2005年10月に第4作(番外編)「耽溺者」を読み、それから第1作「守護者」、第2作「奪回者」、第3作「暗殺者」、第5作「逸脱者」(2006年2月)と読んできたアティカス・コディアックのシリーズ6冊目である。
プロ中のプロのボディガードとしてはじまったシリーズだが、「逸脱者」で〈暗殺者〉アリーナに守護を頼まれてから、正道(?)から逸脱してしまって、もはやボディガードとはいえなくなってしまった。アティカスの通ったあとは死体が累々と横たわる。
女性記者、女性探偵、女性ボディガード、闘う女性を描いて天下一品だと思うのだが、彼女らの最後がこれまた壮絶ではあるが、人生半ばにして散っていくのは現代アメリカの女性の姿が反映されているのかしら。ロシア人のアリーナ・シズコワの複雑さはその国の複雑さを反映しているのかしら。
本書は「逸脱者」から月日が経ってからの出版のせいか、前作の内容が詳しくさらえてある。それと当ブログの「グレッグ・ルッカ アーカイブ」もずいぶん役に立った。書いておくもんだ。
アリーナはアティカスと暮らすようになってから、自分の思うように体を操ることを教えた。食事療法とあらゆる訓練の目白押し、水泳と格闘演習とバレエとヨガ。基本レッスンのひとつが呼吸法だった。死ぬかと思うような訓練を経たアティカスがアリーナとともに立ち向かうのは、〈暗殺者〉から抜け出そうとするアリーナを追う者たち。
殺す相手イーリヤの部屋へ苦労して入り込んだのに、眠る女性と赤ん坊を見てそっと帰ってくるアティカス。アリーナは協力者のダンに言う。【「空っぽの物ならその三人とも殺して、それを必要かつ賢明な行為と呼んだでしょうね。(中略)わたしはもうそんな物ではなくなったの」「標的はイーリヤよ」アリーナは締めくくった。「女ではない。子どもでもない」】。また苦労を重ねて仕事をやり遂げる。
モーテルからの逃亡シーンはまるで映画を見ているよう。そういえば、今回は全体に映画を見ているような描写が多かったような気がする。
最後の仕事がすごい。ここまでやるかと何度も思ったシリーズだが今回が最高のシチュエーションだ。やり遂げてアリーナの手をとるところがいい。
アティカスはコプレチに住んでいるとき、ネットカフェで検索をかけてみて、自分にとっていまも意味のある人の名前がウェブ上にあらわれるか確かめる。大切に思っていた少女が書いた小説が六桁の契約金で売れたとある。ああ、「奪回者」に出てきたエリカだよね。元恋人がコンピュータ・グルと交際しているって、「守護者」のアリソンだよね、と心が和らいだ。
分厚いが字が大きくて読みやすかった。アティカスとアリーナがどうなるかと気になってずんずん読んでいける。次作が待ち遠しい。(飯干京子訳 講談社文庫 895円)