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エド・マクベイン アーカイブ

2005年07月16日

エド・マクベイン「ラスト・ダンス」

エド・マクベインが7月6日にお亡くなりになったことをミクシィの書き込みで知った。
エド・マクベインという名前を知ったのはずいぶん昔のことだ。87分署シリーズ第1作「警官嫌い」(1956)を読んだのは、父親が読め読めとうるさく言ったからで、それから何作かは読んだはずなのだが覚えていない。黒沢明監督の「天国と地獄」を封切りで見たのは、仲代達矢が大好きだったからだが、原作がマクベインの「キングの身代金」だったこともある。
その後、数年前に「晩課」を読むまで全然読んでいなかった。その後も読めばおもしろいのはわかっていたにもかかわらず、あんまり読む気が起きず、よい読者ではなかった。ただキャレラ夫妻やマイヤー・マイヤーを懐かしむ気持ちはいつもあった。
シリーズ50作目という本書を読むと、キャレラが40歳の大台に乗ったことを感慨深く思っているところがあり、不思議な気持ちになった。だって第1作から50年近い年月が経っているのだ。こちらは白髪になっているのに、キャレラはまだ40歳なんだもん。
ベッドに横たわった老人の死体は、ドアのフックで首を吊ったのを、娘がベッドに運び上げたのだった。しかも調べると自殺ではなく、クスリを飲まされて殺されていた。というところからはじまり、警官たちの調査が地道に続く。
わたしが気に入ったのは、白人の刑事バート・クリングと黒人女性で市警の医師シャーリン・クックの間柄だ。【このあわただしい憎しみに満ちた都市で二人は出会い、恋に落ちた。この話を、フツ族やツチ族の人たちに、そしてアルバニア人やセルビア人に、そしてアラブ人やユダヤ人に話してやりたい。】エド・マクベインの気持ちが伝わってくる。(ハヤカワポケットミステリ 1100円+税)

2005年08月27日

「ミステリマガジン」10月号はエド・マクベイン追悼特集

久しぶりに「ミステリマガジン」を買った。長い間ずっと買っていたのに、ここ数年たまにしか買わないようになっている。広告で特集を見てあわてて買いに行くことが多い。雑誌よりもネットの書き込みを頼りにしてしまう。ミステリーの新作にあまり興味を持たなくなったこともある。いわゆるミステリー評論家のブックレビューを読む気がしない。
だが、今月はそうそうに買った。エド・マクベイン追悼特集号だからだ。亡くなられたと聞いたときに書いたように(7月16日 エド・マクベイン「ラスト・ダンス」)、わたしは読み出したのは早いが熱心な読者ではなかった。最近読み出してファンになった「酔いどれ」シリーズのケン・ブルーウンが作品の中でよく引用しているので、ほーっと思っていたら、本書でも熱い追悼文を書いている。改めてエド・マクベインをまた読もうと思った。
短編小説が3作あって「愛か金か」というのに、キャレラとマイヤーが出てくる。一つ読むとまだまだ他のが読みたくなるんだよね。
リーバス警部ものではないけれど、イアン・ランキンの短編「ソフト・スポット」が入っている。

