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ドロシー・L・セイヤーズ アーカイブ

2004年03月04日

ドロシー・L・セイヤーズ「幻のラジオドラマ」(ミステリマガジン4月号)

29日の新聞に「ミステリマガジン」4月号の広告があり、ドロシー・L・セイヤーズの名前があった。あじゃー、土曜日にジュンク堂へ行ったとき、なぜ雑誌を見なかったのかしら。近所の本屋さん3軒には「ミステリマガジン」は置いてないので、バスに乗って梅田まで買いに行った。
それでですね。ドロシー・L・セイヤーズの作品は雑誌の中にあることはあった。でも3ページ。特集「ホームズ150回目の誕生日」のグラビア記事のすぐ後、本文記事のいちばんはじめの1ページが、タイトルとピーター卿が子どものときのイラスト、あと2ページが本文である。創刊以来長いことお世話になった「ミステリマガジン」だから、年に3回くらいは買ってもいいかと思い直して買った。
でも内容はおもしろかった。「若きピーター卿、ホームズの依頼人となる」というタイトル通りで、ピーター卿が子どものときのお話。可愛がっている子猫がいなくなったため、ベイカー街を訪ねていき、ホームズに猫の居場所を聞く。ずばり当てたホームズに貯金箱のすべてを送って、サイン入りの領収書をもらう。そして彼の志を継ごうと努力するのである。
そのあと、ジャン・ジュネの文庫本を探した。河出文庫で「ブレストの乱暴者」(澁澤龍彦訳)、「葬儀」(生田耕作訳)の2冊があり、両方とも文字がびっしり。早く伝記を読んでしまって、たまっているミステリーを片づけて読みたい。
友だちにプレゼントする絵本を探したり、雑誌の立ち読みをしていて「現代」も買ってしまった。今月も苦しい家計なのにいいのかな。まあなんとかなるやろ。
関西ではお水取りがすまないと春はこないと言うけど、ほんまに今日は寒かった。今夜はもっと寒くなるそうである。ふとん乾燥機かけて寝よう。

2005年08月12日

ドロシー・L・セイヤーズ「忙しい蜜月旅行」新訳

10日ぶりに整骨院の帰り梅田を通った。阪急電車がホームに入ると目に入ってきたのは、高い所からいっぱい下がっているiPodの広告である。以前「スターウォーズ」の広告がきらきらしているときも驚いたがiPodでも驚いた。改札を出て紀伊国屋書店の前の広場もiPod一色なんでまた驚いた。
紀伊国屋書店の前に「NANA」13巻が山積みされていたので、それを持って中に入り文庫本を見たら、ほしいのがあった。前から再読したかった水上瀧太郎「大阪の宿」(講談社文芸文庫)と松下祥子さんによって新しく訳されたドロシー・L・セイヤーズ「忙しい蜜月旅行」(ハヤカワ文庫)。
三番街の成城石井で買い物してから、地下鉄で「忙しい蜜月旅行」を拾い読みしてたんだけど、この本も何十回も読んだ中の1冊なのだ。どこを開いても旧知という感じで楽しい。
巻末の横井司さんの解説を読んで、ひとつ知らなかったことがわかった。この本の原題「Busman's Honeymoon」の意味なんだけど、「ふだんの仕事と同じようなことをして過ごす休日」という意味の「Busman's holiday」をもじったものだそうだ。名探偵は休日もハネムーンもないということなんだって。名探偵ではなくてもわたしもそうなのでうれしくなった。

2006年03月16日

セイヤーズの短編が入った「伯母殺人事件」

伯母殺人事件・疑惑 リチャード ハルドロシー・L・セイヤーズを検索していて見つかったのでびっくりした。嶋中文庫という聞き慣れない文庫である。あわててアマゾンで探して注文した。表紙はセイヤーズの見慣れた顔写真を元にしたイラストだ。「伯母殺人事件」というのはリチャード・ハルの長編小説である。セイヤーズは「疑惑」「アリババの呪文」の2短編で量からいくと1/4ないくらいだ。グレート・ミステリーズというシリーズで第1期10巻発売中とある。
「疑惑」は郊外に住んでいる中年男が体調がすぐれず、調べると食べ物に砒素が入っていたのがわかる。ブラックユーモアに満ちた巧みな短編。
「アリババの呪文」はピーター卿が、猛獣狩りで不慮の死を遂げたというところからはじまる。社交界の花形で享年37歳だからまだハリエットと出会っていない。そこまで用意周到に死んだことにして捉えたい犯人がいるわけだ。聞いたようなタイトルだと気になって、読みだして気がついた。これともう一つ短編が入っている本をわたしは持っている。戦後すぐに出た本だ。もう一つはピーター卿とハリエットの間に子どもが産まれる夜の話だった。どこかにあるはずだ、探してみよう。「伯母殺人事件」はこれから読む。おもしろかったら儲けもの。(嶋中文庫 762円+税)

