させ、ピューを消すための第一歩としたのだった。
ピューの弁護士とピューの要望でトレントの会社とアティカスは共同でピューの警護をすることになる。そして厳重な警護のうちに証言はされたのだが“ジョン・ドウ”のほうが一歩先を行っていた。アティカスは仲間のデイルたちと必死で闘う。
本書にはブリジットは登場しないのだけれど、エリカ(奪回者に出てきた美少女で、父親が死んでからアティカスは後見人となり同居している)との会話にはしょっちゅう出てくる。ブリジットを愛しながらもナタリーと関係を結んでしまったアティカスだが、ようやく本書の最後で「やあ、きみか。おれだよ」と電話するのである。これで全部読んでしまった。もう一度読もうかな。(講談社文庫 971円+税)

2006年02月06日

グレッグ・ルッカ「逸脱者」

逸脱者〈上〉 グレッグ ルッカ逸脱者〈下〉 グレッグ ルッカおもしろかった。読みかけたら他のことが手につかない。ご飯を食べた後テーブルの片付けもしないで読みふけったり、2駅しか乗らない地下鉄に持って行って乗り越ししたりした。
アティカスは「暗殺者」で意気投合したナタリー、マツイ、コリーと4人でKTMH社というボディーガードの会社を発足させるが、ハリウッド女優の警護に当たったとき、荷物を持てと命令されて仕事を降りてしまう。仕事が途切れて困っているとき、イギリスのムーアから電話があり、こどもの人権を守る仕事をしている侯爵令嬢ハンターの、アメリカでのボディーガードを頼まれる。ハンターはストーカーに狙われていてブリジット・ローガンが捜査にあたる。ストーカーはハンターが出演する場所の楽屋にまで侵入しており、危うく防いでほっとする。ところがその後ビルで爆発があり、ハンターは誘拐される。必死で探すアティカスにヒントが与えられ、彼はハンターと引き換えに誘拐される。さぁ、その後は書いたらあかんやろなぁ。もうめちゃくちゃ激しい展開なのだ。こんなこと主人公にやらしてええんかって思う。アティカスはボディーガードの職人というか、困難であるほど引き受けたくなる性格だ。だから会社をつくったまではいいが、ほったらかして、生活を安定させようと思うメンバーから批判されることになる。
一方「暗殺者」のときしつこく取材にきて、協力もした女性記者クリス・ハヴァルは、ボディーガードと暗殺者の攻防を本にする。本の出版は大成功で彼女は次作のために暗殺者にインタビューしたいと言う。アティカスがやめておくように言うと、「わかっていないわね、アティカス」「ゲームの名前は“書くか死ぬか”なのよ」と答えて出て行く。
私立探偵ブリジット、記者クリス、暗殺者ドラマ、ボディーガードのナタリー、運動家ハンター、みんなものすごい魅力と生命力あふれる女性たちである。励まされるというより叱咤激励されている。(講談社文庫 上下とも695円+税)

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