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デヴィッド・ヒューソン アーカイブ

2006年10月09日

山本やよいさん訳 デヴィッド・ヒューソン「死者の季節」

死者の季節 上巻 デヴィッド・ヒューソンイギリス人が書いた作品だがローマ市警の刑事ニック・コスタが主人公の警察小説である。本書はシリーズ第1作で、次いで第2作も訳されそうで楽しみだ。「訳者あとがき」には著者のデヴィッド・ヒューソンはイングランドのヨークシャー生まれ、現在はイタリアとイギリスを頻繁に往復して、ローマの語学学校でイタリア語を学びながら、シリーズ6作目を執筆しているとある。
読み出すと「ダ・ヴィンチ・コード」を思い起こさせるところがあるが、影響を受けたわけでない(出版時期からいってあり得ない)そうだ。こういう物語が生まれる時代という下地があるのだろうと思う。
ヴァチカンの図書館で美貌の大学講師で初期キリスト教の研究者サラ・ファルネーゼが資料を読んでいるところへ、一人の男が乱入してくる。彼はサラの目の前に持っていた人間の生皮を広げ、聖バルトロメオと言う。彼は衛兵に射殺される。
事件を知ったローマ市警の刑事ニックはヴァチカンが管轄外なのにもかかわらず、男の残した言葉を追ってサン・バルトロメオ教会へ行く。そこには生皮を剥がれた無惨な死体があった。続いて起きる怪奇な連続殺人事件を追うニックはサラがなにか隠しているのを感じる。探るうちに上部の人間たちが見えてくる。
ニックの父親はずっと共産党の活動家だったが、いまは死期がせまった病人で、彼を愛する女性が世話をして農場で暮らしている。
カトリックと共産主義というイタリアの思想がわかったら、この作品はもっとおもしろく読めると思うが、どっちの知識も生半可なので残念だ。殉教の聖者と言われてもよう知らんもんなぁ。グラムシの名前くらいは知ってるけど、イタリア共産党のこともよう知らんし。
そこに生きるニック・コスタは27歳で小柄、ベジタリアンで走るのが好きという、いわゆる警察小説の枠にはまらない個性的な警察官である。同僚や上司もよく書けていて、ちょっと不自然なところもあると思ったがおもしろく読めた。たくさん売れてシリーズ全部が出版されてほしい。(ランダムハウス講談社 上780円+税・下800円+税)

2006年10月10日

デヴィッド・ヒューソン「死者の季節」に出てくる三人の女性

死者の季節 上巻 (ランダムハウス講談社文庫) デヴィッド・ヒューソン死者の季節 下巻 (ランダムハウス講談社文庫) デヴィッド・ヒューソンわたしの欧米の新作ミステリーを読む楽しみのひとつは、どんな女性が出てくるかということにある。女性探偵や女性警察官はもちろん、男性警官の配偶者や部下や上司や協力者などの登場人物にも興味を持って読む。最近は主人公の男性警官の上司が女性であることが多い。生真面目で出世一筋のそういう女性が出てくると、いるいるとうなづきながら、そんな人の下になったらかなわんなと思いながら読む。
そんなことで、昨日書いた「死者の季節」に出てくる三人の女性について考えた。サラ・ファルネーゼは最初から登場する重要な鍵になる女性である。幼いときから修道院で育てられ、両親はたまに会いにきたがよそよそしく、しかもその両親も死んだと告げられる。遺産があるので立派なアパートで悠々と暮らしていて、たくさんの男性と関係を持っているが、それぞれが一時の関係である。ローマ市警の刑事ニックはそんな彼女に惹かれる。
病理学者のテレサ・ルポはクレイジー・テレサの異名を持つ闊達な女性で、死者の解剖を平静にやってのける。彼女は警察の男たちとつぎつぎに関係を持ってきた。どの関係のときも男の側がやつれはて、うつろな目になるのがつねだった。いまニックの相棒ルカ・ロッシが彼女に恋しているが、哀れっぽい顔とぶざまな体の彼とはおかしなカップルだとニックは眺めている。
ニックの父のマルコは共産党員でかつては牡牛のように勇猛果敢で知られた人だったが、いまは病に倒れて車椅子生活をしている。母は10年前に亡くなっている。
ビーは55歳で生涯独身を通してきた凛とした美しい女性である。彼女がこの家に現れたときは若くてキラキラ輝いていた。マルコと政治信条が彼女の人生だったが、いまマルコは死にかけていて、もう一方はすでに死んでしまっている。彼女はマルコの世話を当然のようにしている。ニックは彼女から助けられいろいろなことを学ぶ。