2006年03月18日

セイヤーズ読書会

「セイヤーズ読書会」は実際に集まる読書会でないのが残念だけど、とりあえずミクシィにコミュニティをつくってみました。さっきアップしたので会員はまだわたし一人です。
実は「セイヤーズ(DL)」というコミュニティがあって、わたしも参加しているのですが、そこは作品についてあまり話せない雰囲気なのです。そこで、どうしてもセイヤーズの作品について語り合いたいという気持ちが強くなり、「セイヤーズ読書会」を立ち上げてみたというわけです。同じ気持ちの人がいたらうれしいんですけどね。セイヤーズファンのかたがおられましたらご連絡ください。なんと言っても、わたしはサラ・パレツキーとドロシー・L・セイヤーズの2本立て人間なのです。
さて、本家本元の「サラ・パレツキーコミュニティ」のほうはぼちぼち集まってきていますが、読書家がまだミクシィに入っておられないのか、ほんとにぼちぼちです。最近「4Fってなんですか」と聞かれて驚きましたが、10年前には、いまをときめいていた4Fが通らない世の中になっているんですね(知らない人はメールください、お教えします)。ヴィク・ファン・クラブもミクシィのコミュニティも頑張らなくては。どない頑張ったらええんかはわからへんのですが(笑)。

2006年03月21日

静かにしていたい?

春はややこしい。花粉症はどうやら免れたものの、皮膚のかゆみはいっそうひどい。背中が掻き傷だらけで水着が着られない。痒いと気分を平静に保つのに努力がいる。日常の用事を意識して丁寧にしている。
こんなときに良いのが読み慣れた本を読むことだ。「セイヤーズ読書会 コミュニティ」を発足させたところだし、1冊の本をテーマにするべく、まず「死体をどうぞ」を読み出した。これも何度読んだかわからないくらい読んだ本だ。以前持っていたのは抄訳だったが、完訳があるいま思うに、かなりうまくまとめてあった。ロマンチックな面がちゃんと出ていた。
そこで引用
ハリエット「わたしはどんな状況も望んでないわ。静かにしていたいだけなの。」
ピーター卿「へえっ! けどあなたは静かにしていられる人じゃない。いつだって何かしら面倒を引き起こす。それなら対等な条件で闘って、楽しんだらどうだね?・・・僕も闘うのならうまいよ」

ハリエットとピーター卿のように規模がでかくないが、わたしも静かに暮らしたいのに、向こうから面倒がやってくる。もっとも面倒を起こす相手とつきあってきたということから考えると、“静かにしていられる人じゃない。いつだって何かしら面倒を引き起こす”人なのである。ほんま、なんにもしなければ面倒はこないし、静かに暮らせるはずだけど、なんて愚痴を言わずに、バカなことを言ったやつと闘うのを楽しもう(笑)。

2006年04月20日

歯医者へ行った日、セイヤーズの短編「証拠に歯向かって」を読む

歯医者に行き出してから1カ月以上経った。虫歯の詰め物と歯の断片がとれたあとが膿んでいるそうで、週に一度その歯を消毒しつつ他の歯を点検修理してもらっている。アレルギー体質と言ったら化膿止め薬はやめておこうとなって、ゆっくりと診てもらうことになったのだ。今日はきれいになってきたからと、一段階あげた治療をしてもらったが、その横の歯の今の状態をレントゲンで撮るという。カメラのついた骨組みのようなものを口に入れたら、ゲゲッとなって笑われ、フイルムだけをその歯にくっつけて撮ってもらった。前の歯医者でも言われたけど、わたしの口は小さいんだって。大口開けて笑うのにね。
さて、「証拠に歯向かって」は文字通り歯医者の事件である。ピーター卿はわたしと同じ状況になって歯医者に行く。わたしが最初に歯医者に行ってから半世紀も経って、治療方法は驚くべき進化をとげている。ピーター卿のころはさぞかしたいへんだったろう。でも、彼のことだからきっと半日貸し切りだったりするのだろう。他に客が待ってないし。歯医者が同業者にこんな事件があったと話すと、「ぼくはまだ帰らない。きみと一緒にウィンブルトンへ行くんだ。ぼくの自動車があれば・・・」と言って、事件現場へ一緒に行くのである。一度は不慮の事故死とされるが、きっかけがあり、歯医者が詳しく調べると歯の詰め物がカギになって、殺人事件だとわかる。(ピーター卿の事件簿II 顔のない男 創元推理文庫 780円+税)

