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アン・ペリー アーカイブ

2006年07月15日

山本やよいさん訳 アン・ベリー編著「ホロスコープは死を招く」

ホロスコープは死を招く アン ペリー一昨日13日に本書の中の1作、ピーター・トレメインの「自分の殺害を予言した占星術師」のことを書いた。この1作が気に入ったからだが、他の作品もなかなかおもしろかった。編者であり1作品を書いているアン・ベリーは映画「乙女の祈り」の親友のモデルだったと名乗り出たことで有名な人だそうだ。彼女の作品「青い蠍」は才長けた感じで好感をが持てた。
あとは、やっぱりローレンス・ブロックの「ケラーのホロスコープ」がよかった。わたしは「八百万の死にざま」を読んでからマット・スカダーのファンだったが、最近の作品は読んでないのでケラーが出てくるのははじめて読んだ。ケラーは占い師に手相を見てもらうために手をさしだしたら、相手は手をじっと見てから押しもどしたとマギーに言う。マギーは手を見せるように言い、ケラーにあなたは殺人者の親指を持っていると告げる。ケラーが殺しの仕事をやってのけた後にあったことは、ここで書いたら叱られる。本を買って読んでください。
その他サイモン・ブレッド「ライブラリアン」もよかったし、ビル・クライダー「獅子座の女」、リリアン・ステュアート・カール「美は見る者の目に・・・」もよかった。(ヴィレッジブックス 1200円+税)

2007年04月27日

アン・ペリー「十六歳の闇」を読んで見た夢

十六歳の闇 アン ペリー昨夜は日記やミクシィを片付けたあと、眠るまでアン・ペリー「十六歳の闇」を読んでいた。ちょっと軽いなと思って寝ついてしまったのだが、明け方自分の寝言、「わたしがついて行ってあげるから・・・」という大声で目が覚めた。なんとまあ本書の主人公シャーロット・ビットになりきっていた。しかもそれからまた寝ついたと思ったら、内容は忘れたが殺人事件を推理している。これはちょっとやばいかも。今夜から寝る前に読む本は絵本か童話にしよう。

ミクシィのコミュで馬車が走るロンドンが舞台だと教えてもらって、はじめて読んだのだが、本書はアン・ペリーのトーマス・ビット警部と妻のシャーロット・ビットものの6作目。ヴィクトリア時代のロンドン、銀行家の3人娘の次女シャーロットは独立心の強い娘で、姉が連続殺人事件の犠牲になったとき、担当したビット警部と身分の差を超えて結婚する。妹のエミリーは反対に貴族と結婚して伯爵夫人となっている。結婚以来シャーロットは夫の担当する事件の解決に協力してきた。
今回はスラム街の中でも危険な場所、テムズ川の流れをせき止める大水門に流れ着いた死体が見つかったことからはじまる。死体は上流階級の16歳の少年だった。溺死といっても川ではなく浴槽で殺されたらしいこと、最後の食事は豪華なものだったこと、しかも初期の梅毒の症状があり、同性愛者と性交渉をもっていたのがわかる。
ビットは貴族の家に聴き込みに行くが、なかなか話をしてもらえないし、上司はビットの態度が気に入らない。証言によって少年の家庭教師ジェロームが逮捕されて裁判が行われ、死刑判決がでる。ビットはなにか腑に落ちない思いで、シャーロットに話をする。ビットにはできないが自分ならできると、シャーロットは貴族階級の家に入り込んで探るべく、妹の協力を得ようとする。
しっかりした大伯母は二人とともに、お茶やパーティに出かけて協力する。【わたくしたちと労働者階級の基本的な違いは、わたくしたちにはそのほとんど見えないものを見るだけの時間と機知があるということ。これこそまさに上流であることの神髄なのよ」】そして子どもの売春の反対運動をやろうという話にまで発展する。

2009年01月05日

ヴィクトリア朝ミステリー アン・ペリー「娼婦殺し」

去年読んだ「十六歳の闇」はトーマス・ビット警部と妻のシャーロット・ビットもののシリーズ6作目だった。「娼婦殺し」は16册目になり、翻訳されているのはこの2冊だけだ。さびしいな。

ピット警視はポウ街署の署長に昇進している。副総監の指示で社会的地位の高い人が関与する犯罪のときに動く立場にある。
1890年の夏のこと、ロンドンのホワイトチャペルの安下宿屋で娼婦の他殺死体が見つかった。ピット警視は夜中の二時に貧民街まで呼び出されて娼婦の死体を見ることになった。担当のユワート警部は、大変な名家にかかわる証拠品が残っていたから警視を呼んだと言う。
女は手をベッドの柱にくくりつけられ、首は絞首刑のロープと同じように靴下で縛られ、手足の指が折られていた。そこに紳士階級の会員制クラブのバッジとカフスボタンが残っていた。バッジで読める文字は〈フィンレイ・フィッツジェイムズ〉。ピットは高級住宅街のフィンレイ宅を訪れる。

シャーロットの妹のエミリーは最初の資産家の夫が亡くなったあと、みごとな作法と機知に富んでいることを主たる生活手段にしているジャックと恋に落ちて再婚した。ジャックはいま若手政治家として活躍している。
エミリーはフィンレイの妹のタルーラと知り合い、同じように社交界から浮いているどうしで話が合う。タルーラは兄がその時間には自分と同じ場所にいたと言う。ではなぜフィンレイのバッジが現場にあったのか。
ピットが正攻法で捜査を進めるのと同時に、シャーロットとエミリーとタルーラは、女性であることを利用して聴き込みをはじめる。
裕福な階級の女性たちは犬や蘭の品評会に行ったり、招待しあったりして日々を過ごしている。タルーラも美しい衣装が好きだが、つき合いには飽き飽きしている。彼女が恋しているのはずっと前に兄の友人だった貧民街の牧師ジェイゴである。そういうヴィクトリア時代の富裕な人たちと貧窮している人たちの生活が細かく描かれている。
二度目の殺人があり、調べて行くうちに、六年前にも同じような娼婦殺しがあったことがわかる。その殺人はなぜピットに知らされなかったのか。

