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ケン・ブルーウン アーカイブ

2005年07月22日

ケン・ブルーウン「酔いどれに悪人なし」

最近はヤキがまわったらしく、新しいミステリーを教えてもらって読むことが多い。今回も関東在住の姪から送ってもらったもの。“負うた子に教えられ”というけど、負うたこともない子に教えられている。
アイルランドの私立探偵、しかも飲んだくれと聞いて、さきにイメージができてしまったけど、イメージをはるかに超えた作品だった。私立探偵小説というより暗黒小説という感じであった。
主人公ジャック・テイラーが住む場所はアイルランド西部の中心都市ゴールウェイ。アイルランド国家警察に勤務していたが、魔法瓶のコーヒーにブランデーをしこたま混ぜたのを飲んで、スピード違反の車を止め、乗っていた議員を見逃すことをせずに逆になぐってしまい警察をクビになった。それ以来私立探偵をやっているが、事務所を持つようなことはせずパブで依頼を受けている。ゴールウェイでいちばん古く昔と変わらぬバー「グローガンの店」は本物の酒飲みのパブである。しかもジャックを締め出さない唯一のパブでもある。店主のショーンとは口喧嘩をしながらも友情で結ばれている。この店に美しい女性アンがジャックを訪ねてきて、娘のサラが自殺したのが信じられないので調べてほしいと言う。そして帰り際に一言、「なんであなたはアル中なの?」これにかっとなって、なんでアル中に助けを求めるのかと聞き返すと「あなたにはこれしかできることがないから、優秀だって言われたのよ」だって。調べはじめると厚く暗い壁にぶつかり、体を傷めながら事件の核心にせまることになる。
ジャックは酒に溺れるが、本も溺れるほど読んでいる。章のはじめにある引用文はオスカー・ワイルド、W・H・オーデン、エド・マクベイン、フランシス・ベーコン、ウォルター・モズリイなど。友人のホームレスが入院しているのを見舞いに行って、詩を預かって帰るが、その友が死ぬと埋葬まで一切やってから詩を読む。
すごくセンチメンタルでシニカル、好きなタイプだ。好きだけど深くつきあったら迷惑をかけられそう。だからといって放っておけない。困るなぁ。(ハヤカワ文庫 860円+税)

2005年07月27日

「酔いどれに悪人なし」とジョイ・ディヴィジョン

ケン・ブルーウンの「酔いどれに悪人なし」は、アイルランドの私立探偵ジャック・テイラーを主人公にしたシリーズ第1作である。わたしはものすごく気に入ってしまったので、たくさん売れてシリーズ全部を翻訳出版されることを願っている。第2作の翻訳が出たというのでまず一安心。
ものすごく暴力的で現代的な作品で、ハードボイルド私立探偵小説もここまできたかと思わせる。まさに新しい突破口を開いたんじゃないかしら。
さて、22日にこの本の感想を書いたのだけれど、まだしゃべりたいことがあった。
本の最初のほうでジャックが床屋に入るところがある。【床屋はおれを“旦那”とは呼ばなかったが、その言葉が周囲に漂っていて、いつでも言える状態だった。】というような床屋でかかっている音楽が、ジョイ・ディヴィジョンの1979年のアルバム「アンノウン・プレジャーズ」。これをわりと好きだと思い、「なかなかいい」と言うと、床屋はボーカルのイアン・カーティスの自殺について話し、髪を切る手をとめてうなだれた。ジャックはそのあと仕事にとりかかる前にレコード店に寄って、知り合いの店員にジョイ・ディヴィジョンのレコードを買いたいと言って「あんたが…?」と笑われる。だが買う。
それだけのことだけど、実はわたしはジョイ・ディヴィジョンの「アンノウン・プレジャーズ」が出たときにすぐに買って何度も聴いて大好きだった。レコードを処分したあと、CDを買っていまも持っている。いま久しぶりに聴いたけど、やっぱり好き。イアン・カーティスの舞台での姿が見られるビデオも大切にしまってあるのでそのうち見よう。ジャックは優雅さと残忍さが奇妙に混じり合った音と表現している。

2005年08月05日

ケン・ブルーウン「酔いどれ故郷にかえる」

前作「酔いどれに悪人なし」の最後で、アイルランドのゴールウェイを出てロンドンに行ってしまったジャック・テイラーが革のコートとコカイン常習癖を持って故郷に戻ってきた。
戻ってきて最初に行ったのはジェフの経営するパブだ。ジェフはヘヴィメタル・バンドのメンバーで歌詞を書いていた。そして、たまにジャックの手伝いをしていたパンク娘のキャシーといっしょになっている。カウンターの向こうで「おかえり」とジェフが言い、キャシーが泊まる部屋を用意したと言う。シャワーを浴びてコカインをやり、服を着替えてマルボロに火をつける。【おれとベティ・デイヴィスは、相も変わらず吸っている。】
バーへ戻るとがっしりした男が入ってきて「ちょっと話せるか」と言い、スイーパーと名乗る。もしくはティンカー(アイルランドの漂泊民のこと、いわゆるジプシー)だと言い、この半年間に4人のティンカーが殺されたと言う。そして警察はティンカー同士の殺しあいとしてなにもしちゃくれん、あんたなら突き止められると言い、家を提供する。
その家に移ったとたん、警察がジャックを連行する。元同僚のクランシー警視が呼び出したのだ。そしてあの連中とかかわるなと警告する。しかし、またティンカーが殺された。直後にジャックは襲われて殴られ鼻の骨を折られ歯を折られる。
こんな具合に物語ははじまる。もうジャック・テイラーはよれよれである。ロンドンでジャックは行き当たりばったりの読書を系統だてたくてロンドン大学の夜間講座に行っていた。そこで知り合ったキキがゴールウェイにやってくる。しかし、せっかく来たもののあまりのジャックの様子にロンドンにもどってしまう。ベッドの上にはお土産のバリーのブーツが置いてあった。
このあと若い娘に惚れ込まれるのだが、よれよれなのにすごくモテるのだ。
いっぱいしゃべりたいことがあるんだけど、暑いし眠いし、また今度。

2005年08月08日

アイルランドの歌

80年代のいつごろからかニューウェーブと言われていた音楽を聴かなくなった。聴いていた期間は短かったけれど強烈だったので、それから音楽を聴いていなかったような気がしていたが、実はそんなことはなかったのだ。クラシック(主にマリア・カラスのオペラ)とアイルランドの歌があった。そうそう、U2はたくさん聴いたっけ。
ケン・ブルーウンのジャック・テイラーもの「酔いどれに悪人なし」でメアリ・ブラックの名前を見たと思ったら、「酔いどれ故郷にかえる」ではメリー・コクランが語った言葉の引用があった。【「ブルースを歌うのには意味があります。鬱(ブルース)を感じていると死にたくなるんです」】。シンニード・オコーナーの名前も見た。
あー、そうだったとCDを探した。長いこと聴いていない。妖精っぽいメアリ・ブラック「ノ−・フロンティア」、成熟した大人の女性という感じのメリー・コクラン「うつろな予感」はものすごくよく聴いていた。
残念ながらジャックが愛聴してきたというヴァン・モリソンは全然知らない。アルバム「アストラル・ウィークス」の特にタイトル曲がいいんだって。

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