2006年04月26日

ドロシー・L・セイヤーズ「雲なす証言」を改めて楽しむ

雲なす証言 ドロシー・L. セイヤーズミクシィで「セイヤーズ読書会」コミュというのを始めた。参加者はまだ9人だけど「読書会」という名のとおり落ち着いた話し合いの場になっている。しょっちゅう読んでいる本ばかりではないので、久しぶりに読み返さなければならないのもある。それがまた楽しい。
今日は「雲なす証言」を取り上げてくれたので、そこにコメントを入れていくために読み出している。
発行年を見たら1994年である。この日記を書き出したのは1998年だから感想は書いてないはずだ(もしかして再読したとき書いているかも)。こちらへ全部移行したら検索できるのに残念だ。いま目次を全部確かめる元気がない。
「誰の死体?」に続くピーター卿シリーズ第2作である。33歳のピーター卿は「誰の死体?」での疲れを癒すためにバンターを連れ、コルシカの荒野で文明と離れた3カ月を過ごす。パリへ戻った翌朝目を覚ますと、兄ジェラルドがヨークシャーの狩猟用別荘で妹の婚約者を射殺した、という疑いで逮捕されたという知らせがあった。捜査の担当はパーカー警部である。
すぐにかけつけたピーター卿はさっそくパーカーと協力して捜査に乗り出す。ジェラルドは黙秘しているが誰かをかばっているようだ。また妹のレディ・メアリはなにを怯えているのか。
近くの農場主を訪ねると虐げられた美しい妻がいるが、犬をけしかけられ這々の体で逃げ帰る。また、聞き込みにまわって、バンターともどもムアのあぜ道で沼にはまって九死に一生を得る。ロンドンで過激派の集まりに女性の知り合いと行き、そこで怪しい奴を見つけて追いかけるが、撃たれた上に道路に置いてあった家具にぶつかって救急車で運ばれたりと、体を張っての捜査になる。
レディ・メアリは新時代の女性として、戦争中はボランティアで従軍看護婦をやり、戦後は過激派の事務仕事をしたりと活動して恋人もいた。そういうこともだんだんわかっていく。
兄にも黙秘をとおす理由があり貴族としての誇りを持つ男性とわかる。母の先代公妃の賢さがとても目立つし、バンターも大活躍だった。パーカーはメアリに首ったけになってしまう。(創元推理文庫 税込み600円)

2006年05月09日

ドロシー・L・セイヤーズ「不自然な死」

不自然な死 ドロシー・L. セイヤーズ「kumiko 日記」(旧「kumikoのほとんど毎日ページ」)を書き出したのは1998年だから、ドロシー・L・セイヤーズの作品が創元推理文庫が発行されはじめてからかなり経っている。日記を書き出してから発行されたものは感想を書いている。途中で中断かとすごくやきもきした「学寮祭の夜」については、1999年に大切にしてきた「大学祭の夜」を全部コピーしたことを書いている。これはたしか15人くらいの人にコピー代金をもらって送った。「学寮祭の夜」として発行されたのは2001年であった。
さて、長編3作目の「不自然な死」を読み終えた。買ったときだけしか読んでなかったので新鮮だった。わたしはどっちかと言うと、ピーター卿とハリエット・ヴェインの出会い(「毒を食らわば」)と、それによってピーター卿もハリエットも変わっていく、人生の物語になる後半が好きなのだ。最初のほうのピーター卿はちょっと軽薄で、最初から読んでいたら途中で放り出したかもしれないと思っていた。でも、今回読み返してみてそれはないとわかった。
ソーホーの料理店でピーター卿とパーカーが食事しながら話していると、横のテーブルで話が耳に入った若い男が声をかける。医者の責任について話していたときで、自分の例を聞いてほしいと言う。彼は医師で小さな田舎町で開業したが、癌の患者が自分の診たてより早く亡くなったのをおかしく思い解剖を申し出た。結果は不審なことは発見できず、彼はその町にいられなくなりロンドンにきている。
ピンときたピーター卿がさっそく動きだし、パーカーをせかして警察が調べはじめるようにする。遺産をもらった姪は問題はないのか、聞き込み代理人のクリンプスンさんがその町に行き聞き込みをはじめる。また弁護士に遺産相続の新しい法律を聞く。その間に姪の周りの女性たちが死んでいく。自然死のように見せかけた殺人である。解決が見えてきたときの、最初の医師の言葉がおもしろかった。
わたしはミステリーが好きで、主にハードボイルド私立探偵小説ファンだけど、古い本格探偵小説も好きだ。でも動機とか殺人方法とか密室とかが苦手で、作品の雰囲気や登場人物の人となりやおしゃべりが好きなのだ。セイヤーズの作品はわたしの好みを100パーセント満足させてくれる。(創元推理文庫 600円+税)