最初はちょっとくどいと思ったが、途中からアン・ペリーの力に引きづりこまれた。ミステリー作家としての力がある人だ。意外な展開であれよあれよと言っている間にどーんとクライマックスにいたる。本書の中でも言及されているが「切り裂きジャック」は1888年の事件だった。(浅葉莢子訳 集英社文庫 895円+税)

2009年03月06日

アン・ペリー「人質」(エド・マクベイン編「十の罪業 Black」より)

十の罪業 BLACK北アイルランドの指導者コナー・オマリーの妻ブリジットは、ベルファーストから離れた北海岸へ保養に行くための荷造りをしている。コナーはスラックスばかり入れずにスカートにしろという。プロテスタント強硬派の指導者であり聖職者の妻にふさわしくない服装だと言われない場所に行くということは滅多にないことなのに。
1年ちょっと前に結婚した娘のロージーが手伝いにきて、コナーにもっと穏健になるようにと頼む。このままだとお互い永久に戦い続けるしかなくなる。どこかで譲らないと、という娘にコナーは冷たく答える。「私はここから一歩たりと動かない」。

夫妻と息子は自動車で出発し、ボディガード2人が別の車で続く。砂浜にぽつんと建つコテージに着くと、ボディガードたちはテントを張って護衛の態勢に入る。
食事を届けにテントへ行くと二人がいない。村のパブへ行ったのかとコナーは怒る。明け方、3人の男がドアを叩く。ボディガードたちは殺されていた。

3人の男たちは彼らを人質にする。襲ったのはIRAかしらと思ったが違っていた。監禁生活の中でブリジットは生活の知恵を働かせる。そして自分の意志で動き決定するようになる。
最後に怪我をしたコナーがそばについているように命令するのに対して「でも、それはわたしの意志ですることよ。あなたの意志でなくて」と言えるようになっていた。

最近、モラル・ハラスメント(モラハラ)という言葉を知った。解説書やサイトを読んでミクシィのほうで書いたのだけれど、コメントやメールをいただいてモラハラに悩んでいる人が多いのを知った。その勉強からコナーの言動はモラハラそのものなのだとわかった。ブリジットはモラハラから解放される第一歩を踏み出したと思う。

アン・ペリーの作品は、ヴィクトリア時代を舞台にしたビット警部シリーズを2作とモンク警部のシリーズを1冊読んでいる。彼女の短編も入っているアンソロジー「ホロスコープは死を招く」の編著者であり、この本で彼女が映画「乙女の祈り」の親友のモデルであると名乗り出たということも知った。
(田口俊樹訳 創元推理文庫 1600円+税)

2009年03月08日

アン・ペリー「災いの黒衣」

災いの黒衣 (創元推理文庫)アン・ペリーの作品では先に「十六歳の闇」「娼婦殺し」を読んでいる。トマス・ピット警部と妻のシャーロットが活躍する1880年〜90年代のシリーズで翻訳がある2作。
いま読み終わった「災いの黒衣」はウィリアム・モンク警部のシリーズで、やはり2作だけ翻訳があるうちの1作。もう1冊の「見知らぬ顔」のほうが順序が先のようだ。時代はクリミヤ戦争が終わった1850年代。わたしの場合は、クリミヤ戦争というと子ども向けの絵本にあったナイチンゲールの物語を思い出すというだけだ(笑)。

モンク警部は捜査中の事故ですべての記憶を失って4カ月経つが、生活のために隠して仕事している。部下のエヴァン部長刑事は純朴で有能な青年である。上司は有能なモンクを毛嫌いしている。
クィーン・アン街のお屋敷で、サー・バジルの娘(夫はクリミヤ戦争で死んだ)オクタヴィアが殺されるという事件があり、モンク警部が担当することになる。
外からの侵入者の仕業ではないのが確認され、内部の人間に的が絞られると、使用者側の言い分が通り使用人が容疑者とされる。彼ではないと確信して抵抗するモンクは捜査を外され警察を辞める。

ヘスター・ラターリィはナイチンゲールたちと戦場で働いてきた看護婦だ。戦いが終わってヴィクトリア女王がいくらナイチンゲールを褒めそやそうと、医療当局は改革の念に燃える若い女性を受け入れようとしない。診療所の医師とケンカして飛び出すと、医療関係では働けないように手を回されるのが見えている。
ヘスターは友人キャランドラの尽力でクィーン・アン街のお屋敷の奥様ビアトリス・バジルつきの看護婦として住み込むことに決まる。
モンク警部は外され退職し、犯人とされる男は逮捕されている。おかしいと思うヘスターは屋敷内で聞き込みを続ける。モンクはキャランドラのすすめで私立探偵として仕事をはじめる。

ヘスターの気取りのない性格と物言いが気持ちよい。屋敷の男性たちは、ヘスターが自分と同じように知識があり、知性があるのがわかると頼りにするし、真っすぐな女性たちも好意を持つ。召使いや女中たちとも話ができる。最後はモンクと気持ちが通じる。
(吉澤康子訳 創元推理文庫 1000円+税)

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