山本やよいさん訳 デヴィッド・ヒューソン「死者の季節」
イギリス人が書いた作品だがローマ市警の刑事ニック・コスタが主人公の警察小説である。本書はシリーズ第1作で、次いで第2作も訳されそうで楽しみだ。「訳者あとがき」には著者のデヴィッド・ヒューソンはイングランドのヨークシャー生まれ、現在はイタリアとイギリスを頻繁に往復して、ローマの語学学校でイタリア語を学びながら、シリーズ6作目を執筆しているとある。
読み出すと「ダ・ヴィンチ・コード」を思い起こさせるところがあるが、影響を受けたわけでない(出版時期からいってあり得ない)そうだ。こういう物語が生まれる時代という下地があるのだろうと思う。
ヴァチカンの図書館で美貌の大学講師で初期キリスト教の研究者サラ・ファルネーゼが資料を読んでいるところへ、一人の男が乱入してくる。彼はサラの目の前に持っていた人間の生皮を広げ、聖バルトロメオと言う。彼は衛兵に射殺される。
事件を知ったローマ市警の刑事ニックはヴァチカンが管轄外なのにもかかわらず、男の残した言葉を追ってサン・バルトロメオ教会へ行く。そこには生皮を剥がれた無惨な死体があった。続いて起きる怪奇な連続殺人事件を追うニックはサラがなにか隠しているのを感じる。探るうちに上部の人間たちが見えてくる。
ニックの父親はずっと共産党の活動家だったが、いまは死期がせまった病人で、彼を愛する女性が世話をして農場で暮らしている。
カトリックと共産主義というイタリアの思想がわかったら、この作品はもっとおもしろく読めると思うが、どっちの知識も生半可なので残念だ。殉教の聖者と言われてもよう知らんもんなぁ。グラムシの名前くらいは知ってるけど、イタリア共産党のこともよう知らんし。
そこに生きるニック・コスタは27歳で小柄、ベジタリアンで走るのが好きという、いわゆる警察小説の枠にはまらない個性的な警察官である。同僚や上司もよく書けていて、ちょっと不自然なところもあると思ったがおもしろく読めた。たくさん売れてシリーズ全部が出版されてほしい。(ランダムハウス講談社 上780円+税・下800円+税)