2006年05月25日

ドロシー・L・セイヤーズ「ベローナ・クラブの不愉快な事件」

ベローナ・クラブの不愉快な事件 ドロシー・L. セイヤーズ本書も1995年に出たときに読んだままだった。地震のあと忙しくしていたから、のんびりとクラシックなミステリーを読んでいられなかったのだろうし、一通り読んでまた後でと思ったのだろう。こんなにおもしろい本を一度だけ読んで置いてあったなんてもったいないことをした。
休戦記念日にピーター卿はベローナ・クラブに行く。マーチバンクス大佐がフランスの戦場で戦死した息子をしのんで開く、親しかった者とのささやかな晩餐会に招かれたからだ。そのときクラブ内で古参の会員フェンティマン将軍が、お気に入りの椅子に座ったまま死んでいるのが発見される。将軍の妹レディ・フェリシティ・ドーマーに電話すると、彼女は今朝亡くなったという。この兄妹は長い間交流がなかった。貧しい貴族の家庭に育ち兄は教育を受けて軍人になったが、妹は縁談を拒否して家出し実業家と結婚する。夫が功績により爵位を得たのでレディとなった。兄妹は会うことなく年老いて今となった。その妹が兄と会いたがっていると連絡があり、将軍は昨日会いに行ったばかりなのだ。身寄りがいないフェリシティの遺言は、兄が自分より長生きしたら遺産の大部分を兄に、逆なら同居して自分が後見している娘アン・ドーランドに大部分がいくというものだった。相前後して亡くなった二人のどちらが先だったかが焦点となる。弁護士に調査を頼まれたピーター卿が動きだす。フェンティマン将軍の二人の息子ロバートとジョージにも大変なことである。途中から殺人事件となりパーカー警部も加わる。
今回楽しいのはしっかりした女性たちが登場することだ。亡くなったフェリシティも親の干渉から逃れて、自分で選んだ夫といっしょになった。アン・ドーランドは、美人ではないが真面目で、ピーター卿は会話しながらしっかりした性格を見抜く。ジョージ・フェンティマンの妻シーラはお金がなく頼りない夫を助けようと喫茶店を経営している。それを僻んでモンクをつけるジョージ。ピーター卿の女友達マージョリーは芸術家で、ピーター卿をよく理解している人だ。次作でハリエット・ヴェインが登場するのを知らなかったら、マージョリーが恋人だったらいいのにと思うところだ。友だち同士でいようと決めた二人である。(創元推理文庫 税込み600円)

2006年07月01日

ドロシー・L・セイヤーズ「五匹の赤い鰊」

五匹の赤い鰊 ドロシー・L・セイヤーズ本書をはじめて読んだのは10年前の1996年である。読んだときには、なんで「赤い鰊」かわかったのに、すでに忘れていて、ニシンの料理のことだったかと思った(笑)。
ピーター・ウィムジィ卿シリーズの6册目。後に結婚するハリエット・ヴェインと知り合った「毒を食らわば」の後の作品だが、本書には全然ハリエットの姿は出てこないし、会話にも出ないし、思いをはせることもない。お茶目なピーター卿の大活躍物語である。人生の物語から一休みして、セイヤーズの探偵小説作家としての才能を十二分に生かした作品だ。
ピーター卿はバンターを連れてスコットランドの小さな町で、釣りをしたり画家たちとつきあったりしている。画家仲間のなかでキャンベルひとりが町じゅうでもめごとを起こしている。その夜もパブで喧嘩騒ぎとなり、ピーター卿はキャンベルを殺したいほど癪に障っている画家が何人もいることを知る。
翌朝、キャンベルが川の石の上で絵を描いているとき、渓流に落ちて死んだと知らされて、ピーター卿はすぐに現場へいく。死体を調べて溺死ではなく殺されたとわかる。その日に限って出かけた人が多く、戻ってきていない人もいて捜査は難渋を極める。バンターは休みをとって映画に行くと言い、実はある画家の女中を誘ってその家の様子を探ってくる。残念ながらバンターの出番はそれだけである。パーカー主席警部も出てくるが助っ人としてだけなので、これも残念だ。
画家たちの行動を探っていくと動機はみんなにあるし、怪しげな行動をしている人が多いのでたいへんだ。最後にピーター卿が考えて立証するが、今回ばかりはよく動く。それもスコットランドの警察官たちといっしょに行動して、理詰めで追いつめていく。スコットランド訛りが日本語にちゃんと訳されていておもしろい。
「赤い鰊」が会話に出てきて「にせのてがかり」とルビがふってある。五匹というのは、5人に犯行の動機があり「てがかり」もあったために、「にせのてがかり」を追いかけたことをいうのだろう。イギリスではニシンは身近な魚だんだろうな、ヘリンボーンって布地があるしね。わたしはニシンソバが好き。(創元推理文庫 税込み850円)

