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エドマンド・クリスピン アーカイブ

2004年07月15日

エドマンド・クリスピン「大聖堂は大騒ぎ」

エドマンド・クリスピンは、子どものころ「消えた玩具屋」(1946)を読んで、おもしろかったという記憶が残っているだけの作家だったが、数年前に「愛は血を流して横たわる」(1948)を読んでから大好きになった。なかでも「白鳥の歌」(1947)がいちばん好きである。どの作品も女性がとても魅力的に書いてあるところがいい。
10年くらい前のある日、突然思い立って「世界探偵小説全集」を買い始めたのだが、クリスピンを知っただけでこの思いつきは成功だった。お金を払った甲斐があったというものだ。この全集を買うのは途中でやめてしまったが、まだ未読の在庫があるし、好きと思った作家のは買い足している。
いま読み終わった「大聖堂は大騒ぎ」は今年の5月に発行されたもので、オクスフォード大学在学中に書いた処女作「金蠅」(1944)に続く第2作である。ちょっと一人でおもしろがっているようなところがあり、傑作とは言いがたいけれど、どこか憎めない楽しい作品である。
作曲家のジェフリーは独身で、家政婦と猫数匹とのんきに暮らしていたが、彼らを留守番にしてジャーヴァス・フェンの待つ田舎に発つ。途中で捕虫網を買ってこいというフェンのために百貨店に立ち寄るが、暴漢に襲われ店員のフィールディングに助けられる。2人はいっしょに田舎に行くことになり、車中で襲われたりしながらもフェンのいるところまでたどりつく。
そこは大聖堂のある村で、ジェフリーはバトラー牧師の娘フランシスに一目惚れしてしまう。このフランシスは後々のクリスピンの作品に出てくる、才気煥発な女性たちの先駆けみたいな女性で、ジェフリーはさんざん振り回される。黒魔術や魔女などが出てくるけど、ユーモアがありおどろおどろしていなくて読みやすい。
バトラー牧師が四ツ葉のクローバーを摘み取って胸につけるという一節があり、最近わたしも四ツ葉のクローバーを4枚も手に入れたものだからうれしくなった。(国書刊行会 2400円+税)

2006年02月23日

まだまだ今夜は続く エドマンド・クリスピン「永久の別れのために」

さきほど10時から1時まで仮眠した。もちろんフィギュアスケートを見るためである。ライブで見るのと録画ではちがうもんね。今夜は最後まで見るつもり。
今月はばたばたしているうちに過ぎようとしている。日にちも少ないから週が変わったらすぐに3月だ。一昨日は税務署に行って確定申告をすませてきた。今日はわずかながら税金も払ったし、諸々の支払いもすませた。来月は来月の風が吹く、でありましょう。
グレッグ・ルッカ「逸脱者」と嶽本野ばら「シシリエンヌ」に圧倒されたあとは、まだ新しい本を読む気にならない。ユッカ・エスコラと辰巳哲也の演奏にも圧倒されたし。それでいま読んでいるのは、なつかしきエドマンド・クリスピン「永久の別れのために」である。これは何度目かの読書。情緒を求める気持ちを満たしてくれる本だ。ミステリーではあるがイギリスの田舎の話として読んでいる。1951年のイギリスの田舎は資本主義がまだ行き渡っていないみたいで、まだまだジェーン・オースティンの物語を彷彿させるところがある。クリスピンの作品の中のイギリスの女性は、軽々と自分を主張して生きているので読むのが心地よい。

2006年02月28日

エドマンド・クリスピンが好き

10年くらい前に「愛は血を流して横たわる」を読んで好きになって以来、またいまも読んでいるんだけど何度目になるかなぁ。先日までは「永遠の別れのために」を読んでいた。4冊手もとにあるのだが、「大聖堂は大騒ぎ」はそれほど好きではなくて、いちばん良いと思うのは「白鳥の歌」である。「消えた玩具屋」は昔読んだのだが、読んだことを覚えているだけだ。もう一度出してくれないかなぁ。その他の作品も読みたいものだ。
この4冊の主人公である素人探偵ジャーヴァス・フェンはオックスフォード大学セント・クリストファーズ・カレッジの英語英文学教授である。ひょろっとした姿とユーモアのある話しかたがいい。自己顕示欲が強いのだけれど、どっか的外れだったりする。女性に親切で女性のほうも彼に興味を持つのだが、結局その女性は他の人に惚れているのである。わたしがクリスピンを好きになったのは、その女性たちについての書き方がいいからだと思う。しっかりしていて向こう見ずでもあり賢くて新しい思想の持ち主であり、そして美人だ。
愛車リリー・クリスティン三世をはっちゃかめっちゃかとばす、おちゃめな大学教授の姿の向こうにドロシー・L・セイヤーズのピーター・ウィムジイ卿の姿がちらついて見える。賢くて美しい女性たちの向こうにハリエット・ヴェーンの姿が透けて見える。

2008年06月16日

エドマンド・クリスピン「愛は血を流して横たわる」を読むのは何度目かな

エドマンド・クリスピンの「愛は血を流して横たわる」は、ときどき読みたくなる本で、年に一度は読んでいる。最初に読んだエドマンド・クリスピンである。あるときクラシックミステリーが読みたくなって、知り合いの本屋に国書刊行会の「世界探偵小説全集」を注文した。続刊も入れるとずいぶんあってまだ読んでないのもある。このシリーズのおかげで、クリスピンを知っただけでもソンはしていないと思っている。
もっとも好きなのは「白鳥の歌」だが、「愛は血を流して横たわる」というタイトルが好きだし最初に読んだ本だから愛着がある。

