木村二郎さん訳 エドワード・D・ホック「怪盗ニックの事件簿」
3ヵ月ほど前に東京在住のミステリーファンの姪が、おもしろい本はないかと聞いてきたので、どうかなぁと思いつつ「怪盗ニックを盗め」を紹介した。彼女はたいへんなステファニー・プラムのファンであるけれど、ドナルド・E・ウェストレイクのドートマンダーもののファンでもある。結果はオーケーで次も買うと言う。若い人にもエドワード・D・ホックが好まれるのを知ってなんとなく安心した。彼女だけということはないでしょうね。
本書は「怪盗ニックを盗め」に続く、異色の泥棒ニック・ヴェルヴェットが活躍する短編集で、10作が収められている。泥棒に活躍というのもなんだが、でもやっぱり活躍なんだわ。ニックはお金や宝石など金目のものは盗まないで、値打ちのないものを盗む泥棒である。料金は1件2万ドルで、プールの水を全部盗むように頼まれて盗んだことがある。
今回もおかしな注文を受ける。98セントのおもちゃのネズミ、家族のポートレート、昨日の新聞等々そのものには値打ちはないが、頼む人にとっては値打ちがある品物を頼まれる。理由は聞かない。泥棒をしているうちに、その理由がわかって、泥棒なのに探偵になっていることが多い。それでも絶対きっちりと料金をいただくところがなんともえらい。
いちばんおもしろかったのは「マフィアの虎猫」で、マフィアのドンが可愛がっている虎猫を盗むように頼まれるのだが、こころ温まる物語である。
同居しているガールフレンドのグロリアがのんびりしているようで、実はしっかり者であるのがこの本でわかった。その理由は読んだらわかります。(ハヤカワ文庫 740円+税)