2006年09月15日

ドロシー・L・セイヤーズ「殺人は広告する」読んだのは3回目

殺人は広告する ドロシー・L. セイヤーズミクシィの「セイヤーズ読書会」コミュニティのために数日かかって読んだ。買ったとき(1997年)に読んで、2001年12月には「ナイン・テイラーズ」とともに再読して感想を書いている。今回3回目なんだけど、抜かしたりせずしっかりと読んだのは、ほんとにおもしろかったからである。
セイヤーズは「ナイン・テイラーズ」の調べものに時間がかかったので、しかたなしに本書を無理に書いたという。舞台を自身がコピーライターとして働いていた広告業界にして、麻薬取引と殺人の物語にした。広告が世に出るまでのいろんなことが書いてあるのもおもしろい理由である。
広告会社で一人の従業員が階段から落ちて死ぬ。ピーター・ウィムジイ卿はデス・ブリードンと名乗ってその会社に就職し、その死の原因を突き止めようとする。死んだ男は悪名高い令嬢ダイアン・デ.モメリーと付き合っていた。モメリーに接近するピーター卿のやり方がいやに芝居がかっている。短編小説にこんな感じのがあったように思う。このへんだけが1932年という年代を感じさせるが、あとはもうおもしろくてどんどんいく。どうやらモメリーは麻薬取引の一端に関わっているらしい。
一方パーカー主席警部は大きな麻薬組織を追って捜査を進めているが成果は上がっていない。ピーター卿はパーカー夫妻の住所を使わせてもらっていて、よく彼らの家に行くので、妹のメアリとパーカーの幸せな結婚生活がわかる。パーカーが仕事帰りに魚屋で平目を買って手に提げて帰るところがあっておもしろい。あせった犯人はピーター卿の代わりにパーカーを襲撃し、鎖骨を折る大けがを負わせるが暗かったので犯人の顔がわからない。
デス・ブリードンとしてコピーライターの才能を発揮しだすと、ピーター卿は仕事のおもしろさに目覚めてしまう。また、会社関係のクリケット試合に出て、目立たないようにしようと思っていたのに、つい頑張って目立ってしまい、「ベイリオルのウィムジイ君じゃないか」と昔のクリケットを懐かしむ老人に言われ、あわてる場面もおもしろい。
最後は殺人と麻薬取引がいっきょに解決され、ピーター卿はサラリーマン生活から足を洗うが、最後にした大キャンペーンの仕事がはじまって、街にはピーター卿の考えた広告文があふれている。(創元推理文庫 900円+税)

2006年09月22日

浅羽莢子さん

浅羽莢子さんが乳がんで亡くなられたことを、昨夜遅くミクシィのサイバーガムシューさんの書き込みで知った。創元推理文庫のドロシー・L・セイヤーズの作品はすべて浅羽さんの訳である。読みやすくユーモアがある訳文はセイヤーズの英語って日本語で読めばこんな感じだと、英語のできないわたしは思っていた。それほど自然に読めていた。
浅羽さんと個人的にお会いしたことはないけれど、親しみを感じていたし教えられてもいた。古いところでは「別冊宝島105 ミステリーの友」(1987)に浅羽さんが書かれた「セイヤーズに学ぶ女性の自立」がとても素敵な文章だった。セイヤーズ長編の全訳(最後の1冊はされていないが)をされたのはそれからだいぶ経ってからのことだ。
1991年にはサラ・パレツキーが「ウーマンズ・アイ」(ハヤカワ文庫 1992)序文でセイヤーズ批判を展開している。サラ・パレツキーはそれを言わなければ前に進めなかったと思うが、それにしても1920〜30年代だったんですよとセイヤーズの味方をしたい気持ちである。
セイヤーズと浅羽さんはわたしの中では結びついているが、他にもいろいろ翻訳の仕事をされていた。ずっと昔にイギリス児童文学研究会に入っていたころ、浅羽さん訳の本を取り上げたことがあった。メンバーの一人が訳に愛がないと言ったのをよく覚えている。いわゆる児童文学的な訳でなかったからだろうが、知らない名前のせいだとわたしは判断して、ミステリーの訳をたくさんしてはるエラい人だと言ったら、その意見は引っ込められた。
さっき浅羽さんのブログ「浅羽莢子のFine Peace!」を見にいったら、8月5日まで書かれていた。