2006年04月17日

クレイグ・ライス「セントラル・パーク事件」を読み出したら

セントラル・パーク事件 クレイグ ライス先日新刊だとばかり思って買ったクレイグ・ライス「セントラル・パーク事件」だが、新刊のはずはないのはわかっていた。なぜ買ってしまったのかというと、まだ翻訳が出てないのがあったのかな、なんて漠然と思ったのね。おしゃれな表紙だから欲しかったしね。
で、今日読みかけて、なーんだ、これ知ってるじゃん。訳者あとがきを読んで納得し、押し入れからミステリ箱を引っ張り出したら、ハヤカワポケットミステリでビンゴとハンサムのシリーズ3作とも持っておりました。本書と「七面鳥殺人事件」「エイプリル・ロビン殺人事件」(クレイグ・ライスが亡くなったあと、エド・マクベインが完成させた)。
クレイグ・ライスといえば、ジェークとヘレンのジャスタス夫妻+弁護士マローンのシリーズがオシャレで楽しくて大好きである。もちろん翻訳されたものは全部持っている。それと「スイート・ホーム殺人事件」は子どもの頃から好き。なのにビンゴとハンサムのシリーズはころっと忘れてた。3冊連続で読まなくっちゃとほくほくしている。
ニューヨークはセントラル・パークで、とっぽい赤毛で小柄なビンゴ、おっとりした背が高く美男子なカメラマンのハンサムが、通行人の写真を撮ってはカードを渡し、あとで写真を送る商売をしている。(日本でも昔は街頭写真屋さんてあったよね。わたしが子どもの頃、道頓堀で撮られた街頭写真が手許に残っている。)そこで撮った写真の背景に、行方不明の男が写っているのを発見して、探し出して連れて帰る。それからはクレイグ・ライスのことだから、話はどんどん転がって行く。(ハヤカワ文庫 820円+税)

2009年02月03日

エド・マクベイン「憎悪」(エド・マクベイン編「十の罪業 Red」より)

十の罪業 REDエド・マクベイン編集の中編小説10作(Redに5作、Blackに5作)が掲載されている分厚い文庫本2冊は、エド・マクベインの呼びかけに応じて人気作家たちが書いた力作が揃っている。本書にはマクベインの序文があり、それぞれの作品の前にはマクベインによる解説がついている。
マクベインとドナルド・E・ウェストレイクを訳された木村二郎さんから本書をいただいた。それぞれ力作なので1作を読むごとに感想を書いていきます。

最初の作品はエド・マクベイン「憎悪」で、なんとこの作品が「87分署シリーズ」の最後となってしまった。
わたしは「警官嫌い」(1956)から読んでいた読者だが、60年代後半ごろにミステリから足を洗ったので、途中が抜けている。しかも復活してからはハードボイルド私立探偵小説ばかり読むようになったので、警官ものはなかなか読まなかった。読んだのは「凍った街」(1983)、晩課(1990)、「ラスト・ダンス」(2000)なんだけど、あまり覚えてなくて、「キングの身代金」(1959)「クレアが死んでいる」(1961)「たとえば、愛」(1952)、「10プラス1」(1963)のほうがよく覚えている。
なかでも「10プラス1」がいちばん好きだ。映画の「刑事キャレラ 10+1の追撃」のせいである。キャレラ刑事はジャン・ルイ・トランティニャンしかないといまも思っている。最後にバッジを捨てるところをよく覚えている。腕を伸ばして銃を撃つ姿も良かった。

途中抜けているにしても、最初と最後の作品を同時代に読んだということを自分でもすごいことだと思う。そして本書もスティーブ・キャレラとマイヤー・マイヤー刑事がいっしょに事件に当っているのに感動した。キャレラはほっそりとした長身と書かれているのが、よけいに若き日のトランティニャンを思い出させる。

事件は9.11以後のアメリカの都市で起こる。殺されたタクシー運転手はイスラム教徒である。タクシーのフロントガラスにスプレー・ペイントで青いダビテの星のようなものが描かれている。ユダヤ人のマイヤーにはいやな事件だが、彼は冷静に捜査にあたる。続けて同じ星が描かれたタクシー運転手殺人があり4人のイスラム教徒の運転手が殺される。地味な聞き込みを続け、会話の矛盾点を発見して追跡する二人の刑事。

最後のシーンがすっごくいい。
【刑事たちは——十二歳のとき以来教会へ行ったことのないカトリック教徒と、毎年のクリスマスごとにツリーを飾るユダヤ教徒は——警察署の裏口から出てきてその日の朝早くそれぞれの車をとめたところまで歩いた。明るく晴れた午後だった。】
(木村二郎訳 創元推理文庫 1600円+税)

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