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アンナ・マクリーン アーカイブ

2008年08月07日

アンナ・マクリーン「ルイザと女相続人の謎」

ルイザと女相続人の謎 (創元推理文庫 M マ 16-1 名探偵オルコット 1)タイトルのルイザは「若草物語」を書いたルイザ・メイ・オルコットのことだ。プロローグには1887年にルイザが昔からの友人に、ドッティのことを書く気はないのかとたずねられたとある。いまは作家として成功し、街に出ると人目を引く存在になっていて、ときに昔の誰からも注目されずに道を歩けたころがなつかしくなる。これまで自伝的作品の中に子ども時代のことなど書いてきたが、実は彼女は犯罪や犯罪者などについても知識があり、はからずも婦人探偵として奇妙な役割を果たしたことがある。
ということで、親友のドッティが殺害された事件を解決した物語がはじまる。

1854年のボストン社交界は保守的な雰囲気だった。(ここで映画「エイジ・オブ・イノセンス 汚れなき情事」を思い出した。ニューヨーク社交界だったが同じようなものでしょう。)
少女時代からルイザとシルヴィアとドロシー(ドッティ)は仲良しだった。ルイザだけ上流階級ではなかったが、父が知識人であることなどから、社交界にも招待される。
ドッティがヨーロッパへの長い新婚旅行から帰ってきたので、ボストンの彼女の家でパーティがあり、招待されて行ったシルヴィアとルイザだが、ドッティは現れずヘンな雰囲気である。遅れて現れたドッティの態度もおかしい。今日はこれでおしまい、明日来てと言われて明日訪ねて行くとまた不在。夫のブレストンは出かけたきりだと心配している。待っていると来たのはコバン巡査で、奥様が溺死されたと言う。
ルイザはドッティの死の真実を知ろうと、シルヴィアをワトソン役にして調査をはじめる。

ドッティの実家が裕福なのはジョージア州に広大な土地を持ち、綿花で収益を上げているからとブレストンは語る。建前上は奴隷廃止論者なので公表していないというのだ。
ルイザの両親は逃亡奴隷の支援(地下鉄道)をしていて、常にバスケットには逃亡者に渡す生活用品や食べ物が詰められている。ルイザはそんな家庭で育ち、屋根裏の執筆室で小説を書いている。

上流階級も下層階級も同じなのは若い女性が多くは暴力によって妊娠するということ。ルイザが出入りする施設は夫がいない女性が出産するのを支援している。

その一方で女性は弱いもの、情緒的な存在として卑しめられている。【男性は、無秩序な世の中の、ずっと女性的な一面に哲学的な論理を無理に当てはめようとし、直感は論理の伴侶であって、その代用品ではないという考え方を受け入れようとしないのだ。】

大津波悦子さんのあとがきによると、著者のアンナ・マクリーンは別名儀で歴史小説を書いているほか、ジャーナリストとして賞をもらい、カレッジの創作講座ももっているそうだ。そしてニューヨーク州北部の19世紀の農家に暮らしているが、その家は当時の地下鉄道のひとつだそうだ。(藤村裕美訳 創元推理文庫 1000円+税)

2009年05月06日

アンナ・マクリーン「ルイザの不穏な休暇」

ルイザの不穏な休暇 (創元推理文庫)前作「ルイザと女相続人の謎」(2004)に次ぐ第2作「ルイザの不穏な休暇」(2005)まできたら、語り手ルーイが「若草物語」の著者ルイザ・メイ・オルコットであることに慣れてきた。そして家族のそれぞれがが「若草物語」の登場人物と重なる。ローリーのモデルの青年が出てくるのが微笑ましい。

書き出しは1887年、マサチューセッツ州に住む有名作家オルコット(ルーイ)の家に旧友シルヴィアが訪ねてくる。ふっくらとした彼女からは、何十年か前にルーイとともに事件を追いかけて駆け回ったしなやかな姿は想像できない。そこへ女優のファニーから小包がとどいて、二人はファニーが訪ねてきてくれたウォルポールでの事件を思い出し、シルヴィアはあの事件のことを書くように言う。

ボストンの上流階級の友人ドロシーが殺された事件に関わったルーイを気遣って、母のアッパは田舎に行くことをすすめる。母の義兄ベンジャミンとその娘が招待してくれてニューハンプシャー州ウォルポールに行くが、シルヴィアは家の縁談を嫌がって家出してやってくるし、家族全員が引っ越してきた。一家の友人でルーイを想っているルーも訪れる。

ルーイは町のタッパー雑貨店で買い物をし、鉄道工事のために先に来ていたオランダ移民と後からのアイルランド移民がにらみ合っているのを見る。
隣人のアイダ・タッパー夫人は病弱な兄と息子のクラレンスを連れて、タッパー家の息子ジョーナと再婚しているが、ジョーナはセールスに出ていて留守である。
オランダ移民のまじめな青年エルンストが崖から落ちて死亡する。妹のリリーは事故ではないというが無視される。エルンストとリリーは生活を切り詰めて土地を買っていた。

アイダはアッパに編み物を教えてもらうと言ってオルコット家に入り込む。しかもベンジャミンに色気で取り入る。その上にアイダはシルヴィアが遺産相続人であることを知ると息子のクラレンスと結婚させようと画策する。
最初から波乱含みでドラマチックな物語はどんどん進んでいく。

2番目の殺人事件が起こると遺体を発見したルーが疑われる。なんとしても真犯人を見つけようと必死なルーイは第3の死体を見つける。
(藤村裕美訳 創元推理文庫 940円+税)

2009年05月07日

アンナ・マクリーン「ルイザの不穏な休暇」雑談

ルイザの不穏な休暇 (創元推理文庫)オルコット一家はベンジャミン叔父が無償で提供してくれたコテージに来るまで、狭いあばら家に住んでいたが、その家賃さえ払えなくなっていた。その冬は重労働と野菜スープだけの生活を余儀なくされていた。父は哲学者で子女には余裕を提供してくれないものだとルーイは達観している。
アッパのすすめで、ルーイはひとりになろうと思ってやってきた。
【家族から一時的に離れること、ひとりになって、娘でも、姉妹でもない、ありのままの自分になる時間を持つことだった。(中略)父がいらだつのを承知の上で、いささかくどすぎるほど、チャールズ・ディケンズの『荒涼館』からこう引用したものだった—— “わたしが求めているのは自由だけなんです。蝶は自由です” 】
そのうちに家族のいない寂しさがつのり、家族が移住してくることでほっとする。
「若草物語」では「ピクウィック・クラブ」からの引用があり、今回は「荒涼館」からの引用で、ディケンズの愛読者を自認するわたしは余裕あり(笑)。

ルーイは事件の真相解明がもうちょっとのとき、恐い夢を見て頭がずきずきする。そこで自分に言い聞かせる。
【台所にもどって昼食の支度をしながら、計画を練る。これがアッパから学んだことだった。手際を要する複雑な問題は、人参をさいの目に切ったり、じゃがいもの皮をむいたりしながら考えるのがいちばんなのだ——】
そうだよね。わたしは電子レンジを持ってないのでなにを作るにも火を使うし、フードプロセッサーを持たないから、包丁で刻むし、ゆっくりと混ぜ合わせる。
おいおい、それなら19世紀の家庭といっしょやんか。いえいえ、ガスレンジはあるので薪ストーブのお世話にはなっていません(笑)。
(藤村裕美訳 創元推理文庫 940円+税)

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