2006年10月23日

ドロシー・L・セイヤーズ「ナイン・テイラーズ」を深く味わう

ナイン・テイラーズ ドロシー・L. セイヤーズ「ナイン・テイラーズ」を読んだのは三度目である。さっき読み終えたところだがこれから四度目を読もうと思う。最初は名高い名作を読むという興奮があった(1998年)。二度目はじっくりと楽しんだと書いている(2001年)。
今回はもっと楽しんだ。二回とも章のタイトルを気にしていなかったのを、今回は巻の一から巻の四の鐘の鳴らし方の名称もちゃんと読んだ。「ケント高音跳ね八鐘短打曲(二渡り)」と読んでもなんにもわからないけどね。もしこの鐘の音を聴けたら幸せだなと思うのであります。
ピーター卿が従僕バンターとともに大晦日に田舎の雪道を愛車ダイムラーで走っているとき、太鼓橋のところで事故を起こしてしまう。時を告げる教会の音が聞こえたので歩いていき人家を見つける。そこにちょうど教区長がおり泊めてもらうことになる。寒村にふさわしくない大きな教会で、素晴らしい鐘楼に八つの鐘がさがっている。この夜こそ「ケント高音跳ね八鐘短打曲」をつく大切な夜なのであった。ピーター卿は若いころに鐘をついたことがあると話すと、そこへ一人病気で欠けるという報告が入る。教区長に頼まれてピーター卿がやってみることになる。礼拝の儀式が進むうちに真夜中が近づく。男子が死んだときに打つ告知の鐘「九告鐘(ナイン・テイラーズ)」が鳴り響き、それで旧年は死ぬ。それから九時間にわたって鐘をつく。これが出だしだ。素晴らしい序章だと気がつくのは全部読み終わってからだ。
その後に静かな小さな村で大事件が起きる。赤屋敷の当主サー・ヘンリーが亡くなって墓地を掘ると、先に埋葬した奥方とは別な死体が見つかったのだ。ピーター卿が帰った後に彼の探偵仕事のことを知った教区長夫妻は、事件解決依頼の手紙を書く。大喜びでバンターとともに駆けつけるが、昔のエメラルド盗難事件とからんだ難事件にさすがのピーター卿も手を焼く。

2007年01月08日

ドロシー・L・セイヤーズ「学寮祭の夜」をまた読む

学寮祭の夜 (創元推理文庫) ドロシー・L. セイヤーズミクシィの「セイヤーズ読書会」コミュニティに感想を書くために、また「学寮祭の夜」を読み返している。楽しんで読んでいるのだが、新しい発見もあった。
本書はこれまでの作品と違って、作家ハリエット・ヴェインの視点で書かれいるから、その目に映ったピーター・ウィムジイ卿の姿と言動が読者に知らされる。ピーター卿はいまや外務省から依頼されて、彼にしかできない、つまり外国の重要人物と話す仕事にたずさわっている。外国へ出向いての気を使う激務なので、ハリエットと会っても疲れきっていることが多い。本書の前まではどっちかというと軽妙に描写されていたピーター卿が、ハリエッットと船遊びをしているボートで、疲れからぐっすり眠りこんでしまったりする。船遊びと言っても、事件のノートを検討しながらだが。そこでハリエットはじっくりとピーター卿を眺めて感慨に耽るのだ。
ハリエットの出身校であるオクスフォードのシュローズベリ・カレッジで奇怪な事件が頻発して、探偵作家という職業からハリエットが喚ばれるのだが、手に負えない状態になりピーター卿に調査を依頼する。ハリエットは集めた証拠品から犯人は教養のある人間と思い込んでいた。ピーター卿は推理と調査で真犯人を割り出すが、証拠がまだないので犯人と名指すことができない。ハリエットと犯人のほんとの標的の女性教官の身が危険であるとのみ告げる。それからの彼の苦悩を今回はとても味わって読んだ。愛する女性を危険から遠ざけることができない矛盾に苦しむピーター卿は、夜の見回りをするハリエットに犬の首輪をさせ、その上、後ろから襲われたときのために、どう倒れたらよいかを指南するのである。そして実際にハリエットは見回り中に教官の部屋で襲われる。犬の首輪と倒れる練習が役に立ったのである。

2008年01月23日

ドロシー・L・セイヤーズ 長編小説第1作目の「誰の死体?」を語ろう

誰の死体? (創元推理文庫) ドロシー・L. セイヤーズ晩ご飯を食べてから今日はなにを書こうかと考えていたんだけど、どうにも思いつかない。家にある本でまだ書いてない本はあるのだけれど、書くにはまた読まねばならぬ。いま読んでいてもう少しで読み終わる本は明日書く予定。

それから読むのがこの本です(かなり勿体ぶってます-笑)
山本義隆「磁力と重力の発見」全3巻(みすず書房)
姉に頼まれてアマゾンで買ったのだが、先に読ませてくれるとのこと。これからありがたく読ませてもらうところ。
この本を読んでいる間は本の紹介が減ると思うので、思いついてミクシィの「セイヤーズ読書会」のトピックに自分が書いたのをこちらに引っ張ってくることにした。けっこうおもしろいです(自分だけかも)。