2007年04月24日

山本やよいさん訳 デヴィッド・ヒューソン「生贄たちの狂宴」上下

生贄たちの狂宴 上 デヴィッド・ヒューソンデヴィッド・ヒューソンはイギリスの作家だが、作品はローマの警察官たちの活躍とローマの街がとても魅力的に描かれていて楽しい。前作「死者の季節」が良かったので期待して読み始めたが・・・うん、今回も良かった。一度読んで、また気に入ったところを読んて楽しんだ。
ニック・コスタ刑事は前回の事件での心の傷も癒えて警察に復帰する。相棒を失った彼に、今回新しくコンビを組まされることになったのは、不祥事を起こして風俗課から左遷されてきたジャンニ・ペローニ刑事である。子どものときに顔を警官につぶされたといういかつい顔をして、態度はでかいし口が悪い。ベジタリアンのニックの横でローストポークがはみ出したパニーニを食べてニックに「食べるか」と聞いていやがられる。上司のファルコーネ警部は以前ラケーレという女性と恋をして離婚したが、結局ラケーレとも別れてしまった。いま彼女はDIA(マフィア対策庁)に勤務して敏腕をふるっている。

はじまりは、アメリカから観光に来たマイクロソフト社社員の中年夫婦が、ローマの遺跡でなにか掘り出したいと、躍起になって掘ったあげくに出てきたのが、少女の死体だったこと。もしかして2000年も前のかもしれないミイラ化した死体である。病理学者のテレサが調べてミイラと判断しかけたが、口の中から出てきたのは20年そこそこ前の硬貨だった。そして首に切り傷があり、明らかに殺人事件の被害者であることがわかる。
死体は16年前に行方不明になった少女エリナーとわかる。彼女はアメリカマフィアの大物でローマ在住のウォリスの義理の娘だった。彼女の母親は娘が行方不明になった後アメリカで自殺している。
その騒ぎの中、観光旅行中の母親から16歳の娘がオートバイに乗った男に連れ去られたと届けがあった。
今日は眠いのでここまで。

2007年04月26日

山本やよいさん訳 デヴィッド・ヒューソン「生贄たちの狂宴」上下 続き

生贄たちの狂宴 下 デヴィッド・ヒューソン前作「死者の季節」はヴァチカンでの無惨な出来事からはじまった。今回はローマの事件だが、殺された少女の腕には奇妙なタトーが彫られており、口には硬貨がはさまれているなど、カルト宗教的な事件である。
テレサは「秘儀の館」という本を読んで、やむにやまれずローマ大学教授の著者カークに会いに行く。席を外したカークが殺され、それを知って逃げ出したテレサをオートバイが追う。逃げまくった末にオートバイのほうが地下鉄工事中の穴に落ちて助かるが、オートバイに乗っていたのは女性警官だった。そして腕には少女と同じタトーがあった。
というように、かなりおどろおどろしたところがあり、わたしはあまりそういうのは好きでないのだが、そういうところを上回って楽しいのが警察官それぞれの個性だ。純情なニック・コスタがこの事件を通過することによって大人になっていく。事件が終わってから、署の廊下を歩いていると、自分が周囲の人間をふりむかせるタイプの男になっているのを知る。ペローニはこれからも相棒でいることになった。「パートナーはどうにか我慢できるやつだ」そうだが、そのあたりの会話がうまくて楽しい。上司のレオ・ファルコーネもまた人間くさくていい味をだしている。クレージーテレサも前作にもまして大活躍。彼女の部下カブアの頼りなさもおかしい。
コスタは行方不明になったと届け出があった少女の母親を助けようと奮闘する。ここにもまた謎が浮かび上がる。ローマのマフィアたちの生態もくわしく描かれている。ぎっしりと読みどころが詰まっている。

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