男子校の校長のところへ女子校の校長がやってきて、生徒のブレンダの態度がおかいしと親から届けがあったと言う。両校がいっしょに終業式に演劇をすることになっていて、きっと男女間の問題だと思えたからだ。二人のやりとりを読んでいると、イギリスやなと思う。しっかり者の中年女性とユーモアのわかる中年男性の会話がおもしろい。
その日に偶然、知人の素人探偵ジャーヴァス・フェンが真っ赤なスポーツカー(リリィ・クリスティン号)に乗ってやってくる。校長はフェンが活躍した事件のことを新聞で読んだことがあるので、助けてほしいと言う。フェンの本職はオックスフォード大学の英文学教授である。
話していると老犬がやってきていやがるフェンになつくのだが、この犬が大活躍することになる。攫われるブレンダも友だちのエレスペスもしっかり者で大好き。(滝口達也訳 国書刊行会 2400円+税)

2008年06月20日

エドマンド・クリスピン「永久の別れのために」

永久の別れのために「愛は血を流して横たわる」を読んだら、本書を読みたくてたまらなくなった。どんなんだったっけと開いたら、ああこれこれとしっかりと覚えていた。8作目とあって円熟の作品だが、これ以後は長編小説の執筆から遠ざかり、9作目が出版されたのは26年後の1977年だという。翻訳はないようだ。

1950年の6月2日の金曜日、ダチェリーと名乗る男が旅行バッグをバスに預けて、行き先の旅館に届けるように頼んで歩き出す。行き先は4マイル先のコットン・アバス村なのだが、道を間違えてフットボールのグラウンドへ出てしまう。そこで出会った少女ペネロープに村への道を聞く。少女は少年たちを率いているドイツ人の教師に夢中のようだ。いっしょに村へ向かいながらの話によると、どうやらこの村はいま中傷の手紙で困りきっているらしい。手紙は彼女の父のところにもきて、少女と教師がつき合っていると告げていた。他の人にとどいているのも浮気をばらされたり、過去のことを調べたりと、新聞や雑誌から切り抜いた文字で作った手紙だという。
旅館へ着くとバーでギネスを注文し、店主や客の警察署長と話しているとキャスビイ警部が来て、署長に事件の報告をする。どうやら自殺者が出たらしい。二人が出て行ったので店主に村のことを聞くと、住民たちは景観が台無しになるとペネロープの父親ロルトの製材所に反対していて、もう10年も仲が悪いままだという。そこへ入ってきた女性が話をしかけて倒れるのをダチェリー氏は抱きとめる。彼女は村の医師ヘレンである。

ヘレンはオクスフォードで医学を学んだが、子ども時代も学生になっても孤独だった。父親の保険金でこの村で開業することができたが、人気のある男性医師がいるために患者が少なく、お金も尽きかけている。隣家に住むのはキャスビイ警部で惹かれ合う。しかし自殺した女性の遺産がヘレンにとの遺書で、キャスビイ警部はヘレンを疑わざるを得なくなる。

イギリスの田舎で起こった事件をフェンが解決する。だけど出てくるのはダチェリー、そのわけは読んだらわかる。(大山誠一郎訳 原書房 2200円+税)

2009年07月19日

エドマンド・クリスピン「白鳥の歌」

大好きなクリスピンの作品の中でもっとも好きな作品。長いこと本棚に置いてあったのを、ふと思いついて友人に貸し出ししていたのが返ってきた。
昨日から読み出してさっき読み終わった。やっぱりいい。オクスフォード大学の英語英文学教授のジャーヴァス・フェンが謎を解くシリーズの一冊で、クリスピンが26歳の作品である。

作家のエリザベスはオペラ「薔薇の騎士」の公演リハーサルに立ち会って、テノール歌手のアダムに惚れ込む。ほかの歌手よりも頭が良くて教養があり、ほっそりしているのが気に入った。相手がわかってくれないので、同じオペラに出演している年上のジョウンに仲立ちを頼み、結婚にこぎつける。アダムはエリザベスに横恋慕していた歌手のショートハウスに悩まされていたが、向こうから謝ってきたので、一件落着と「薔薇の騎士」の公演が終わると新婚旅行に出かけた。

次の公演先はオクスフォードで「ニュルンベルグのマイスタージンガー」をやることになった。エリザベスは新聞社に頼まれた原稿を書くため、オクスフォードでフェン教授に犯罪についてのインタビューしようといっしょに行く。実はアダムに探偵の知り合いがいるかと聞いたらフェンと知り合いだと答えたのが渡りに船だった。
ヴァルターとエーファをアダムとジョウンが演じ、ショートハウスはザックスを演じる。指揮者が若いピーコックでリハーサルがはじまるが、ショートハウスはピーコックをいじめ抜く。そんなときに夜の楽屋でショートハウスが殺された。

事件の話も入り組んでおもしろいのだけど、わたしの好きなところ。
若き指揮者のピーコックとジョウンが公演本番前に大学の中庭を散歩している。公演はきっと成功するだろう。もしかしたら終身契約がとれるかもしれない。ピーコックはジョウンに求婚する。「・・・中年女と結婚した男は、何の因果か、一生、骨董屋でしがものが買えない男と同じことなのよ」と一気にまくしたてるジョウン。ピーコックは謝って去って行く。幸福が手から逃げて行くとジョウンは「ちょっと待ってちょうだい」と叫ぶ。ピーコックはそっと唇にキスして「近ごろでは、いいものは皆、骨董屋で手に入れるんです」と大真面目で語った。1947年の作品。
(滝口達也訳 2000年発行 国書刊行会 2400円+税)

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