■長編小説第1作目の「誰の死体?」を語ろう

長編小説第1作目の「誰の死体?」ですけど、この本でピーター卿の魅力につかまってしまった人も多いかと思います。
私が最初に読んだのは「大学祭の夜」(「学寮祭の夜」)ですが、次に「パターシイ殺人事件」(「誰の死体?」芸術社から昭和31年に発行されたもの)を読んで、ピーター卿の人となりを知りました。
本書ではすでにデンヴァー先代公妃、マーヴィン・バンター、チャールズ・パーカーと主役クラスの人たちも出そろって、それぞれの魅力を発揮しています。ピーター卿の家庭環境、戦争体験(第一次大戦)、バンターとの間柄も語られています。

ものすごくさっさとストーリーが始まっていくところが好きです。古書の競売に行く途中のタクシーで忘れ物を思い出し、家にもどると母のデンヴァー先代公妃から電話がかかっており、知り合いの家の浴場に死体が置かれているとのこと。競売のほうはバンターにまかせて、死体が発見された建築家シップスの家に向かいます。
死体は50がらみの長身でがっしりした男で、裸にもかかわらず金縁の鼻眼鏡をのせています。これで読者は興味しんしんとなりますよね。
(mixi コミュニティ「セイヤーズ読書会」のトピック〈長編小説第1作目の「誰の死体?」を語ろう 2006.4.9〉より)

2008年02月09日

ドロシー・L・セイヤーズ「不自然な死」について話そう

ミクシィの「セイヤーズ読書会」コミュで最後の長編小説である「忙しい蜜月旅行」を取り上げた。紹介文は何度も読んでいるからすぐにできると思ったが、読み出したらやめられない。そして思ってたよりもずっと内容が深いので熱中してしまった。アップしてほっとしているところ。これからコメントが書き込まれるのが楽しみだ。
今日はちょっとばたついたもので日記のテーマが頭に浮かばず、こういうときのミクシィ頼み(笑)。

■「不自然な死」について話そう

買ったときに読んだだけだったので、今回11年ぶりに読むことになってよかったです。セイヤーズの中では好きの順番が低かったのですが、再読したら工夫のある作品だというのがわかりました。

ピーター卿とパーカーがソーホーの料理店で食事しながら話し合っているとき、横にいた青年が口を挟みます。その話に気を惹かれたピーター卿は自宅へ伴って、詳しく事情を聞きます。青年は医者で自分の患者のことで疑念を持っていると言うのです。癌の患者の老婦人が医者の予想以上に早く亡くなったのはなぜか。ピーター卿は調べ始めます。聞きこみ代理人クリンプスンさんをその町に行かせ、うわさ話の蒐集をさせるのです。
ピーター卿はその死に疑いを持って行動をはじめますが、パーカーは「・・・根拠は自信過剰の若い医師の診断と、ばかばかしい噂話しかないじゃないか」と言います。それに対してピーター卿は「証拠を求める役人としての情熱が、そのすばらしい知性を徐々に骨抜きにし、直感を押し潰してしまっている・・・」と言い、賭けをしようと持ちかけます。
クリンプスンさんも聞き込みからはじまって大活躍。そこまでやらずともと思うくらいに尾行したり、最後はどうなるかとはらはらさせられました。

解説の久坂さんが【〈いかに痕跡を残さず自然死に見せかけ殺人を行ったか?〉という〈不自然な死〉を巡るハウダニットである。】と書いておられますが、そのとおり巧妙に計画された殺人、そしてなぜ癌で自然死するであろう人を、何カ月か前に自然死に見せて殺す必要があったということもわかって納得です。(mixi コミュニティ「セイヤーズ読書会」のトピック〈「不自然な死」について話そう 2006.5.17〉より)
(浅羽莢子訳 創元推理文庫 600円)

2008年03月13日

ドロシー・L・セイヤーズ「毒を食らわば」について語ろう

毎日ばたばたしているが、睡眠時間はしっかり7時間とっている。お陰で風邪を引いても寝込むこともなくすんでいる。食事の支度と洗濯はがんばってやるが、掃除のほうはまあまあといったところ。
今日もばたついたので日記はミクシィからもってきた。

■「毒を食らわば」について語ろう

私が最初に読んだのはハヤカワポケットミステリの「毒」でした。だれかに貸したままで長期間経ってしまったので、浅羽さんの訳で出たときはうれしかったです。ピーター卿とハリエットの出会いですもんね。最近はセイヤーズを読み始める人に、これから読めって勧めています。

出だしが法廷の場です。ハリエットは愛人のフィリップ・ボーイズを砒素で殺害したと逮捕され裁判にかけられている。ピーター卿も母のデンヴァー先代公妃も傍聴に来ています。陪審員の一人がピーター卿の聞き込み代理人であるクリンプスンさんで、判決が決まったのも同然なところをがんばって先へ持ち越すことに成功します。
ピーター卿はハリエットに面会に行って会話の終わりに結婚を申し込むと、暗い顔で「あなたもそうでしたの、これで四十七」と返事されてしまいます。もちろんそれでへこむピーター卿ではありません。

それから1カ月間、次の裁判の日に備えてピーター卿は必死で頭をしぼります。ボヘミア(芸術家の出入りする場所)を調べるときの習慣でフェルプス嬢を訪ねて、死者について聞き込みしたり、パーカー主席警部もまきこんで真犯人を追いますが、なかなかしっぽがつかみきれません。そこでバンターとクリンプスンさんの大活躍するというおもしろい展開になります。クリンプスンさんの事務所のマーチスン嬢が、犯人と目される人物の事務所で秘書になって働きながら探る活躍も見逃せません。

印象に残っているのは、デュークス・デンヴァーのクリスマスのお茶の時間。晩年のピーター卿が20年間その思い出につきまとわれてうなされたと語ったという、そのお茶会のシーンが、その頃の貴族階級の会話ってこんなものかとおもしろい。

それと妹のメアリとの会話がいいです。メアリはこの本の最後でパーカーと結婚することになるのですが、ピーター卿が家に帰ると身内は大騒動です。妹の婿が警官風情とと言ってうるさい兄に、さらっとチャールズはいい奴だと言ってのけます。そしてなんなら僕とけんかしたらいいと言うと、相手は女の警官とかと聞かれます。「僕が結婚するのは囚人のほうさ」「向こうが受けてくれればだが」。(mixi コミュニティ「セイヤーズ読書会」のトピック〈「毒を食らわば」について語ろう 2006.3.29〉より)(浅羽莢子訳 創元推理文庫 680円+税)

2008年04月24日

ドロシー・L・セイヤーズ「五匹の赤い鰊」について話し合いましょう

かなり前からジョセフ・ウォンボーの「ハリウッド警察25時」を読んでいるのですが、なかなかはかどりません。ストーリーで引っ張られるないから、ちょっとの空き時間に読むということができません。おもしろくないことはないんですけど。

そこで、またミクシィの「セイヤーズ読書会」から持ってきました。タイトルの“赤い鰊”というのは、“偽の手がかり”という意味なんですね。この言葉はいまも使われているのが、ピーター・ラヴゼイの「殺人作家同盟」を読んだらわかりました。“赤い鰊”に“偽の手がかり”とルビがふってあったのです。


■「五匹の赤い鰊」について話し合いましょう
ピーター・ウィムジィ卿シリーズの6册目です。10年前に読んだきりだったので、新しく買ったのを読んだような読書の楽しみを味わいました。

今回のピーター卿はバンターを連れてスコットランドの小さな町ギャロウェイで家を借り、釣りをしたり画家たちとつきあったりして楽しく暮らしています。イングランド人であること新入りなこと、にもかかわらず住民に受け入れられているのは、偉そうにふるまわないからだし、イングランド人の悪徳にとらわれていない性格なので、気取っていて浅薄な態度をとっているけど、そんなに気にされていないようです。

こんな平和でのんきそうな絵描きが多い町ですが、ひとりキャンベルという画家が口が悪くてなににつけ難癖をつけるので皆は大迷惑しています。殺してやりたいと思っている人もいるくらい。その夜もパブで喧嘩騒ぎとなります。

翌朝、ピーター卿はキャンベルが死体で発見されたと聞き現場へ急ぎます。朝早く川の石の上で絵を描いているとき、渓流に落ちて死んだと推定できる状況ですが、死体を調べると溺死ではなく殺されたことがわかります。

キャンベルを殺す動機のある人はいっぱいいるけど、だれが実際に手を下したのだろう。その日に限って出かけた人が多く、戻ってきていない人もいて捜査は手こずります。
バンターは休みをとって映画に行くと言い、実はある画家の女中を誘ってその家の様子を探ってきます。今回はバンターの活躍がこれだけなのが残念です。

画家たちの行動を探っていくと動機はみんなにあるし、怪しげな行動をしている人が多い。最後にピーター卿が考えて立証するまで、今回ばかりはよく動きます。それもスコットランドの警察官たちといっしょに行動して、理詰めで追いつめていくところが読み応えあり。
(mixi コミュニティ「セイヤーズ読書会」のトピック〈「五匹の赤い鰊」について話し合いましょう 2006.7.31〉より)(浅羽莢子訳 創元推理文庫 940円+税)

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